題名だけ見るとつまらなそうだが、こういうのに限って面白いことが多い。この作品も期待を裏切らないものだった。
監督はドイツ在住のトルコ人。移民2世だそうだ。ドイツで生まれても、そこでは異邦人であり、トルコに行ってもそこに生活の場があるわけではないので、やはり異邦人だ。そうした身の置き場の無い漠然とした不安が、作品に登場するトルコ人に投影されている。異邦人的感覚というのは、単に国籍や居住地だけに拠るものではない。トルコにいても、そこで反政府運動に身を投じ、体制側から追われる立場にあるというのも、極端な例ではあるが、存在の不安を象徴している。
しかし誰であろうと、どこに居ようと、常に何かしらの不安や違和感を抱えているものなのではないだろうか。家族のなかにあってさえ、常に無条件で幸福を実感できるものではないだろう。むしろ、家族が自己の延長線上にある特別な関係であるという幻想があるからこそ、そこでの振る舞いが自己規制を欠いたものになり、ひとたび対立が生じれば泥沼化するものである。家族とか親子の関係というのは、近いが故に自分の相手に対する幻想が強すぎて、双方向の関係になりにくいものなのかもしれない。
私自身は人の子であり親でもあるので、子から見た親、親から見た子、どちらの視線も自分のなかに自分なりのものを持っているつもりである。当然のことながら、子としての経験のほうが親としての経験よりもはるかに長いので、親として子と向かい合う姿勢は、自分が子として観察した親の姿から得られたものが良きにつけ悪しきにつけ反映されている。自分が親から何を得たのか、自分の子供が自分から何を感じて欲しいのか、というようなことは言葉で表現できないことのほうが多いし、極めて個人的なことでもあるので自分のなかに秘めておくべきだと思っている。ただひとつだけ言えるのは、親子というのは特別な関係ではないということだ。もちろん、子が親の保護なしに生きていくことができないうちは話は別だが、成長して物心がつけば、生活力は未熟でも人としては立派な個人だ。そうなれば親子の関係も、人が生活をする上で否応なく取り結ぶ数多の人間関係のひとつに過ぎないと思っている。
この作品には3組の親子が登場する。ドイツ在住のトルコ人の父と息子、ドイツ在住のドイツ人の母と娘、ドイツに住む母とトルコに住む娘。邦題が示唆するように、それぞれに問題を抱えながら、最後は和解する親子の関係が描かれている。映画としては、物語の構成が絶妙で、映像や台詞が研ぎすまされている素晴らしい作品だと思う。ひとつひとつのエピソードを貫く確たる思想のようなものが感じられ、製作者が言わんとする思いが静かに力強く伝わってくる。現実が映画のようにきれいにまとまるものではないからこそ、そうした人の心の美しさのようなものを描いた作品に、自分の心が洗われる思いがした。
監督はドイツ在住のトルコ人。移民2世だそうだ。ドイツで生まれても、そこでは異邦人であり、トルコに行ってもそこに生活の場があるわけではないので、やはり異邦人だ。そうした身の置き場の無い漠然とした不安が、作品に登場するトルコ人に投影されている。異邦人的感覚というのは、単に国籍や居住地だけに拠るものではない。トルコにいても、そこで反政府運動に身を投じ、体制側から追われる立場にあるというのも、極端な例ではあるが、存在の不安を象徴している。
しかし誰であろうと、どこに居ようと、常に何かしらの不安や違和感を抱えているものなのではないだろうか。家族のなかにあってさえ、常に無条件で幸福を実感できるものではないだろう。むしろ、家族が自己の延長線上にある特別な関係であるという幻想があるからこそ、そこでの振る舞いが自己規制を欠いたものになり、ひとたび対立が生じれば泥沼化するものである。家族とか親子の関係というのは、近いが故に自分の相手に対する幻想が強すぎて、双方向の関係になりにくいものなのかもしれない。
私自身は人の子であり親でもあるので、子から見た親、親から見た子、どちらの視線も自分のなかに自分なりのものを持っているつもりである。当然のことながら、子としての経験のほうが親としての経験よりもはるかに長いので、親として子と向かい合う姿勢は、自分が子として観察した親の姿から得られたものが良きにつけ悪しきにつけ反映されている。自分が親から何を得たのか、自分の子供が自分から何を感じて欲しいのか、というようなことは言葉で表現できないことのほうが多いし、極めて個人的なことでもあるので自分のなかに秘めておくべきだと思っている。ただひとつだけ言えるのは、親子というのは特別な関係ではないということだ。もちろん、子が親の保護なしに生きていくことができないうちは話は別だが、成長して物心がつけば、生活力は未熟でも人としては立派な個人だ。そうなれば親子の関係も、人が生活をする上で否応なく取り結ぶ数多の人間関係のひとつに過ぎないと思っている。
この作品には3組の親子が登場する。ドイツ在住のトルコ人の父と息子、ドイツ在住のドイツ人の母と娘、ドイツに住む母とトルコに住む娘。邦題が示唆するように、それぞれに問題を抱えながら、最後は和解する親子の関係が描かれている。映画としては、物語の構成が絶妙で、映像や台詞が研ぎすまされている素晴らしい作品だと思う。ひとつひとつのエピソードを貫く確たる思想のようなものが感じられ、製作者が言わんとする思いが静かに力強く伝わってくる。現実が映画のようにきれいにまとまるものではないからこそ、そうした人の心の美しさのようなものを描いた作品に、自分の心が洗われる思いがした。