石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2021年版解説シリーズ(埋蔵量篇4)

2021-07-21 | BP統計

1.世界の石油・天然ガスの埋蔵量

(4) 2000~2020年の可採年数(R/P)の推移

(可採年数46年から55年の幅で揺れ動く!)

(4-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G03.pdf参照)

 可採年数(以下R/P)とは埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値で、現在の生産水準があと何年続けられるかを示している。2000年以降昨年末までの石油の可採年数(以下R/P)を見ると、2000年のR/Pは47.8年であった。2002年にR/Pは50.2年に伸びたが、その後2006年には45.9年に低下した。その後R/Pは再び伸び、2011年には過去20年ではピークの54.6年に達した。その後2015年から2019年までは50年の状態が続き、昨2020年末のR/Pは53.7年であった。

 

 2020年にR/Pが前年比大きく上昇したのは、新型コロナ禍により石油の供給(需要)が急減したことが原因である。2019年以前を検証すると、埋蔵量については2000年~2020年の埋蔵量推移(本章3-1)に触れた通り2000年代前半は停滞、2000年代後半に伸び、そして2010年代は再び埋蔵量が停滞している。一方、生産量は(次章参照)は毎年漸増しており、埋蔵量が増加する時期にR/P(可採年数)も増えることがわかる。

 

(2001年以降ほぼ一貫して減退する天然ガスの可採年数!)

(3-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G03.pdf参照)

 2000年末の天然ガスのR/Pは57.5年であり、2001年末には62.0年であった。天然ガスのR/Pはこの年をピークとして毎年低下し2003年には60年を切り、2018年には50年を下回っている。そして2020年末のR/Pは2001年末のピークに比べると12年強短くなっている。埋蔵量は2001年の153兆立方メートル(㎥)から2020年には188兆㎥に増加したが、この間、生産量の増加が埋蔵量増加のペースを上回っている為、R/Pが年を追うごとに低下しているのである。

 

 21世紀に入りLNGの利用が世界的に普及した結果、天然ガスの消費量が急増、探鉱開発による埋蔵量の追加が生産の増加に追い付かなくなったことが可採年数の低下につながっている。

 

(2018年を境に石油と天然ガスの可採年数が逆転!)

(3-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-G03.pdf参照)

 石油と天然ガスの合計埋蔵量を両者の合計生産量で割った石油・天然ガスの可採年数(R/P)の推移を見ると、2000年末のR/Pは51.3年であった。R/Pは2003年に54.3年まで上がった後、下降局面に入り2006年の可採年数(49.1年)を底に再び増加、2011年末には55.1年のピークを記録した。しかし2012年以降R/Pは下落傾向となり、2019年末には2006年と同じ49.1年まで下がっている。

 

 石油・天然ガス合計のR/Pを上記の石油あるいは天然ガスそれぞれのR/Pと比較すると、2001年には天然ガスのR/Pが62.0年、石油のR/Pは47.9年であり、両者の間には14年強の開きがあった。しかしその後は天然ガスのR/Pが年々下がり、2013年にはほぼ同じ(石油53.5年、天然ガス53.9年)となり、石油+天然ガスのR/Pは53.6年であった。石油と天然ガスのR/Pが同じレベルになったことは炭化水素エネルギーとしての市場での評価が同等になったことを意味している。

 

 この状態は2017年まで続いたが、2018年以降は従来とは逆に石油のR/Pが天然ガスのそれを上回り始めた。この逆転現象は注目すべきことであり、市場で天然ガスが石油よりも評価が高くなったことを示していると言えよう。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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