石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2021年版解説シリーズ5(生産篇1)

2021-07-22 | BP統計

2.世界の石油・天然ガスの生産量

(1) 2020年の国別生産量

(生産量1千万B/Dを超えるのは米露サウジ3か国!)

(2-1)石油 (表http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-T01.pdf参照)

 2020年の世界の石油生産量は8,840万B/Dであり、前年の9,500万B/Dを7%下回った。国別では米国が最も多く1,650万B/Dであり、これに次ぐのがサウジアラビアの1,100万B/D、ロシア1,070万B/Dである。生産量が1千万B/Dを超えるのはこの3カ国だけであり、4位カナダ(510万B/D)の2倍以上ある。3カ国の世界生産に占める割合は43%に達し、3か国は世界でも突出した石油生産国である。

 

 世界4位のカナダから10位クウェイトまでの各国の順位と生産量は以下のとおりである。

 4位カナダ(510万B/D)、5位イラク(410万B/D)、6位中国(390万B/D)、7位UAE(370万B/D)、8位イラン(310万B/D)、9位ブラジル(300万B/D)、10位クウェイト(270万B/D)。

 

(米国は天然ガスも生産量世界1位!)

(2-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-T01.pdf参照)

 2020年の世界の天然ガス生産量は年産3.8兆立法メートル(㎥)であった。前年(2019年)より▲3%少なかったが、石油の落ち込み(▲7%)より小さく、石油より環境負荷の小さい天然ガスに需要が集中していることがわかる。

 

 天然ガスの最大の生産国は米国であり、年産量は9,150億㎥、世界全体の4分の1を占める。同国は石油生産量も世界1位でありエネルギー大国である。2位はロシアの6,390億㎥で、米露2か国の世界シェアは4割に達する。3位はイラン、4位中国で5位はLNG輸出大国カタールである。

6位から10位までの生産国を列挙すると、カナダ、オーストラリア、サウジアラビア、ノルウェー及びアルジェリアの各国である。

 

 これら上位10カ国の顔触れを上記の石油と比較すると、米国、ロシア、イラン、中国、カナダ、サウジアラビアの6カ国は両方に顔を出しているが、カタール、オーストラリア、ノルウェー及びアルジェリアの4ア国は石油生産上位10カ国に入っていない(同様に石油生産上位10カ国のうちイラク、UAE、ブラジル及びクウェイトは天然ガス生産上位10カ国に入っていない)。これは各国が保有する油田あるいはガス田の地質構造上の違いによるもので、ごく大まかにいえばカタール、オーストラリアなどはガス単体のいわゆるドライガス田が多く、一方、UAE、クウェイトなどはドライガス田がなく、油田から併産されるガスは原油生産に左右されるためである。

 

(米国一国で全世界の2割を生産!)

(2-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-T01.pdf参照)

 2020年の天然ガス生産量3.8兆㎥を原油に換算すると6,640万B/Dとなり、両者を合わせた生産量は1兆5,480万B/Dである。これは2019年の合計生産量(1兆6,350億B/D)に比べ5.3%減少している。また石油と天然ガスの比率は57対43で原油の方が多い。

 

 上述のとおり米国が石油・天然ガスの生産量が世界一であり、言うまでもなく合計生産量も世界一である。天然ガスの生産量9,150億㎥を原油に換算すると1,580万B/Dであり、従って米国の石油・天然ガスの合計生産量は3,220万B/Dとなり、全世界に占めるシェアは21%に達する。米国に次ぐのがロシアである。同国は石油生産量ではサウジアラビアに次いで世界3位であるが、天然ガスは世界2位であり、合計生産量は原油換算2,170万B/Dである。サウジアラビアは石油生産では世界2位であるが、天然ガス生産は世界9位にとどまっている。しかし石油生産量が4位以下の国と大きな格差があるため合計生産量は1,300万B/Dであり世界のベスト3に連なっている。

 

 4位以下の国と石油・天然ガス合計生産量(原油換算)は以下のとおりである。

 4位カナダ(798万B/D)、5位イラン(741万B/D)、6位中国(724万B/D)、7位カタール(476万B/D)、8位UAE(461万B/D)、9位イラク(429万B/D)、10位ノルウェー(392万B/D)

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(7月22日)

2021-07-22 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・原油乱高下、月曜7%下落、水曜4%上昇。Brent $71.88, WTI $69.89

・Goldman Sachs、第3四半期原油価格予測を80ドルから75ドルに引き下げ

・米大統領、独首相との会談で北海第2ガスパイプラインに理解示す

・増産に二の足を踏む米シェール業者。OPEC+に福音

(中東関連ニュース)

