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(アラビア語版)
(目次)
第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(15)
129うっぷん晴らしとしっぺ返しの悲劇(1/4)
イラクはクウェイト進攻により全世界を敵に回したが、厳密に言えば進攻直後に開催されたアラブ首脳会議でヨルダンを含むいくつかの国はイラク寄りの姿勢を採ったのである。「イスラエルのパレスチナ侵略を容認しながら、イラクのクウェイト併合を非難するのは矛盾している」とするフセイン大統領の主張、いわゆるリンケージ論が一部のアラブ諸国の琴線に触れたのである。ヨルダンの場合、市場価格を大幅に下回る価格でイラクから石油の供給を受けており貧乏な小国ヨルダンはイラクに頭が上がらなかったと言う事情もあった。
巧妙なフセイン大統領はイスラエルに対して18回にわたりミサイル攻撃を仕掛けた。イラン・イラク戦争のどさくさにイスラエルが自国のオシラク原子力発電所を爆撃したことに対する報復措置というのが国民に対する説明であったが、イスラエルを挑発して戦争に巻き込もうとするのが彼の狙いであった。自衛のためなら先制攻撃も辞さないイスラエルがイラクのミサイル攻撃に黙っているわけはない。実際イスラエル世論は対イラク戦争への参戦一色に染まった。
(続く)
荒葉 一也
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