石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油と中東のニュース(7月14日)

2021-07-14 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・原油価格反発。Brent $75.52, WTI $74.45

・OPEC+の内部決着には6週間以上必要:JP Morgan。 *

*ニュース解説「 UAEの反乱で流会になったOPEC+(プラス)会合」参照。

・カタール/韓国、2025年以降年間2百万トンのLNG、20年間供給契約締結。*

*参考「BP エネルギー統計 2020 年版解説シリーズ天然ガス篇・LNG貿易

 

(中東関連ニュース)

・イラクNasiriyahのコロナ病院火事で92人死亡

・ヨルダン:宮廷内紛事件で2名に懲役15年。ハムザ王子の処遇不明。 *

*ニュース解説「ヨルダン王家に何が起こったのか?」参照。

・エジプト、ムスリム同胞団シンパの公務員解雇の法律制定

・エジプト初の原発、書類審査終了

・UAE中央銀行、2023-26戦略計画でデジタル通貨導入

・アブダビのホテル利用率、コロナ禍後最高の68.5%に

・イランで公式お見合いサイト開設。若者の少子化、晩婚化対策

・サウジ皇太子MBSとアブダビ皇太子MBZの関係が微妙に。 *

*レポート「地に堕ちたサウジ外交 Part3:取り残されたサウジアラビア
」参照。

・カナダ亡命中のサウジ前諜報長官の裁判で米国機密情報取り扱いに注目

 

 

 

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BPエネルギー統計2021年版解説シリーズ埋蔵量篇(2)

2021-07-13 | BP統計

1.世界の石油・天然ガスの埋蔵量

(2) 2020年末の国別埋蔵量

(石油埋蔵量世界一はベネズエラ!)

(2-1)石油 (表http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-T01.pdf参照)

 2020年末の石油埋蔵量が世界で最も多いのはベネズエラの3,038億バレルであり、サウジアラビア(2,975億バレル)がわずかな差で世界第2位である。両国が世界全体の埋蔵量(1.7兆バレル)に占める割合はそれぞれ17%強である。

 

 3位以下は埋蔵量が2,000億バレル以下であり、世界全体に占めるシェアも10%未満である。3位以下10位までの国とその埋蔵量は、カナダ(1,681億バレル)、イラン(1,578億バレル)、イラク(1,450億バレル)、ロシア(1,078億バレル)、クウェイト(1,015億バレル)、UAE(978億バレル)、米国(688億バレル)及びリビア(484億バレル)である。因みにOPEC加盟国の合計埋蔵量は1.2兆バレルであり、世界全体に占める割合は7割に達する。

 

 なおこれを各国の生産量と比べると(後述「生産量」の項参照)、興味深い事実が浮かび上がる。即ち埋蔵量ベスト10カ国のうち、1位のベネズエラと10位のリビアを除く8カ国は生産量でもベスト10に入っているが、ベネズエラは生産量世界27位であり、リビアは同31位にとどまっている。両国ともに内政が混乱し、石油生産が極端に落ち込んでいる。ベストテンの中でも、米国は埋蔵量9位であるが、生産量は世界一であり、一方、イランは埋蔵量世界4位で、生産量は8位にとどまっている。世界最強の米国と米国の経済制裁に苦しむイランの対照的な姿が現れている。

 

(天然ガス埋蔵量世界一はロシア!)

(2-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-T01.pdf参照)

  2020年末現在、世界で天然ガスの埋蔵量が最も多いのはロシアである。同国の埋蔵量は37.4兆立方メートル(以下㎥)であり、世界全体の20%を占めている。ロシアに次いで天然ガスの埋蔵量が多いのはイランの32.1兆㎥、3位から5位まではカタール(24.7兆㎥)、トルクメニスタン(13.6兆㎥)、米国(12.6兆㎥)であり、これら5カ国が10兆兆㎥を超える埋蔵量を有する国々である。

 

 2位イランと3位カタールのガス田はいずれもペルシャ(アラビア)湾内にある海上ガス田であり、イラン側では南パルスガス田と呼ばれカタールはNorth Domeと呼んでいるが、実は両国のガス田は一体としての広がりを持ったものである。現在はそれぞれの領海あるいは経済水域内で十分な量のガスを産出しており問題はない。しかし将来ガス開発が沖合に広がれば両国間で資源争奪戦が懸念されるところである。

 

(石油+天然ガス合計埋蔵量世界一はイラン!)

