写真はレストランBOTIN の外壁に打ち付けられていた銅板。マドリード随一の名所だということがわかる。
※今回は旅行に行ったときの参考になる話ではなく、小説の感想です。
【閑話休題・いまこそ『日はまた昇る』】
ボティンゆかりの小説ということで手にとったヘミングウェイの『日はまた昇る』。何気なく読みだしたのですが、気が付くと最終頁に。ノーベル文学賞受賞に大きく貢献したといわれる『老人と海』は数ページで挫折したのですが、同じ作家か? と思うほどの読みやすさです。
1926年発売当時、アメリカでセンセーションを巻き起こしたとか(この本片手に旅行ブーム、登場人物になりきる人が続出。)。それから100年近くたつというのに、驚くほど今、なのです。スペインに行った後ではなおさら、説得力を感じました。バル(食事処)の雰囲気、闘牛士への尊敬と哀れ、ウエイターの態度などなど。主人公が旅行者で、視点が同じせいもあるのでしょう。
バブル期に流行った日本の小説、村上龍や田中康夫の源泉はこれなのでは、と思ってしまいました。若者社会を冷めた目線で活写することで、見事にある時代の気分を浮かび上がらせている。分析する目線が確かなのでそこに普遍性が出てくる………。
文体も会話中心で簡潔なので、英語の勉強になるかな、と原文をネットで調べてみました。けれど無料では一切、出てきません。版権が切れていないのです。そこで見つけたのが「講談社英語文庫」シリーズ。図書館にありました。紙質がやや茶色で目にやさしく、フォントも見やすく、難しい単語には日本語で解説までついています。値段も1000円しない。
これはいいと さっそく買い求めようとしたのですが、英語文庫シリーズは存続しているのに、この本は絶版でした。古書市場でも皆無。どころか古書店がプレミア値段で探し求めているほど人気です。10数年前は気軽に買えたようなので、残念。
結局、外国のペーパーバックを入手したのですが、案の定、紙質が悪く、字がかすれていて、読みにくい。それでもがんばって読んでみました(数ページで挫折)。わからない熟語を英和辞典でひも解くと、まんま「日はまた昇る」の文が例文に出てきます。それも何度も。驚きました。それだけ価値がある英文なのでしょう。
2000年代の日本の出版技術は本当にすごいと思います。出版社様、ぜひとも再販をお願いします。
※次回は、食べ物の話です。
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