写真はトランシト教会とセファルディ博物館の外観。エル・グレコ博物館の前にある。
【トランシト教会(Sinagoga del Tránsito)】
14世紀に建てられたユダヤ教会です。トレドにはかつてセルビアと並ぶユダヤ人街があり、その中心に建てられていました。エル・グレコはその一角に住んでいたのですね。
街のあちこちにはめ込まれたユダヤ人街(1492)
と書かれたタイル。
1492年のユダヤ人追放令以降キリスト教の騎士団の教会となり、現在はセファルディ博物館というユダヤ教に関する関連物を集めた博物館が併設されています。
中に入ると、薄暗く、イスラム建築の色濃い影響を受けたムデハル様式で建てられた建物に、大勢の人が見学に訪れていました。
トランシト教会の内部。細やかな装飾が美しい。
教会を出て隣接の博物館へ向かうときに地下に不思議な空間がありました。じめじめしていて座敷牢のように見えたのですが、じつは2000年代初頭にシナゴーグの基礎部分を発掘したところみつかったイスラム浴場・ハマームの集合施設とのこと。つまりスパです。
ローマ時代から脈々と受け継がれた生活に欠かせないお風呂文化は、不思議なことにキリスト教世界では完全に排除されました。このシナゴーグには、イスラム建築そのままの部分も今も数多く残っている中で、この部分は基礎部分に埋もれていたわけですから、ローマ帝国とイスラム世界には根づいていたお風呂文化が彼らのお気に召さなかったかがわかるような気がしました。
【セファルディム博物館(Museo Sefardí)】
教会脇の博物館。ユダヤ教の帽子や聖書、十字架や秘物が所せましと並んでいます。ドイツでも現役の、ここよりずっと大きいシナゴーグ(ユダヤ教会)はありましたが、ここは詳細かつ、あっけらかんと並んでいて、気持ちが落ち込むことがありません。
なんとなく見てはいけないようなものまで、並んでいて不思議な感じ(貞操を守るためにつけるものなど)。なんというか大げさに肩ひじ張った感じのない、博物館だもん、と腹をくくったからこそ感じられる、ゆるさがありました。
もちろん、ユダヤ教徒が1492年にスペインより追放令が出た後、どのように移動したか、伝播したか活躍したかといった詳細な歴史も地図とともにパネル展示されています。
元ユダヤ教会として、近くにサンタマリア・ラ・ブランカ教会もあって、こちらにもたくさんの観光客がつめかけていました。
(つづく)
参考:
https://es.wikipedia.org/wiki/Sinagoga_del_Tr%C3%A1nsito (2023年7月1日閲覧)
https://worldheritagesite.xyz/contents/sinagoga-del-transito/(上期日閲覧)
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