(2-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-T01.pdf参照)

 石油と天然ガスの埋蔵量世界一は、それぞれベネズエラとロシアであるが、両者を合計した埋蔵量が世界で最も多いのはイランである。同国の原油埋蔵量は1,580億バレル、天然ガスは32.1兆㎥であり、これを石油に換算すると2,020億バレルである。従ってイランの石油・天然ガス合計埋蔵量は石油換算で3,600億バレルとなる。石油と天然ガスの比率は44:56である。

 

 イランに次いで多いのはベネズエラである。同国の場合石油は3,040億バレル、天然ガスは6.3兆㎥(原油換算390億バレル)で合計3,430億バレルとなる。石油が9割近くを占め、天然ガスに比べて圧倒的に多い。ロシアの合計埋蔵量はベネズエラとほとんど同じであるが、石油とガスの構成比は石油3割、天然ガス7割であり、ベネズエラと対照的である。

 

 4位から10位までの国の生産量(石油換算)及び石油・ガス構成比を列挙すると以下の通りである。

 4位サウジアラビア 3,350億バレル(石油89:ガス11、以下同じ)、5位カナダ 1,830億バレル(92:8)、6位カタール 1,800億バレル(14:86)、7位イラク 1,670億バレル(87:13)、8位米国 1,480億バレル(46:54)、9位UAE 1,350億バレル(72:28)、10位クウェイト 1,120億バレル(90:10)

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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石油と中東のニュース(7月12日)

2021-07-12 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

(中東関連ニュース)

・オマーン国王、サウジを公式訪問。即位後初の外遊

・シリア:食パン、ガソリン価格大幅アップ。公務員給与も50%アップ

・組閣をあきらめるな:エジプト大統領がレバノン・ハリリに呼びかけ

・エジプト/イスラエル両国外相がブリュッセルで会談

・パレスチナ労働相、活動家の逮捕死亡事件で辞任騒動劇

・カタール、10月の議会選挙に向けて選挙管理委員会発足

・エジプト:米ベクテル、75億ドルの複合化学プラント受注

・サウジSavola Group、UAE食品企業Bayaraを2.6憶ドルで買収

・ドバイFood Tech Valleyで大型野菜工場稼働

・ヨルダン観光産業、EU旅行制限緩和、格安航空便再開で息吹き返す

 

 

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BPエネルギー統計2021年版解説シリーズ埋蔵量篇(1)

2021-07-12 | BP統計

(トップページ:http://mylibrary.maeda1.jp/ )

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2021」を発表した。以下は同レポートの中から石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量、貿易量等のデータを抜粋して解説したものである。なお、本稿では天然ガスを石油に換算し合計した炭化水素資源の埋蔵量、生産量、消費量についても比較した。

 

 *BPホームページ:

bp Statistical Review of World Energy 2021: a dramatic impact on energy markets | News and insights | Home

 

 **天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル(以下㎥)=629万バレル(1兆㎥=62.9億バレル)。

 

1.世界の石油・天然ガスの埋蔵量

(1) 2020年末の地域別埋蔵量

(中東に世界の石油の半分!)

(1-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G01.pdf参照)

 2020年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆7,320億バレル(1バレル=159リットル)である。地域別の分布を見ると最も多いのが中東であり、世界全体の半分近く(8,360億バレル、48%)を占めている。次いで多いのが中南米の3,230億バレル(19%)であるが、中東の半分以下である。これに続くのが北米(14%)、ロシア・中央アジア(8%)、アフリカ(7%)である。アジア・大洋州および欧州は後述する通り消費量では世界トップ及び3位の一大消費地であるが、埋蔵量ベースではそれぞれ世界の3%と1%を占めるに過ぎない。

 

(ユーラシア大陸に世界の天然ガスの7割!)

(1-2)天然ガス (図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G01.pdf参照)

 2020年末の世界の天然ガス埋蔵量は188兆立法メートル(以下㎥)である。地域別の分布を見ると石油と同様中東が最も多く76兆㎥であり、世界全体の40%を占めている。中東に次いで天然ガス埋蔵量が多いのはロシア・中央アジアの57兆㎥(全世界の30%)である。これに欧州(2%)を加えると、ユーラシア大陸の埋蔵量シェアは70%を超える。その他の大陸はアジア・大洋州(主としてオーストラリア)が9%、北米8%、アフリカ7%、中南米4%といずれも埋蔵量シェアは一桁台にとどまっている。

 

(石油の比率が高い中南米、天然ガスの比率が高いアジア・大洋州!)

