写真はロカ岬と大西洋。ロカ岬はヨーロッパ大陸最西端にして、さえぎるものなく、この先にアメリカ大陸へと通じるだけに、風がおそろしく強い。そして寒かった。
写真左に強風に負けずに立つ人や写真中央に風に吹き飛ばされないように体を九の字に曲げて踏ん張る人などが見える。
風の凪いでいる日もあるそうだが、ここにきた人の感想を読むと、どうやら強風の日が多いようだ。
この風の中、ヨーロッパの大航海時代は幕を開けたのだ。
【地おわり、海はじまる】
「どわっ、飛ばされる!」
本気で思うほどの強い風、同時に襲う寒さ。崖下には緑の中に白い線が走る白濁した海が続いています。ここはヨーロッパ大陸最西端の岬・ロカ。
シントラの王宮からバスで小一時間もかからなかったというのに気候は激変です。いつの間にか一緒に行った研究者グループの人たちは、薄手の半そでにポンチョを羽織っただけで岬に立ったせいか、芯まで寒さが浸透してしまい、唇は紫になり、がたがた震えて、岬に設けられた記念館に飛び込みました。
そこで温かいコーヒーを飲んでも、寒さがぬぐえることはなく、翌日には風邪を引いて、以後服装が一変するほどの衝撃を与えたのです。
私は風を通さないオーバーコートを羽織っていたので問題なく、強風にふんばって大西洋を見つめていました。この海をさえぎるものは何もなく、はるか向こうはアメリカ大陸。風が強いのはある意味、当然なのです。
ロカ岬、と書かれた看板の後ろは、わずかな風よけがわりに人が密集して集まっていました。人々はそこで気を整えると、また風に向かって仁王立ちして看板の横でパシャリ。この記念すべき地と海のはじまりを短く見つめて、すぐに看板に隠れる、を繰り返していました。
こんなところにも牧草がへばりつくように風になびいています。そのため踏ん張ると、かえって草の繊維がすべって足がスライドすることも。
ここの石碑には「ここに地終わり、海はじまる」
の文句が書かれている、とKさんが教えてくれました。このことばはポルトガルの国民的詩人ルイス・デ・カモンエスの詩なのだそう。
記念館では、「ユーラシア大陸最西端到達証明書」が発行されていて、それを飾るための額縁まで売っています。ここに来て、この空気を感じるだけで十分なのに、ずいぶん商売っ気があるなあ、と距離を置いていたのですが、気づくと、家人もポルトガル研究者のKさんもほくほく顔で巨大で持ち帰りに不便そうな証明書を買い求めていたのでした。
(つづく)
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