・ユニリバー子会社、イスラエル占領地区のアイスクリーム販売停止

・ハイパーインフレのレバノンは地中海のベネズエラ:ベイルートアメリカン大学レポート

・イラン:断水抗議デモで警官含め3人死亡

・シリアがイスラエルのミサイル8発中7発を迎撃:ロシア軍参謀

・サウジの5月米国債保有高、前月比3%減

・闇経済摘発に乗り出すサウジ、通報者に報奨金

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2021年版解説シリーズ(埋蔵量篇4)

2021-07-21 | BP統計

1.世界の石油・天然ガスの埋蔵量

(4) 2000~2020年の可採年数(R/P)の推移

(可採年数46年から55年の幅で揺れ動く!)

(4-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G03.pdf参照)

 可採年数(以下R/P)とは埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値で、現在の生産水準があと何年続けられるかを示している。2000年以降昨年末までの石油の可採年数(以下R/P)を見ると、2000年のR/Pは47.8年であった。2002年にR/Pは50.2年に伸びたが、その後2006年には45.9年に低下した。その後R/Pは再び伸び、2011年には過去20年ではピークの54.6年に達した。その後2015年から2019年までは50年の状態が続き、昨2020年末のR/Pは53.7年であった。

 

 2020年にR/Pが前年比大きく上昇したのは、新型コロナ禍により石油の供給(需要)が急減したことが原因である。2019年以前を検証すると、埋蔵量については2000年~2020年の埋蔵量推移(本章3-1)に触れた通り2000年代前半は停滞、2000年代後半に伸び、そして2010年代は再び埋蔵量が停滞している。一方、生産量は(次章参照)は毎年漸増しており、埋蔵量が増加する時期にR/P(可採年数)も増えることがわかる。

 

(2001年以降ほぼ一貫して減退する天然ガスの可採年数!)

(3-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G03.pdf参照)

 2000年末の天然ガスのR/Pは57.5年であり、2001年末には62.0年であった。天然ガスのR/Pはこの年をピークとして毎年低下し2003年には60年を切り、2018年には50年を下回っている。そして2020年末のR/Pは2001年末のピークに比べると12年強短くなっている。埋蔵量は2001年の153兆立方メートル(㎥)から2020年には188兆㎥に増加したが、この間、生産量の増加が埋蔵量増加のペースを上回っている為、R/Pが年を追うごとに低下しているのである。

 

 21世紀に入りLNGの利用が世界的に普及した結果、天然ガスの消費量が急増、探鉱開発による埋蔵量の追加が生産の増加に追い付かなくなったことが可採年数の低下につながっている。

 

(2018年を境に石油と天然ガスの可採年数が逆転!)

(3-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-G03.pdf参照)

 石油と天然ガスの合計埋蔵量を両者の合計生産量で割った石油・天然ガスの可採年数(R/P)の推移を見ると、2000年末のR/Pは51.3年であった。R/Pは2003年に54.3年まで上がった後、下降局面に入り2006年の可採年数(49.1年)を底に再び増加、2011年末には55.1年のピークを記録した。しかし2012年以降R/Pは下落傾向となり、2019年末には2006年と同じ49.1年まで下がっている。

 

 石油・天然ガス合計のR/Pを上記の石油あるいは天然ガスそれぞれのR/Pと比較すると、2001年には天然ガスのR/Pが62.0年、石油のR/Pは47.9年であり、両者の間には14年強の開きがあった。しかしその後は天然ガスのR/Pが年々下がり、2013年にはほぼ同じ(石油53.5年、天然ガス53.9年)となり、石油+天然ガスのR/Pは53.6年であった。石油と天然ガスのR/Pが同じレベルになったことは炭化水素エネルギーとしての市場での評価が同等になったことを意味している。

 

 この状態は2017年まで続いたが、2018年以降は従来とは逆に石油のR/Pが天然ガスのそれを上回り始めた。この逆転現象は注目すべきことであり、市場で天然ガスが石油よりも評価が高くなったことを示していると言えよう。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(7月20日)

2021-07-20 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・OPEC+の減産緩和で原油価格下落。Brent $72.98, WTI $71.15

(中東関連ニュース)