(1-3)石油+天然ガス (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-G01.pdf参照)

 上記天然ガスの埋蔵量を石油に換算し(1兆㎥=63億バレル)、石油と合計した埋蔵量で比較すると、中東が1兆3,100億バレルで最も多く、全世界の45%を占めている。次いでロシア・中央アジア5,020億バレル(17%)、中南米3,730億バレル(13%)、北米3,380億バレル(12%)、アフリカ2,060億バレル(7%)、アジア・大洋州1,490億バレル(5%)、欧州340億バレル(1%)の順である。

 

 因みに各地域の石油と天然ガスの比率を見ると中東は石油64%、天然ガス36%であり、石油の比率が高い。その他の地域も概して石油の比率が高く、中南米は石油87%に対し天然ガスは6分の1の1に過ぎない。このような中でロシア・中央アジアとアジア・大洋州は天然ガスが7割を占め、他の地域とは逆の様相を示している。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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石油と中東のニュース(7月10日)

2021-07-10 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

(中東関連ニュース)

・バイデン米大統領:8/31日にアフガン撤退完了を言明

・タリバン、アフガニスタンの国土85%支配

・国連安保理、トルコからのシリア救援物資輸送ルート1年間継続で合意

・オマーン国王、11-12日にサウジ訪問

・UAE Mubadala衛星通信子会社、株式公開に注文殺到。7.4億ドル調達見込

・サウジ:巡礼は6万人限定、Eid Al-Adhaは20日から

・ロシア-エジプト観光チャーター便、6年ぶりに再開

 

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今週の各社プレスリリースから(7/4-7/10)

2021-07-10 | 今週のエネルギー関連新聞発表

7/5 ENEOS

当社最大規模のメガソーラー発電所の建設開始について~メガソーラー発電所の送電開始と、全国3カ所での建設工事開始~

https://www.eneos.co.jp/newsrelease/20210705_01_01_2011378.pdf

 

7/5 OPEC

18th OPEC, non-OPEC Ministerial Meeting called off

https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/6483.htm

 

7/7 JOGMEC

ブルー水素・アンモニア供給に向けたマスタープラン構築へ東シベリア-日本間のアンモニアバリューチェーンの事業化調査フェーズ2を開始

http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_08_000113.html

 

7/7 ENEOS

仏 BW Ideol 社との日本国内における浮体式洋上風力発電の共同事業開発契約の締結について

https://www.eneos.co.jp/newsrelease/20210707_01_01_1170836.pdf

 

7/8 経済産業省

梶山経済産業大臣は、ジャーベル・アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEO兼産業・先端技術大臣との間でTV会談を行いました

https://www.meti.go.jp/press/2021/07/20210708001/20210708001.html

 

7/8 JOGMEC/INPEX

アラブ首長国連邦アブダビ首長国におけるクリーン・アンモニア生産事業の事業化可能性に関する共同調査契約の締結について

http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_15_000001_00077.html

 

7/8 bp

bp Statistical Review of World Energy 2021: a dramatic impact on energy markets

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-statistical-review-of-world-energy-2021-a-dramatic-impact-on-energy-markets.html

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(ニュース解説) UAEの反乱で流会になったOPEC+(プラス)会合(下)  

2021-07-09 | その他

2.サウジアラビアとロシアが描いた8月以降のシナリオ

 今回、ロシアは中国、米国などで景気が上向き石油需要が回復しているとして更なる減産緩和を主張した。一方のサウジアラビアは変異株の蔓延でコロナ禍終息が見通せず拙速な増産には消極的であった。両国は事前協議により、(1)8月以降12月末までの間に200万B/D(毎月平均40万B/D)増産すること、(2)来年1月以降も1年間協調減産を続けること(減産量は未定)を合意した。

 

 これまで同様サウジアラビアとロシアの事前協議がそのまま7月1日のONOMMで承認される見通しであったが、これに抵抗したのがUAEであった。会議は2日、さらに5日と二度にわたり延期されたが結局UAE一国の反対によりONOMMは流会となった。

 

 UAEは年内の200万B/D緩和には同意している。また減産率は平等でありUAEに特に不利な訳ではない。反対の理由は自国の参考生産量(3,168千B/D)が低すぎ、その結果生産割当が不当に抑えられていると言う主張である。ただ各国の参考生産量は昨年5月の協調減産開始時に当時の各国の実生産量をベースに決定されたものである。UAEが生産量の見直しを求めるのは自国の将来の石油戦略にあると考えられる。

