[12月31日10:45.天候:晴 埼玉県さいたま市・稲生家]
(稲生家が複数で行動する為、これより稲生家の者に限り、下の名前表記とする)
初期の“ホーム・アローン”シリーズでは、旅行当日に寝坊した家族に置いてきぼりにされた少年が主人公であった。
ここではどうなのかというと……。
マリア:「タクシーが来ました!」(英語は和訳して斜字でお送りします)
マリアが英語で稲生家の面々に伝える。
尚、マリアは稲生の両親の前では自動翻訳魔法を使うのをやめている。
素の英語か、片言の日本語かを使い分けることにしている。
長野の屋敷でもそれでいいじゃないかと思うだろうが、今度は他の魔道師が英語も分からないロシア圏出身者が多いものだから、自動翻訳魔法を使っている方が便利だったりする。
勇太:「はーい!父さん、急いで!」
宗一郎:「まだPCの充電が済んでいない」
勇太:「そんなの新幹線の中で充電すればいいじゃない!」
宗一郎:「そうだった。母さんはどうだ?」
佳子:「いつでもOKよ」
勇太:「早っ!じゃあ、早く行こうよ」
マカリスター家ほどではないが、なかなか慌しい一家なのであった。
マリアが助手席に座ろうとすると、宗一郎が制した。
宗一郎:「いいんだ、マリアさん。連れて行くのは私なんだから、キミは後ろに乗りなさい」
マリア:「でも、今回は家族旅行……」
宗一郎:「言っただろう?『キミも“家族だ”』と」
マリア:「あ、はい……」
マリアは後ろに座った。
勇太が真ん中になる。
宗一郎:「大宮駅までよろしく。あー、西口で」
運転手:「はい、ありがとうございます」
稲生家とマリアを乗せたタクシーは、ようやく稲生家の前を出発した。
勇太:「山形は相当な雪みたいだよ」。
宗一郎:「そりゃそうさ。スキーシーズンなんだから。長野もそうだろう?」
勇太:「まあね」
さいたま市は今日も晴れで、積雪は一切なし!
[同日11:00.天候:晴 JR大宮駅・コンコース]
タクシーは西口の車寄せに到着した。
タクシープールがいっぱいの場合、そこの車寄せに近づけないので、プールの脇に止まることがある。
車寄せに止まれれば、あとはエスカレーターやエレベーターが目の前である。
エスカレーターで2階に上がり、改札口に入る。
それからすぐ先の新幹線改札口にも入った。
宗一郎:「まだ時間があるから、弁当でも買ってきなさい。マリアさんの分も」
宗一郎は財布から紙幣を出すと、勇太に渡した。
勇太:「ありがとう。行きましょう、マリアさん」
マリア:「Year...」
さすがに売店で2人きりになると、マリアは自動翻訳魔法を入れた。
マリア:「随分と優しいお父様だ。羨ましいよ」
勇太:「何でも父親も昔、学生だった頃に白人の留学生に一目惚れしたことがあったみたいですよ。結局、叶わなかったみたいですけど」
マリア:「そうなのか」
勇太:「そういうこともあって、僕とマリアさんはせめて是非……というのがあるみたいですよ」
マリア:「そうなのか。……まさか、お父様が好きになった白人ってのも魔道師だったりして?」
勇太:「だとしたら、凄い偶然ですね。でも、カナダ人らしいですよ」
マリア:「カナダかぁ……。ダンテ一門にいたかなぁ……?」
マリアは首を傾げた。
ただ、マリアがパッと思いつかないのだから、恐らくいないのだろう。
南北アメリカ方面には、あまりそちら出身の魔道師はいないもようだ。
仕事柄、行くことはあるにしてもだ。
マリア:「あ……クリスマスプレゼント、ありがとう。早速、使わせてもらってるよ」
マリアはそう言って、頭のカチューシャを指差した。
赤を基調としたものである。
マリアのようなストレート・ボブだと、これを着けている魔女は多い。
中には改造して、魔法具を仕込む者もいるという。
勇太:「いえいえ。マリアさんには僕のイメージが浮かんだから良かったですけど、イリーナ先生は難しかったですねぇ……」
マリア:「そりゃそうだろう。師匠は1000年以上も生きてるし……。でも、ブローチに落ち着いたんだ?」
勇太:「ええ。あれ、魔法具じゃなかったんですね」
マリア:「私も意外だった、あれは」
イリーナが普段着ているピンク色のドレスコート。
腰のベルトには魔法具を着けているのは知っていたが、右胸に着けているブローチも何かの魔法具だと思っていたのだ。
