熊本熊的日常

日常生活についての雑記

一杯のコーヒー

2006年05月11日 | Weblog
一杯のコーヒーを飲むのに、道具を用意して、湯を沸かし、豆を挽き、抽出し、味わい、後片付けをすると1時間ほどかかる。後には満足感と、コーヒーの香りが残る。この全体の時間と空間がとても好きだ。

その昔、コーヒーはたいへん高価な飲み物だった。カフェに集う人々は皆裕福で、コーヒー片手に投資話などに花を咲かせていたのだろう。そうした会話のなかから商品取引所や保険会社が生まれた。現在の経済の仕組みはコーヒーが作った、と言えなくもないだろう。

今やコーヒーは日常の飲み物だ。しかし、その流通経路を辿ると非日常の世界がある。よく酒の蔵元を訪ねる旅のことを耳にする。例えば、映画「サイドウェイ」はワイナリー巡りの旅が物語の舞台である。たいへん長閑で平和な風景がそこに展開している。しかし、コーヒー農園を訪ねることは命がけである、こともあるそうだ。コーヒーが育つのは南回帰線と北回帰線の間にある地域だ。中南米やアフリカの産地のなかには政情不安なところも少なくない。農園に行くのに軍隊の護衛付きというところもあると聞く。気軽に飲んでいるものが、気軽に行くことのできない場所で作られている。

日々何気なく口にしているもののなかに、とてつもなく深い歴史がある。そんなことを少し覗いてみようと思った。