 

3.UAEが生産枠拡大にこだわる理由 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-2-11.pdf参照)

 UAEは2030年までに原油生産能力を現在の380万B/Dから500万B/Dに拡大する計画である。昨年々央まで世界ではエネルギー安定供給のため石油・天然ガスの開発推進が叫ばれていた。UAEはこの流れに乗った訳である。しかしその後、米国大統領選挙でバイデン民主党政権に代わってから炭酸ガスによる地球温暖化防止の動きが加速し、2050年カーボンニュートラルが世界の潮流になった。そして5月にはIEA(国際エネルギー機関)が石油の新規開発投資のストップを呼びかけると言う、これまでとは正反対の衝撃的なレポート(Net Zero by 2050)を発表した。

 

 これは石油産業の命運を左右するものである。流れに逆らえない民間企業のExxonMobil、Shellなどは、太陽光、風力など自然エネルギーの開発に拍車をかけ、あるいは石油よりも炭酸ガス排出量の少ない天然ガス資源の獲得に舵を切った。しかし現実問題として石油がエネルギーの主役の座を降りるまでにはタイムラグがある。

 

 これは裏を返せば民間企業の生産削減により一時的にOPEC+を含む産油国に対する石油の需要が増えることを意味する。これが石油以外に外貨獲得手段を持たないUAEが増産に走る理由の一つと考えられる。そしてUAEにはもう一つ隠された事情がある。それはUAEが天然ガス資源を持っていないことである。天然ガスは石油より炭酸ガス排出量が少ない環境にやさしいエネルギーである。UAEはすでに発電・造水用燃料として天然ガスを隣国カタールから輸入しており、今後は世界からLNGを輸入することも検討している。天然ガスを輸入するには外貨が必要であり、それは石油輸出によって賄う他ない。つまりUAEは天然ガス輸入のため石油を増産する必要があるのである。

 

 このパラドックスを抱えたUAEはOPEC+の中でこれからも生産枠の見直しを主張し続けるつもりであろう。

 

以上

 

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com

 

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(ニュース解説)UAEの反乱で流会になったOPEC+(プラス)会合(上)  

2021-07-08 | その他

2021年7月8日

 サウジアラビアを盟主とするOPECとこれに同調するロシアなど非OPEC産油国の合同カルテル(いわゆるOPEC+)は、今年1月以降毎月ビデオ会議方式で閣僚会合(ONOMM, OPEC and Non-OPEC Ministerial Meeting)を開催し、昨年(2020年) 4月に決定した協調減産の見直しを行っている。

 

 しかし直近の7月1日に開催予定であった第18回ONOMMは流会と言う予想外の結果になった。原因はサウジアラビアとロシアが事前に合意した8月以降の増産(減産緩和)案に対し、UAEが頑強に抵抗したためである。UAEの反乱の背景について分析すると以下のような事実が浮かんでくる。

 

 *これまでのONOMM会合については下記2件のレポートを参照。

 「本年1-7月のOPEC+(プラス)協調減産を検証する」(2021年4月)

 「首の皮一枚でつながったOPEC+(プラス)体制」(2021年1月)

 

1.970万B/D減産で始まったOPEC+の協調体制

 OPEC+の協調減産は2020年5月に始まった。体制に加わったのはOPEC10カ国、非OPEC10カ国の合計20カ国である (OPEC加盟国のうちイラン、リビア及びベネズエラは諸般の事情を考慮して協調減産の対象外となった)。この時、5-6月の減産量は970万B/Dとし、7-12月は770万B/Dに緩和することが決まった。そして国別に定められたReference Production(参考生産量)に従い、各国に減産量が振り分けられた。

 

 OPEC+の協調減産量と各国の参考生産量は昨年12月のONOMMで再検討され、今年1月の減産量を720万B/Dとして以後毎月のONOMMで見直すことになった。この結果7月の協調減産量は580万(正確には575.9万)B/Dまで緩和され、各国の減産率は一律14%弱になっている。(但しメキシコのみは割り当て参考生産量が少なすぎると主張、当初から減産割り当てを免れている)

 

