石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2021年版解説シリーズ14(自給率2)

2021-08-13 | BP統計

4.主要国の石油・天然ガスの生産・消費ギャップと自給率 (続き)

(2) 天然ガスの生産・消費ギャップ(差)及び自給率の推移(2010~2020年)

(4-2)天然ガス

(年々輸出余力が増すロシア、オーストラリア及び米国!)

(4-2-1)主要国の生産・消費ギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-2-G01.pdf参照)

 2010年におけるロシアの天然ガス生産量は5,980億㎥、消費量は4,240億㎥で、生産が消費を1,750億㎥万B/D上回っていた。カナダ、オーストラリアはロシアほど多くはないがやはり生産量が消費量を580億㎥及び210億㎥上回っていた。

 

 これに対して米国は生産量5,750億㎥、消費量6,480億㎥で、差引▲730億㎥を隣国カナダから輸入していた。中国及びインドも天然ガスの純輸入国であり、共に消費が▲120億㎥前後生産を上回っていた。

 

 その後2020年までロシア、カナダ、オーストラリアは引き続き生産が消費を上回った。このうちオーストラリアは生産が急拡大し、2020年の生産量は2000年の2.7倍、1,430億㎥に達した。ロシアとカナダの増加率は1.1倍にとどまり、一方消費量はロシアが停滞、カナダが1.2倍に増加している。因みに2020年のロシアとオーストラリアの生産余力は各々2,270億㎥、1,020億㎥であり、オーストラリアの伸びが著しい。

 

2010年当時純輸入国であった米国、中国及びインドのその後の推移は対照的であり、米国の改善が顕著であるのに対して、中国とインド、特に中国は10年間で生産・消費ギャップが拡大している。米国は2010年に▲730億㎥であったギャップが年々縮小し2012年には中国、2014年にはインドをしのいだ。そして2017年にはついに生産が消費を上回るプラスに転じ、さらに2019年にはカナダを上回る生産余力のある国になり、2020年の生産・消費ギャップはプラス830億㎥に達した。一方の中国とインドは逆にギャップが年々拡大し、2020年は中国が▲1,370億㎥(生産1,940億㎥、消費3,310億㎥)、インドが▲360億㎥(生産240億㎥、消費600億㎥)であり、中国の生産・消費ギャップ拡大のスピードが速い。

 

(2010年に自給率89%だった米国と中国が2020年には110%と59%に二極化!)

(4-2-2)米国・中国・インドの自給率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-2-G02.pdf参照)

 生産量を消費量で割った自給率について米国、中国及びインドの2010年以降の推移を見ると、まず2010年の自給率は中国と米国が89%で並んでおり、インドは80%であった。即ち米国と中国は1割を、インドは2割強を輸入に依存していたことになる。その後、中国とインドは年々自給率が低下し、2020年には中国は59%、インドは40%に下がっている。

 

これに対して米国は劇的に改善し、2017年には自給率100%を達成した。その後も生産の増加が消費の増加ペースを上回り、2020年には110%となり、天然ガスの輸出国に変身している。前項石油で触れた通り、米国の2020年の石油自給率は96%であり、石油と天然ガス双方について完全自給体制が確立したことになる。かつて米国は不足する石油と天然ガスを中東産油国とカナダ、ベネズエラに依存していたが、エネルギー安全保障の面からも米国は外国に依存しない強い国家に変身したと言えよう。

 

(2005年の自給率50%が昨年は102%に!)

(4-3)米国の石油と天然ガスの自給率(1970~2020年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-3-G01.pdf参照)

 1970年以降2020年までの半世紀にわたる米国の石油・天然ガス自給率の推移を見ると、50年前の自給率は石油が77%、天然ガスは99%であり、石油と天然ガスを併せた自給率は86%であった。この当時米国では天然ガスはほぼ自給体制であり、石油の2割強を輸入に依存していた。

 

 天然ガスについては1980年代後半まで自給率100%であったが、1990年以降消費の拡大に生産が追い付かず自給率は徐々に低下し、2005年には82%まで下がった。しかしその後はシェールガス開発が急発展して生産量が劇的に増加、2015年には自給率が100%を超え、2020年には110%に達している。天然ガスについては米国はすでに輸出国に転じたのである。

 

 同様に石油の自給率の推移を見ると1970年代後半には50%台後半に落ちている。その後1980年代半ばに67%まで回復したが、その後再び自給率は年々低下し、1994年に50%を割り2005年にはついに34%まで落ち込んでいる。即ち国内需要の3分の1しか賄えなかったことになる。しかし2010年以降はシェールガスと並びシェールオイルの生産が本格化し、自給率は急回復し、2000年には96%と完全自給にあと一歩まで来ている。

 

石油と天然ガスを併せた自給率で見ると、1970年は86%であった。最近まで消費の主流は石油であった。このため自給率は石油に近く、例えば2005年の自給率は石油34%、天然ガス82%、合計ベースの自給率は50%であった。しかし、最近では石油と天然ガスの自給率の差が無くなり2020年の自給率は石油96%、天然ガス110%、合計ベースでは102%となっている。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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データベース作成(イラン新内閣閣僚名簿)のお知らせ

2021-08-13 | データベース追加・更新

下記データベースを作成しましたのでご利用ください。

 

・イラン政府閣僚名簿(2021年8月13日現在)

 

 

 

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石油と中東のニュース(8月12日)

2021-08-13 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

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