・イラン、ハメネイ師 ハジ声明発表。西欧の影響に抵抗を

・ヨルダン国王、バイデン大統領とアラブ首脳で初の直接会談

・エチオピア、青ナイルダムの第二次貯水開始、下流のスーダン/エジプトに波紋

・クウェイト、赤字補填のため次世代ファンドに手を付ける

・トルコ、EUの職場での女性スカーフ禁止の動きを非難

・トルコ、ハイブリッドロケットの試射成功。2023年に無人月着陸目指す

・米、グアンタナモのモロッコ人虜囚1名を本国送還。現在なお39名拘留。 *

*(ニュース解説)「米国はどうする? キューバ・グアンタナモ問題」(2015年12月)参照。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(7月19日)

2021-07-19 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・OPEC+協調減産体制来年末まで継続で合意。8月から毎月40万B/D減産緩和、UAEなど5か国の基準生産量を上方修正

*レポート「UAEの反乱で流会になったOPEC+(プラス)会合」参照。

*表「OPEC 及びNon OPEC (OPEC+) の協調減産量(2021年7月現在):Voluntary Production Levels」参照。

(中東関連ニュース)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(7月18日)

2021-07-18 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・原油価格、週間下落幅は5月最終週以来最大。Brent $73.57, WTI $71.86

・OPEC+、行き詰まり打開のため18日に臨時会合、UAEの生産量引き上げか。 *

*レポート「UAEの反乱で流会になったOPEC+(プラス)会合」参照。

(中東関連ニュース)

・イラン アラグチ外務次官:交渉再開は8月の新政権発足以後に

・シリアのアサド大統領、4期目7年の就任宣誓

・S&P、クウェイトの格付けをAA-からA+に引き下げ。 *

*レポート「世界主要国のソブリン格付け(2021 年 7 月現在) 」参照。

・41度の炎暑の中、マッカでハジ巡礼始まる。昨年に続き6万人に制限

・サウジ国富ファンドPIF、スポーツカーのマクラーレンに7.6億ドル投資

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

データベース更新のお知らせ

2021-07-17 | データベース追加・更新

OPEC加盟国、米国およびロシアに関する月別原油生産量推移(2018年1月~2021年6月)を取りまとめました。

自由にご利用ください。

 

2-D-2-03 Oil Production (2018.1- )(OPEC, USA, Russia)
2-D-2-04 Ditto (OPEC)
2-D-2-05 Ditto (Saudi Arabia)
2-D-2-06 Ditto (Iran)
2-D-2-07 Ditto (Venezuela)
2-D-2-08 Ditto (Libya)
2-D-2-09 Ditto (Iraq)
2-D-2-10 Ditto (Nigeria)
2-D-2-11 Ditto (UAE)
2-D-2-15 Ditto (USA)
2-D-2-20 Dritto (Russia)
2-D-2-25 Ditto (USA, Russia & Saudi Arabia)
2-D-2-26 Ditto (ditto) with Brent oil price

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の各社プレスリリースから(7/11-7/17)

2021-07-17 | 今週のエネルギー関連新聞発表

7/12 ExxonMobil/TotalEnergies他

Air Liquide, Borealis, Esso, TotalEnergies and Yara collaborate to help decarbonize the industrial basin of Normandy in France

https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2021/0712_Air-Liquide_Borealis_Esso_TotalEnergies_Yara-collaborate-on-decarbonization

 

7/13 TotalEnergies

Australia: TotalEnergies enters into an infrastructure agreement with GIP on Gladstone LNG

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/australia-totalenergies-enters-infrastructure-agreement-gip-gladstone-lng

 

7/16 石油連盟

杉森 石油連盟会長定例記者会見 発言要旨

https://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2021/index.html#id1942

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(7月16日)

2021-07-16 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・米国が韓国、日本のイラン凍結資産の貿易決済使用を認める:米誌報道

(中東関連ニュース)

・トルコのエルドガン大統領とイスラエル大統領電話会談が意味するもの

・UAEがイスラエルのテルアビブにGCC初の大使館開設

・ハリリ氏が首相指名を辞退。混乱の極に達したレバノン

・イラク・サドル師、10月選挙ボイコットを言明

・ヨルダン、アリ王子を摂政に任命

*(ニュース解説)「ヨルダン王家に何が起こったのか?」参照。

*「ヨルダン・ハシミテ王家系図」参照。

 

・Fitch、サウジの格付けをA「ネガティブ」から「安定的」に変更

*「ソブリン格付け(S&P, 7月現在)」参照。

・サウジ財務相、ハモンド元英蔵相をアドバイザーに起用

・駐サ岩井大使、スポーツ大臣とTV会談

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2021年版解説シリーズ(埋蔵量篇3)

2021-07-16 | BP統計

1.世界の石油・天然ガスの埋蔵量

(3) 2000~2020年の埋蔵量の推移

(2019年から2年連続で埋蔵量が減少!)

