熊本熊的日常

日常生活についての雑記

一見の価値

2008年07月02日 | Weblog
仕事帰りにナショナル・ギャラリーに寄って「Radical Light」という企画展を観て来た。1890年から1910年にかけてのイタリアにおいて筆触分割法によって描かれた作品を集めた展覧会である。これは機会があれば是非観なければならない展覧会だと思う。

神々しい、という形容が思い浮かぶ。セガンティーニの風景画である。今回の企画展にはセガンティーニの「Alpine Meadows」「Spring in the Alps」「Return from the Woods」「The Angel of Life」「The Bad Mothers」「The Punishment of Lust」「Vanitas」が展示されている。会場に入ると、いきなり正面に「Alpine Meadows」が広がる。広がる、のである。なんでもない山岳地域の風景である。羊が放牧地に放たれていて、羊飼いの少年がまどろんでいる。それだけの風景である。しかし、その風景を眺めていると、そこに神というものが本当にいるのではないかと思わせるような気分になる。その同じ展示室には「Spring in the Alps」と「Return from the Woods」もある。「Alpine Meadows」ほどではないが、どちらの作品にも人の営みの尊厳のようなものを感じる。セガンティーニは風景を描きながら、実はそこに普遍的な人間の姿というものを追い求めていたのではないかとさえ思う。「Spring in the Alps」の右隣にウムベルト・ボッチォーニの「Roman Landscape or Midday」がある。何故か秋野不矩の作品を思い浮かべた。