シントラ宮殿の壁面タイル。腰の上あたりに張られた黄色い縦型のローソクのような形のものは、装飾を大量に行った時代にスペインが「発見」した新大陸の植物のとうもろこしのように見える。
モザイク模様のタイルも一枚一枚細かくなった色タイルを貼り合わせて作られている。近年のモザイク模様を図案化した平面のタイルとは、質感がずいぶん違うと感心した。
様々な植物の文様がある。色も一枚一枚が微妙に違うのだが、全体に統一感が出ていて、すべてが計算づくのようだ。
【シントラ宮殿(王宮)】
ペーナ宮殿から見える、はるか昔に廃城になっている「ムーアの城」は断念して昼食後、バスで駅に戻り、そこからすぐ近くにある15世紀から19世紀後半までポルトガル王家の離宮となっていたシントラ宮殿(地球の歩き方では「王宮」)を見学しました。
15世紀末から16世紀初頭のマヌエル1世が大航海時代の莫大な富で増築や装飾などを行ったために、うっとりするほどタイルも彫刻も装飾画も、とにかく本物で美しいのです。
平面でつるっとしたタイルもいいのですが、模様の縁取りを立体でかたどったタイルが欠けることなく、壁面に納まっているさまは圧巻です。色味などで今では失われた技術もあるのとのこと。ポルトガルタイルは今もなお有名ですが、当時の燦然と輝く技術の粋を堪能できたような気がしました。
たとえば葉の色もよく見ると少しずつ紅葉させていたり、深い輝きを放つ白、青、緑、黒のタイルでモザイクで敷き詰めたような場所があったりと凝りに凝っていて、細かく見ていると時間がいくらあっても足りません。
もともとイスラム教徒の支配者の邸宅を、12世紀にのちのポルトガル王が征服した、というだけに、イスラム様式、マヌエル、ルネッサンス様式が混交した建物となっています。この混交した建築様式という点ではペーナ宮殿も同じなのですが、財力の違いが桁違いなために、なんというか別物。こちらは、とても落ち着いていて歴史と風格がひしひしと伝わってきます。
これほどまでに中世の骨格を持った王室由来の建物だというのに、しかもペーナ宮殿より入場料が安いというのに観光客が絶無に近いのに驚きました。
歴史的逸話にも事欠かないし、はっきりいって、オススメです。
(つづく)
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