(3-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G02.pdf参照)

 2000年から2020年までの各年末の世界の石油埋蔵量推移を見る。2000年末の1.3兆バレルから2020年末は1.33倍の1.7兆バレルに増加している。この間の対前年増加率の平均は2.9%であった。

 

年を追って見ると、2000年代前半は緩やかな増加を示し1.3兆バレル台で推移した。2000年代後半に入り、埋蔵量は急激に増加し2007年に1.4兆バレル、2009年には1.5兆バレルを超え、2010年には対前年比7%の大幅な増加により埋蔵量は1.6兆バレル台に達した。2010年代前半は再び増加率が鈍り、埋蔵量が1.7兆バレルを超えたのは2017年である。そして2018年の1.74兆バレルをピークに2019年及び2020年は2年連続で埋蔵量が減少、2020年末の埋蔵量は1.73兆バレルとなっている。

 

(2019年の190兆㎥がピーク?)

(3-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G02.pdf参照)

 2000年末の世界の天然ガス埋蔵量は138兆立法メートル(以下兆㎥)であり、20年後の2020年末の埋蔵量は1.36倍の188兆㎥に達している。この間の対前年増加率の平均は1.6%であった。上記の石油と比較すると、天然ガスの方が増加幅は大きいが、対前年増加率の平均は小さい。これは天然ガスの対前年増加率が1%未満あるいはマイナスになる年が多かったためである。

 

 年を追って推移を見ると、2000年末の埋蔵量138兆㎥は翌2001年に大幅に増えて152兆㎥になり、その後2006年までは微増にとどまった。2007年以降埋蔵量は再び増加に転じ2010年末には180兆㎥の大台を突破、2010年代は180兆㎥台を続け、2019年には190兆㎥と過去最大に達した。しかし2020年末には埋蔵量が188兆㎥に下がっている。

 

(石油と天然ガスの比率は6:4で20年間変わらず!)

(3-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-G02.pdf参照)

 石油と天然ガスの2000年の合計埋蔵量は石油換算で2.2兆バレルであり、2020年には1.34倍の2.9兆バレルに増加、この間の対前年増加率の平均は1.5%である。合計埋蔵量は2001年に2.3兆バレルを超え、2010年には2.8兆バレルに達したが、2017年に2.9兆バレルを超えた後は横ばいを続けており、昨2020年は2019年より0.6%減少している。

 

 石油と天然ガスの比率を見ると200年は石油60%、天然ガス40%であったが、この比率はその後も変化が無く、2020年は石油59%、天然ガス41%である。

 

(付記)今後埋蔵量はさらに減少するか?:IEA勧告の影響度

 各年末の埋蔵量は下記の数式で表すことができる。即ち、

本年末の埋蔵量 = 前年末埋蔵量 + 本年中の新規発見量 - 本年中の生産量

 これは本年中の新規発見量が生産量を上回れば埋蔵量は前年より増加し、逆に生産量が発見量を上回れば埋蔵量は前年より減少することを示している。

 

 上述のとおり石油は過去2年連続、また天然ガスも昨年は埋蔵量が減少している。実は後述の「生産」の章で述べる通り、昨2020年は新型コロナ禍のため経済活動が停滞し、石油、天然ガス共に生産量が前年を下回っている。それにもかかわらず埋蔵量が減少しているのは、新規発見量がそれ以上に減少しているためである。これは世界的規模で探鉱開発が低調になっていることが原因である。

 

 今後コロナ禍が終息し経済活動が回復すれば石油・天然ガスの需要も回復するであろう。その際、石油・天然ガスの価格が上昇し、探鉱開発投資のインセンティブが生まれ、それが数年後に新規埋蔵量の増加と言う形に反映される、と言うのが従来の一般的な見方であった。IEA(国際エネルギー機関)もこれまでは埋蔵量の減少に対して、石油・天然ガスの生産国あるいは企業に対して探鉱開発の促進を呼びかけてきた。

 

 しかし最近、地球環境問題が大きくクローズアップされ、IEA自身が2050年までに炭酸ガス排出ゼロを目指すレポート「Net Zero by 2050」を発表した。IEAはこの中で石炭事業への投資を直ちにストップし、石油・天然ガスも新規開発投資をゼロにするよう勧告している。

 

 炭化水素エネルギーである石油・天然ガスに対してかつてない逆風が吹いており、埋蔵量も今後減少することは避けられない。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする