孔子学院の発表の準備をしていたら、雲南以外の話を書きたくなりました。先週末に所用で行きました上海の話です。上海蟹は中華街などで日本でも食べられるようですよ。
写真は上海王寶和酒家にて。上は陽澄湖の上海蟹。文末は王寶和酒造でつくられた紹興酒。(2011年秋撮影。)
【もう一つの秋】
中国で秋と言えば上海ガニ。ひと夏の栄養をたっぷりと身につけた秋。なかでもメスは腹に卵を宿した10月が、オスは11月が旬と言われています。
雲南でも、この時期に、上海ガニの最高峰「陽澄湖」のシールの貼られたものが高級店のもっとも目立つ場所に置かれていました。それをわざわざ食べに行ったことも。「おいしいけど、日本の毛ガニにはかなわないな」。雲南には蟹料理は本来的にはありませんので味の追求のしようもないのかもしれません。
さて、この秋、上海に行くことになり、チャンスとばかりに1744年(乾隆9年)創業の上海ガニ専門店の王宝和酒家に、いそいそと出かけました。
10月の、とくに週末の上海は商談会と学会シーズンのため、繁忙期。飛行機もホテルもけっこう埋まっていて、何事も高くつきます。
ガイドブックを読むと、予約は必須とのこと。そこで数日前に電話すると6時以降は滞在中はすべて満席、というおそろしさ。開店時間の5時からなら、と店側に勧められて行ったのですが5時半には、やはりほぼ満席となっていました。ただ、予約なしの人のための席も用意されており、5時ぴったりに店に行けば、すぐに座れそうです。
前菜の上海ガニのあらゆる部位をまぶした炒め物や、酢の物など、日本人にもやさしい料理の味は抜群。紹興酒は紹興市の「王宝和」直営工場で醸造されたもの、酢を中心とした付け汁もオリジナル。店のあらゆるものは、あくまでも上海ガニをおいしく食べるためのしつらえのようです。そのきっぱりとした方向性に、すごみすら感じます。
そしてメイン。店の人がトレーに、縛り上げた暗緑色の生きたカニを持ってきて、
「これでよろしいですか?」
とくに文句もないので私は即オーケーしたのですが、隣のテーブルの香港からのお客は、裏返したり、押したりと、いろいろといじりまくった末
「もっといいのを出してちょうだい!」店の人は、また別のカニを持ってきて延々と交渉しておりました。
そして出てきた紅色の蒸し上海ガニ。言葉をなくします。角のテーブルに座っていた日本人カップルなど、トレーの上のオス、メス2匹ずつを頼んだ後も、なごやかに談笑していたのですが、出てきたとたん、本当に静かに、目を合わせることもなく、もくもくと修行僧のように食べておりました。地元のおじいさん、おばあさん、若夫婦に孫というテーブルは、家族の和が見られてなごやかだったのですが・・。つくづく、罪な食べ物です。
カニ味噌は日本の毛ガニを超えるおいしさ。黄金色にとろけます。卵は、うん、そのお味。もちろん身も丁寧にほじくり出しましたが、なにぶん、大きなものではないので、苦労したほどは食べられません。
しかし、ここの紹興酒はおすすめです。くどくなく、紹興酒としてはすっきりとした飲み口で、上海ガニをしっかりと引き立ててくれます。
「王宝和」のもともとの本拠地は紹興。その紹興酒を上海で売る酒屋から上海ガニのレストランへと発展した店だったのです。
紹興で紹興酒工場めぐりをしたこともありますが、皇帝ご用達レベルの酒造家は1949年に国民党とともに台湾へ移住してしまったため、深い味は台湾製にはかなわないな、というのが率直な感想でした。ところが「王宝和」は、工場を大きくすることもなく、中国に踏みとどまって愚直に造り続けていたようなのです。
食後に茶色のお茶が出されました。これ、氷砂糖とショウガ汁を混ぜた、いわゆる日本の冷やしあめの、アツアツ漢方版。より一層、口の中がさっぱり。ただ、カニを蒸すだけの料理にこれほどのノウハウがあるとは、と感嘆することしきり、でした。
王宝和酒家:上海市福州路603号 電話+8621-63223673
私も上海では他の名産品で結構、やられちゃっているので、この店は慎重に選びました。上海にはおいしい店もちゃんとあるのですが、なにしろ、けっこう広くて、店の数は膨大、しかも人の往来も激しいので、名店は予約でいっぱい、しかも、そこを探し当てるのが一苦労ですね。
上海蟹では、辛い目にも遭ってます。紹興で紹興酒漬け、というお勧めの名産を夏にいただいたときは、夜は本当に地獄・・。勘を養い、よい情報のアンテナを張りましょう。 今回、上海ではいろいろと名店を見つけたので、また、機会があればご紹介します。苦労し続けた人として・・。
意味深さはどちらかというと、そんなよい季節にちょうどよく上海に行く用事がありますね?くらいの感じでしょうか。
しかし、市内に「ある」となると、要チェックですね。私は、いつ行けるかわかりませんが。
あちらは店の数も種類も膨大ですから、アンテナ・勘をしっかりしないと平凡な店にしか出入りできない、というのはそう思います。
今は、雲南に行くには、上海か、北京、バンコクなどを経由しないとたどり着けなくなっておりますので、上海の食事も考えないと、油断するとローソンやセブンイレブンのコンビニ弁当、ということにもなりかねません。そうそう、ローソンのおでんはよく売れてました。上海郊外では日本のおでん種と同じものの屋台やお店が結構、出ていて、たぶん、小さいお店では天津甘栗に次ぐ人気ぶりでした。