 因みにUAEの参考生産量は3,168千B/Dである。7月の同国の割り当て減産量は433千B/Dであり、従ってRequired Production(所定生産枠)は2,735千B/Dとなる。またサウジアラビア及びロシアは共に参考生産量1,100万B/D、減産量1,505千B/Dであり、所定生産枠は9,495千B/Dである。

 

*今年1月以降のOPEC+協調減産の国別詳細は下記参照。

  「OPEC 及びNon OPEC (OPEC+) の協調減産量(2021年7月現在):Voluntary Production Levels

 

(続く)

 

 

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荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com

 

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石油と中東のニュース(7月8日)

2021-07-08 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・OPEC+協議破談で原油価格乱高下。Brent $77.84~74.65, WTI $76.98~73.45

・石油価格上昇でも米のシェール開発足踏み。投資家は増産よりリターン

(中東関連ニュース)

・ヨルダン国王、19日にバイデン大統領と会談

・レバノン、マロン派司教がハリリ氏に組閣要請。内閣無ければ国は亡びる

・紛争解決のため、駐レバノン仏米大使がサウジを訪問

・イラン、停電続発で大統領が異例の国民向け謝罪

・オマーン、IMFに債務軽減協力求める。 

・スエズ運河座礁事故の補償交渉妥結、コンテナ船運航再開

・ドバイ港で爆発炎上事故、負傷者なし

・サウジ:戦略データセンター建設に180億ドル投資

・ノルウェー年金基金、人権侵害理由にイスラエル企業の投資引き揚げ

・ドバイに深さ60Mのプール。水中都市再現

 

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いつまで続く香港の高いランク付け:世界主要国のソブリン格付け(2021年7月現在) (下)

2021-07-07 | 今日のニュース

(注)本レポートは「マイライブラリー」で上下一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0537SovereignRatingJuly2021.pdf

 

3.2018年7月以降の格付け推移

  ここでは2018年7月以降現在までの世界の主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。

 

(固定化する欧米とアジア・新興経済国との格差!)

(1)世界主要国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)

先進国の中ではドイツが過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。米国はドイツより1ランク低いAA+を、また英国は米国よりさらに1ランク低いAAを過去3年間続けている。

 

これに対しアジアの経済大国中国と日本の格付けは3年間A+で推移している。AAAのドイツとは4ランク、米とは3ランク、英国とは2ランクの格差があり、過去3年間格差は解消していない。これら欧米・アジアの経済大国より格付けは少し下がるが、石油大国のサウジアラビアは2018年7月以降格付けA-を維持している。

 

コロナ禍前の世界的な経済成長の中で注目やされたBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字)諸国は、上述のとおり中国が日本と同じ格付けである。その他の4カ国を見ると、ロシアとインドは2018年7月以降格付けBBB-である。これは投資適格の中で最も低く、S&Pの格付け定義では「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い。」とされている。

 

ブラジルと南アフリカは過去3年間、投資不適格BBに格付けされている。BBは投資不適格ランクでは最上位であるが「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある。」とされ、信用度が低い。2020年1月まで南アフリカはBB、ブラジルはBB-であり、南アフリカの方が1ランク上であったが2020年上半期に南アフリカが格下げされ、現在両国は同じBB-に格付けされている。

 

(トップを走るアブダビ、昨年大きく格下げされたオマーン!)

(2)GCC6カ国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)

 GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2018年7月時点ではUAE(アブダビ)及びクウェイトの格付けが最も高いAAであり、これに続きカタールがAA-に格付けされていた。しかしクウェイトは昨年上期に1ランク下のAA-格下げされ、カタールと同じ格付けになっている。

 

サウジアラビアはこれら3カ国より低くA-を続けている。同国はUAE(アブダビ)、クウェイト、カタールを大きくしのぐ石油歳入を誇っているが、一方で人口も3カ国より飛びぬけて多いため、財政的なゆとりが乏しい。S&Pはこれらの事情を考慮してサウジアラビアの格付けを厳しく見ている。

 

オマーンとバハレーンは投資不適格の格付けであり、有力な産油(ガス)国が多いGCCの中で石油生産量がごくわずかなバハレーンのソブリン格付けは過去3年間B+にとどまったままである。オマーンは2018年7月から2019年末までBB格付けを続けたが、コロナ禍の昨年1年間で2ランク格下げされ、現在ではバハレーンと同じB+なっている。格付けBの定義は「現時点では債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い。」とされており、オマーンとバハレーンの経済には不安感がある。

 

以上

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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