勇太は魔道師のことだから、元は普通の装飾品だとしても、それを魔法具に改造しているに違いないと思った。
だから渡す時、『魔法具の材料に使ってください』と渡した。
イリーナは最初何のことだか分からず、きょとんとしていたが、勇太から説明を受けた時、ようやく普段着けているブローチの代わりだということに気づいた。
そこでそのブローチは魔法具でも何でもない普通のブローチで、胸元が寂しいから着けているだけだと話した。
そして再び目を細め、あえてロシア語で礼を言ったのだった。
勇太:「おっと!早いとこ、弁当買わないと」
マリア:「ご両親の分は?」
勇太:「2人とも大宮弁当でいいはずです」
マリア:「さすが分かってるな」
あとは2人とも、自分の好きな弁当を購入した。
[同日11:25.天候:晴 JR大宮駅・新幹線ホーム]
新幹線ホームは帰省ラッシュのピークである一昨日や昨日と比べれば落ち着いているのだろうが、それでも普段の土休日よりは多くの人出で賑わっていた。
自由席に長蛇の列ができているのは序の口である。
〔17番線に11時25分発、“やまびこ”135号、仙台行きと“つばさ”135号、山形行きが17両編成で参ります。黄色い線まで、お下がりください。……〕
勇太達は11号車の列に並んでいる。
これは山形新幹線のグリーン車が来る位置だ。
宗一郎:「マリアさん、カツサンドだけでいいのかい?遠慮しないで好きなもの頼んで良かったんだよ?」
マリア:「いえ、私はこれだけで結構です」
マリアは体質上、食べても体の肉付きが良くならない方である。
せめてそれなら身長が高くなっても良さそうなのだが、それも無理だった。
悪魔と契約した際の副作用かもしれないが、当のベルフェゴールは否定している。
勇太:「来た来た。E3系だ」
山形新幹線を前にして、2つの列車が入線してくる。
このように行き先の違う短編成同士を連結させて運行させる新幹線は、今のところJR東日本だけである。
〔「ご乗車ありがとうございました。おおみや~、大宮です。17番線に到着の電車は11時26分発、東北新幹線“やまびこ”135号、仙台行きと山形新幹線“つばさ”号、山形行きです。お乗り間違えの無いよう、ご注意ください。次は、宇都宮に止まります」〕
グリーン車は空いていたが、稲生達を含む大宮駅からの乗客で満席になったようだ。
勇太:「向かい合わせにする?」
宗一郎:「いや、2人で仲良くやりなさい」
そう言って両親は勇太達のすぐ前の席に座った。
勇太とマリアがその後ろの席に座ると、すぐに列車は走り出していた。
(稲生家が複数で行動する為、これより稲生家の者に限り、下の名前表記とする)
初期の“ホーム・アローン”シリーズでは、旅行当日に寝坊した家族に置いてきぼりにされた少年が主人公であった。
ここではどうなのかというと……。
マリア:「タクシーが来ました!」(英語は和訳して斜字でお送りします)
マリアが英語で稲生家の面々に伝える。
尚、マリアは稲生の両親の前では自動翻訳魔法を使うのをやめている。
素の英語か、片言の日本語かを使い分けることにしている。
長野の屋敷でもそれでいいじゃないかと思うだろうが、今度は他の魔道師が英語も分からないロシア圏出身者が多いものだから、自動翻訳魔法を使っている方が便利だったりする。
勇太:「はーい!父さん、急いで!」
宗一郎:「まだPCの充電が済んでいない」
勇太:「そんなの新幹線の中で充電すればいいじゃない!」
宗一郎:「そうだった。母さんはどうだ?」
佳子:「いつでもOKよ」
勇太:「早っ!じゃあ、早く行こうよ」
マカリスター家ほどではないが、なかなか慌しい一家なのであった。
マリアが助手席に座ろうとすると、宗一郎が制した。
宗一郎:「いいんだ、マリアさん。連れて行くのは私なんだから、キミは後ろに乗りなさい」
マリア:「でも、今回は家族旅行……」
宗一郎:「言っただろう?『キミも“家族だ”』と」
マリア:「あ、はい……」
マリアは後ろに座った。
勇太が真ん中になる。
宗一郎:「大宮駅までよろしく。あー、西口で」
運転手:「はい、ありがとうございます」
稲生家とマリアを乗せたタクシーは、ようやく稲生家の前を出発した。
勇太:「山形は相当な雪みたいだよ」。
宗一郎:「そりゃそうさ。スキーシーズンなんだから。長野もそうだろう?」
勇太:「まあね」
さいたま市は今日も晴れで、積雪は一切なし!
