目の網膜にあり、入ってきた光を感じる視細胞が失われていく難病「網膜色素変性症」の患者に対し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した細胞を移植する世界初の臨床研究を神戸市立神戸アイセンター病院が実施したことが10月15日、同病院への取材で分かった。
視野が次第に狭まり、完全に失明することもあるこの病気の患者は国内に3万人前後とされ、治療法は未確立。
今回は安全性の確認が目的で、既にかなり重い病状の患者が対象となった。
このため視力の大幅な改善は期待できないが、将来の治療法唖立に向けた第一歩となりそうだ。
網膜色素変性症は遺伝子の変異が原因とされるため、研究チームは患者自身ではなく、健康な別の人の血液細胞から作ったiPS細胞を利用。
さまざまな物質を加えて立体的な網膜組織に成長させ、そこから視細胞を含んだシートを作製し、患者の網膜に移植した。
今後、移植した組織が体から拒絶されずに定着するか、異常増殖などの不具合が起きないかを1年間観察する。
元々体内にある細胞との間で「見えた」という情報をやりとりし、脳にまで伝達できるようになるかどうかも調べる。
手術後も定期的に病院に来てもらい、長期間のデータを集める。
今回実施した1例目に加え、もう1人の患者にも参加してもらう計画。
チームはこれまでに、動物実験で細胞の安全性や効果を確認してきた。
マウスの実験では、移植により光を感じられるようになり、サルでは2年以上、移植した組織が定着していたという。