(注)本レポートは「マイライブラリー」で上下一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0537SovereignRatingJuly2021.pdf
本レポートは著名な格付け会社Standard & Poors (S&P)[1]の2021年7月現在の世界主要国及びMENA諸国のソブリン格付け[2]を取り上げて各国を横並びに比較するとともに、いくつかの国について過去3年間にわたる半年ごとの格付け変化を検証するものである。
因みにS&Pの格付けは最上位のAAAから最下位のCまで9つのカテゴリーに分かれている。このうち上位4段階(AAAからBBBまで)は「投資適格」と呼ばれ、下位5段階(BBからCまで)は「投資不適格」又は「投機的」とされている。またAAからCCCまでの各カテゴリーには相対的な強さを示すものとしてプラス+またはマイナス-の記号が加えられている[3]。なおC以下でS&Pが債務不履行と判断した場合はSD(Selective Default:選択的債務不履行)格付けが付与され、さらに格付けを行わない場合はN.R.と表示される。
*過去のレポートは下記ホームページ参照。
http://mylibrary.maeda1.jp/SovereignRating.html
(台湾が1ランク格上げで英仏韓に並ぶ!)
1.2021年7月現在の各国の格付け状況
(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-01.pdf 参照)
2021年7月現在の格付けを半年前の1月と比べると最高格付けAAA(トリプルA)のドイツ、シンガポール等の国々を含めAA+の米国、AAの英仏、A+格付けの日本、中国など主要な国々に変動はなかった。ただ台湾はAA-からAAに1ランク格上げされ英仏あるいは韓国に並んだ。
この結果日本を含む極東各国(地)の現在の格付けは香港のAA+が最も高く、韓国と台湾が1ランク下のAA、日本と中国がさらに2ランク低いA+とされている。香港の格付けは米国と同じであり、中国本土より3ランク高い。米中の対立および中国本土の締め付けなどにより香港の地位は極めて不透明である。国際金融都市として高い格付けを付与してきた欧米の格付け機関が、今後香港に対してどのような評価を下すのか注目される。
G7の国々のうちドイツ及びカナダはAAAの最高格付けであり、米国は1ランク下のAA+、英国及びフランスはさらに1ランク低いAAである。そして日本はAAAより4ランク低いA+に格付けされ、イタリアは投資適格ではあるがBBBにとどまっている。因みに格付け定義ではAAは「債務を履行する能力は非常に高く、最上位の格付け(トリプルA)との差は小さい」とされ、これに対して格付けAは「債務を履行する能力は高いが上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化からやや影響を受けやすい」とされている。そしてBBBの定義は「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」である。
G7以外の国ではアジア諸国のうちシンガポール及びオーストラリアがAAAに格付けされ、またMENA諸国では、アブダビがAAに、カタール、イスラエル及びクウェイトがAA-に格付けされている。サウジアラビアの格付けはA-である。
アジアの国々の多くは投資適格では最も低いBBBの格付けであり、タイ及びフィリピンがBBB+、インドネシアはBBB、インドはBBB-である。ロシアはインドと同じ格付けである。南米のブラジルとアルゼンチンはいずれも投資不適格であり、このうちブラジルはBB-、アルゼンチンの格付けはCCC+とされている。
今年上半期に格付けが変更された国を見ると、上述のとおり台湾がAA-からAAに格上げされており、ギリシャもBB-からBBに格上げされた。一方、モロッコはBBB-からBB+に格下げされ、投資適格から投資不適格(または投機的)の範疇に落ちている。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
[1] 世界的な格付け会社はS&P社のほかにMoody’s及びFitchRatingがあり、三大格付け会社と呼ばれている。
[2] ソブリン格付とは国債を発行する発行体の信用リスク、つまり債務の返済が予定通りに行われないリスクを簡単な記号で投資家に情報提供するものである。「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。
[3] S&Pの格付け定義についてはhttp://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-02.pdf参照。
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
・OPEC+会合、増産派UAEがサウジ、ロシアに謀反。5日(月)に延期。 *
*表’OPEC Voluntary Production Level'参照。
(中東関連ニュース)
・リビア政治対話集会、大統領/国会議員選挙方式で合意できず。
6/29 TotalEnergies
TotalEnergies and Uber Join Forces to Accelerate the Transition Towards Electric Urban Mobility
https://www.totalenergies.com/media/news/press-releases/totalenergies-and-uber-join-forces-accelerate-transition-towards-electric
6/30 コスモエネルギーホールディングス
ASF株式会社との資本業務提携のお知らせ
https://ceh.cosmo-oil.co.jp/press/p_210630_02/index.html
7/2 OPEC
