熊本熊的日常

日常生活についての雑記

名刺入れから始まる人生

2009年01月18日 | Weblog
先日、AERO CONCEPTの名刺入れを買った。ヌメ革張りで、今はまだ誰のものでもないといった風情だ。使っているうちに日光に焼けたり皮脂が染み込んだりして「あめ色」と呼ばれる色になっていく、予定である。色や風合いの変化は、持ち主である私の生活を反映したものとなる。完成形というものはないが、年月を重ねるにつれ、その様相は他の誰のものとも違う私だけのものになる。

今日はこの名刺入れの製造元にお邪魔して、工場を拝見し、AERO CONCEPTのコンセプトも含めて、代表取締役の方といろいろお話しをさせていただいた。久しぶりに楽しい会話ができたので、ご迷惑ではないかと気になりつつも、ついつい長居をしてしまった。経験を重ねるなかから抽出されたもので構成された考え方というものは聞いていて気持ちが良い。考え方というものは、その人の中にあって外から見えない、というものではない。その人の佇まいや生活空間に自然に反映されるものだと思う。工場を拝見させていただいた後、同じ敷地内にある事務所でお話しを伺ったが、この事務所の中がまた良い。子供の頃、年上の従兄弟の部屋を訪ねたときの楽しい感覚が甦るようだった。

この名刺入れは、今の勤務先の名刺用には使わない。社会人になって何十年も同じ業界で働いているので、自然と人間関係が固まってしまっている。それが良いとか悪いということではなく、自分の生活史の相転換として、そろそろ新しい生活を始めてみたい。その新しい生活用にこの名刺入れを使いたい。革は使用に応じて自然に変化する。その変化にふさわしい自分の生活がそこにあるかどうか。いつも手元にあるものだからこそ、それを目にするたびに自分の状況の変化を否応無く意識することになるだろう。自分の生活がしっかりしていれば、この名刺入れも味わい深いあめ色になっているような気がするのである。