中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加国が増え続けている。
米国や日本の懸念をよそに、対アジア貿易・投資の活発化を目指す欧州諸国。
昨年の新興5力国(BRICS)による「開発銀行」設立合意に続き、既存の国際金融秩序に挑戦する中国の経済外交が勝利を収めつつある。
中国と歴史問題を抱え、米国との同盟関係を重視する日本の「孤立」懸念もある。
中国の経済政策を策定する国家発展改革委員会などは3月28日、現代版シルクロード経済圏を構築する「一帯一路」構想の行動計画を発表した。
AIIBが事業を資金面で支える。
一帯一路は、中国から欧州へ通じる陸上、海上の両ルートを指す。
この地域の各国と連携してインフラ投資を強化する。
欧州各国にとって中国は主要な貿易相手で、市場としての魅力も大きい。
AIIBがアジアで展開する投資に、自国企業を便乗させたいとの思惑もある。
英国は参加表明に当たって「事業と投資の最高の機会を英企業にもたらす」と意義を強調した。
既に先進7力国(G7)のうち4力国が参加を表明。
「米国や日本が参加してもしなくても、あるいはいつ参加しようとも、彼らの決定を尊重する」。
中国の楼財政相は3月20日、こうコメントし、日米の判断を待つ余裕すら見せ始めた。
AIIB設立合意の約3力月前、ブラジルで開かれた中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカのBRICS首脳会議は発展途上国開発を支援する「開発銀行」の設立協定に調印した。
同様に世界銀行や国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)といった既存の秩序に対抗する組織だ。
習氏は3月28日の演説で「私たちは積極的に地域の金融協力を推し進め、アジアの金融機関の交流の枠組みをつくらなければならない」と訴えた。
AIIBへの欧州の参加という想定外の事態にたじろいだのは日本だ。
しかし外交筋は「日本は米国が首を縦に振らなければ動けない。 ただ米国が急に参加表明してはしごをはずされる可能性だってある」と分析する。
「欧州各国は中国と大きな政治的争いを抱えていない。 経済面を重視して参加しやすかった」との見方もある。
一方で日本は、戦後70年を迎え、中国や韓国と歴史問題を抱える。
ある日本政府関係者はAIIBの決済システムで中国の通貨、人民元が使われれば「世界の通貨体制そのものが大きく変化することになる」と指摘した。