18th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting to reconvene on 5 July
https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/6482.htm
7/2 出光興産
超小型EVと次世代モビリティサービスのティザーサイトをオープン 低速で小回りが利く、近距離移動に特化した次世代モビリティ事業を推進
https://www.idemitsu.com/jp/news/2021/210702.html
7/2 ExxonMobil
Our position on climate policy and carbon pricing
https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/Statements/Our-position-on-climate-policy-and-carbon-pricing
7/2 Shell
Shell starts up Europe’s largest PEM green hydrogen electrolyser
https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2021/shell-starts-up-europes-largest-pem-green-hydrogen-electrolyser.html
7/2 OPEC
18th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting to reconvene on 5 July
https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/6482.htm
世界的な組織・人事コンサルティング会社マーサー(Mercer)社が毎年行っている世界主要都市生計費調査ランクの2021年版が発表された。同社の調査結果は、駐在員を海外に派遣する多くの民間企業に利用されている。今回の調査では世界209都市が取り上げられているが、本稿では日本及び欧米先進国の主要都市に加え、中東の主要都市の世界ランクを概観する。
*Mercer URL: https://www.mercer.com/our-thinking/career/cost-of-living.html
1.物価が高い都市ベストテン(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-B-4-02.pdf)
物価が世界一高いのはトルクメニスタンのアシガバートである。これに次ぐのが香港、3位はベイルートとされている。そして4位、5位は東京とチューリッヒ(スイス)である。これら5都市を昨年のランクと比較すると、1位と2位が入れ替わっており、3位のベイルートは昨年の45位から一挙にランクが上がっている。ベイルートは政治・経済の混乱、港湾倉庫の爆発事故、コロナ禍等が重なった結果、猛烈なインフレに見舞われており、生計費ランクが急上昇した。東京及びチューリッヒはベイルートが3位になったため相対的に1ランク下がっている。6位以下10位までは上海、シンガポール、ジュネーブ、北京及びベルン(スイス)の各都市である
2.10位以下の世界及び中東の主要都市
欧米の主要都市を見ると、ニューヨークは世界14位、ロンドン18位、パリ29位である。また東京以外の日本の主要都市は大阪が23位、名古屋が34位である。
中東の主要都市では上記1のごとくベイルートの物価が世界3位で最も高いが、これに次ぐのはサウジアラビアの首都リヤド(世界29位)である。中東最大の商業都市ドバイは世界42位、同じUAEのアブダビは56位、サウジアラビアの商都ジェッダは世界94位である。その他の中東の都市はクウェイト(115位)、ドーハ(カタール、130位)、カイロ(エジプト、137位)、イスタンブール(トルコ、173位)などいずれも世界100位以下で、生計費が比較的安いようである。
以上
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(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
(中東関連ニュース)
*レポート「ヨルダン王家に何が起こったのか?」(2021年5月)参照。
・エジプト、エチオピアのナイルダム運用は下流国にもフェアに。
・ドバイ、DP World、米サプライチェーンSyncreonを12億ドルで買収。
・カタール投資庁、クレディ・スイス出資率を4.8%に低減、筆頭株主のちい明け渡す。
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0535WorldRank7.pdf
(世界ランクシリーズ その7 2020年版)
(武器輸入額ではインドが世界一、日本は世界18位!)
(2) 主要国の武器輸入額(2011年~2020年合計額)
(図http://rank.maeda1.jp/7-G07.pdf参照)
2011年から2020年までの10か年間の武器輸入合計額は世界全体で2,800億ドル強であった。国別ではインドが最も多く同国の輸入額は331億ドル、世界全体の12%を占めている。輸入国第2位はサウジアラビアの261億ドルで世界シェアは9%である。
第3位は中国の129億ドルであるが、前項でも述べた通り同国は輸出額では世界第4位であり、武器貿易が活発なことを示している。中国に次いでオーストラリア、エジプト及びUAEが輸入額100億ドルを超えている。7位から10位は韓国、アルジェリア、パキスタン、トルコでその輸入額は98~71億ドルである。因みに日本の過去10年間の武器輸入額は44億ドル、年間平均4.4億ドルであり、世界18位に相当する。日本の場合、軍事費(2020年、491億ドル、第1項参照)に比べ輸入額の割合が小さいのは武器の国産化が進んでいるためと考えられる。
以上
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