[同日11:00.天候:晴 JR大宮駅・コンコース]
タクシーは西口の車寄せに到着した。
タクシープールがいっぱいの場合、そこの車寄せに近づけないので、プールの脇に止まることがある。
車寄せに止まれれば、あとはエスカレーターやエレベーターが目の前である。
エスカレーターで2階に上がり、改札口に入る。
それからすぐ先の新幹線改札口にも入った。
宗一郎:「まだ時間があるから、弁当でも買ってきなさい。マリアさんの分も」
宗一郎は財布から紙幣を出すと、勇太に渡した。
勇太:「ありがとう。行きましょう、マリアさん」
マリア:「Year...」
さすがに売店で2人きりになると、マリアは自動翻訳魔法を入れた。
マリア:「随分と優しいお父様だ。羨ましいよ」
勇太:「何でも父親も昔、学生だった頃に白人の留学生に一目惚れしたことがあったみたいですよ。結局、叶わなかったみたいですけど」
マリア:「そうなのか」
勇太:「そういうこともあって、僕とマリアさんはせめて是非……というのがあるみたいですよ」
マリア:「そうなのか。……まさか、お父様が好きになった白人ってのも魔道師だったりして?」
勇太:「だとしたら、凄い偶然ですね。でも、カナダ人らしいですよ」
マリア:「カナダかぁ……。ダンテ一門にいたかなぁ……?」
マリアは首を傾げた。
ただ、マリアがパッと思いつかないのだから、恐らくいないのだろう。
南北アメリカ方面には、あまりそちら出身の魔道師はいないもようだ。
仕事柄、行くことはあるにしてもだ。
マリア:「あ……クリスマスプレゼント、ありがとう。早速、使わせてもらってるよ」
マリアはそう言って、頭のカチューシャを指差した。
赤を基調としたものである。
マリアのようなストレート・ボブだと、これを着けている魔女は多い。
中には改造して、魔法具を仕込む者もいるという。
勇太:「いえいえ。マリアさんには僕のイメージが浮かんだから良かったですけど、イリーナ先生は難しかったですねぇ……」
マリア:「そりゃそうだろう。師匠は1000年以上も生きてるし……。でも、ブローチに落ち着いたんだ?」
勇太:「ええ。あれ、魔法具じゃなかったんですね」
マリア:「私も意外だった、あれは」
イリーナが普段着ているピンク色のドレスコート。
腰のベルトには魔法具を着けているのは知っていたが、右胸に着けているブローチも何かの魔法具だと思っていたのだ。
勇太は魔道師のことだから、元は普通の装飾品だとしても、それを魔法具に改造しているに違いないと思った。
だから渡す時、『魔法具の材料に使ってください』と渡した。
イリーナは最初何のことだか分からず、きょとんとしていたが、勇太から説明を受けた時、ようやく普段着けているブローチの代わりだということに気づいた。
そこでそのブローチは魔法具でも何でもない普通のブローチで、胸元が寂しいから着けているだけだと話した。
そして再び目を細め、あえてロシア語で礼を言ったのだった。
勇太:「おっと!早いとこ、弁当買わないと」
マリア:「ご両親の分は?」
勇太:「2人とも大宮弁当でいいはずです」
マリア:「さすが分かってるな」
あとは2人とも、自分の好きな弁当を購入した。
[同日11:25.天候:晴 JR大宮駅・新幹線ホーム]
新幹線ホームは帰省ラッシュのピークである一昨日や昨日と比べれば落ち着いているのだろうが、それでも普段の土休日よりは多くの人出で賑わっていた。
自由席に長蛇の列ができているのは序の口である。
〔17番線に11時25分発、“やまびこ”135号、仙台行きと“つばさ”135号、山形行きが17両編成で参ります。黄色い線まで、お下がりください。……〕
勇太達は11号車の列に並んでいる。
これは山形新幹線のグリーン車が来る位置だ。
宗一郎:「マリアさん、カツサンドだけでいいのかい?遠慮しないで好きなもの頼んで良かったんだよ?」
マリア:「いえ、私はこれだけで結構です」
マリアは体質上、食べても体の肉付きが良くならない方である。
せめてそれなら身長が高くなっても良さそうなのだが、それも無理だった。
悪魔と契約した際の副作用かもしれないが、当のベルフェゴールは否定している。
勇太:「来た来た。E3系だ」
山形新幹線を前にして、2つの列車が入線してくる。
このように行き先の違う短編成同士を連結させて運行させる新幹線は、今のところJR東日本だけである。
〔「ご乗車ありがとうございました。おおみや~、大宮です。17番線に到着の電車は11時26分発、東北新幹線“やまびこ”135号、仙台行きと山形新幹線“つばさ”号、山形行きです。お乗り間違えの無いよう、ご注意ください。次は、宇都宮に止まります」〕
グリーン車は空いていたが、稲生達を含む大宮駅からの乗客で満席になったようだ。
勇太:「向かい合わせにする?」
宗一郎:「いや、2人で仲良くやりなさい」
そう言って両親は勇太達のすぐ前の席に座った。
勇太とマリアがその後ろの席に座ると、すぐに列車は走り出していた。