塩野義製薬が実用化を目指す新型コロナウイルスの飲み薬について、動物実験で胎児に骨格形態異常を引き起こす「催奇形性」が確認されたことが4月12日、関係者への取材で分かった。
塩野義は妊婦の使用を推奨しない方向で検討している。
この薬は目立った副作用が報告されておらず、他の飲み薬に比べて使用制限が少ないのが特徴とされるが、妊婦への投与を防ぐ安全な服薬管理方法の確立が課題となる。
塩野義は、迅速に審査が進められる「条件付き早期承認制度」の適用を求めているが、判断にも影響する可能性がある。
塩野義は共同通信の取材に対し「データから催奇形性が示されており、妊婦への使用は推奨されないと考えている」とコメントした。
塩野義は2月25日、厚生労働省に製造販売の承認を申請。
軽症者向けでは初の国産飲み薬となるため注目が集まっており、政府は承認されれば100万人分を購入することで塩野義と基本合意している。
関係者によると、妊娠したウサギに人の臨床試験(治験)で使うよりも高い濃度の薬を投与すると、胎児の骨格形態に異常を及ぼすことを確認。
新型コロナの飲み薬では、既に承認されている米メルク社の「モルヌピラビル」も催奇形性の問題で妊婦への投与が禁忌となっている。
管理体制が整備されないまま、薬が流通した場合、飲みきらずに残った薬を妊婦が誤って服用する恐れがある。
承認審査では、薬のリスク管理計画まで慎重に議論することになる。
塩野義が2月に公表した治験の結果によると、薬を5日間投与したクループのウイルス量は減少した一方で、発熱や吐き気など12の症状を総合的に改善する効果は明確に確認できなかった。
12症状のうち、鼻水や喉の痛み、せき、息切れといったオミクロン株に特徴的な呼吸器症状が改善した。