(石油関連ニュース)
原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil
(中東関連ニュース)
・レバノン大統領選挙、6月14日。キリスト教勢力とヒズボラ派の一騎打ち。
・イラン、超音速弾道ミサイル公開。速度は音速の5倍、飛行距離1,400KM。
(石油関連ニュース)
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(中東関連ニュース)
・レバノン大統領選挙、6月14日。キリスト教勢力とヒズボラ派の一騎打ち。
・イラン、超音速弾道ミサイル公開。速度は音速の5倍、飛行距離1,400KM。
(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0578MajorEneosIdemitsuMar2023.pdf
3.投資キャッシュフロー
(▲100億ドル台のメジャーズ5社、一桁台の日系2社!)
(1)2022年(度)投資キャッシュフロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-05.pdf 参照)
2022年(度)の投資キャッシュフローを比較するとENEOSは▲1,159億円(▲9億ドル、換算レート:135円/ドル)であり、出光はプラス701億円(5億ドル、換算レート:135.5円/ドル)であった。一方メジャー5社はShellが▲224億ドルと最も大きく、次いでTotalEnergies(▲151億ドル)、ExxonMobil(▲147億ドル)、bp(▲137億ドル)、Chevron(▲121億ドル)であり、5社ともに投資キャッシュフローは100億ドルを超えている。メジャー5社と日系2社の格差は大きい。
(2021年を境に増加に転じたIOC5社、減少傾向の日系2社!)
(2)2019年(度)~22年(度)投資キャッシュフローの推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-15.pdf 参照)
2019年のメジャー5社の投資キャッシュフローはExxonMobilの▲231億ドルを筆頭に、TotalEnergies及び bpが▲170億ドル強で並び、Shellが▲158億ドル、Chevronが最も少ない▲115億ドルであった。これに対してENEOSは▲34億ドル、出光は▲12億ドルであった。
その後2020年から2021年にかけてメジャー各社の投資キャッシュフローは2年連続で減少し、2022年は反転して増加している。これに対して日系2社は2021年度まで横ばい傾向を示した後、2022年度は大きく減少しており、両者は対照的な様相を示している。4年間を通じてみるとExxonMobil及びTotalEnergiesは一貫して▲100億ドル以上の安定した投資キャッシュフローであることがわかる。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
プロローグ(7)
007.中東を流れる三つのアイデンティティ(2/3)
都市化が進んだ近代国家では「核家族」の言葉に代表されるように、血のつながりは家族もしくは親族どまりであり、「一族」、「部族」などは死語に近い。最も大きな概念である「民族」という言葉は今もよく使われるが、それは政治のスローガンとして利用されることが多い。これに対して中東(特にアラブ民族の間)ではこの「血」のアイデンティティが今も末端の庶民からトップの権力者まで広く意識されていると言えよう。
「血」のアイデンティティがDNAとして受け継がれる先天的なものであるのに対して「心」と「智」のアイデンティティは後天的に得るものである。「心」とは信仰心のことであり、「智」とは政治思想あるいは主義主張を指す。
中東で信仰と言えばイスラームが圧倒的な影響力を持っている。アラブ民族、トルコ民族、ペルシャ民族などもほとんどがイスラームの信者(ムスリム)である。もちろん中東の人々の中にはエジプトのコプト教徒のようなキリスト教信者もいればユダヤ教徒の国イスラエルもある。ムスリム、キリスト教、ユダヤ教はともに一神教という共通点を有するが、むしろそれ故にこそ互いに反発し憎しみ合う長い歴史がある。特に中東におけるイスラーム国家群とユダヤ教国家イスラエルとの対立は今も先の見えない状況である。
さらに現代中東のイスラームにはスンニ派とシーア派という宗派による対立があり、或いは同じ宗派の中でも原理主義と穏健派の対立もある。宗派による対立あるいは教義の解釈をめぐる厳格派と穏健派との対立があるのは何もイスラームに限ったことではなく、西欧中世のカソリック対プロテスタントの宗教戦争もその一例である。しかし中東では近代西欧文明が浸透し、インターネットが発達したグローバリゼーションの現代において未だに(あるいは漸くと言うべきか)宗教の対立が先鋭化していることが大きな問題なのである。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
(石油関連ニュース)
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・OPEC+閣僚会合、減産継続決定。来年12月末まで総生産量4,046万B/D。
(中東関連ニュース)
2.営業キャッシュフロー
(末端製品価格政策で営業キャッシュフローがマイナスのENEOS/出光!)
(1)2022年(度)営業キャッシュフロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-04.pdf 参照)
2022年(度)の営業キャッシュフローを比較するとENEOSは▲1,102億円(▲8億ドル、換算レート:135円/ドル)であり、出光は▲328億円(▲2億ドル、換算レート:135.5円/ドル)であった。一方メジャー5社はExxonMobilが768億ドルと最も大きく、次いでShell(684億ドル)、Chevron(496億ドル)、TotalEnergies(474億ドル)、bp(409億ドル)であった。
メジャーズ5社の営業キャッシュフローはいずれもプラスであるのに対してENEOS及び出光はマイナスである。営業キャッシュフローがマイナスとは、本業で得た現金収入だけでは仕入れや経費といった支出を賄えない状態であることを意味し極めて異例である。
メジャーズは油価高騰と景気回復で売り上げが伸び、営業キャッシュフローも順当な数値を示している。これに対してENEOSの決算説明資料を見ると、法人所得税・消費税の支払い等による資金減少要因が税引き前利益当の資本増加要因を上回ったため、としており、出光も同様の説明を行っている。今期は政府の指導によりガソリン等の末端価格の激変緩和措置に伴い支払い消費税が増加した等の特殊要因があったためである。このような措置は原油及び製品価格の激変から消費者及び石油精製企業双方を保護しようとする政府の政策によるものであり、メジャーズと異なる極めて特殊な操業環境の結果である。
(V字回復したメジャーズ、営業の稼ぐ力をそがれているENEOS/出光!)
(2)2019年(度)~22年(度)営業キャッシュフローの推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-14.pdf 参照)
2019年(度)から2022年(度)までの4年間の営業キャッシュフローの推移を見ると、メジャーズと邦系2社の動きは大きく異なる。即ち、メジャーズ5社は2019年から2020年にかけて急落した後、2021年、22年はV字回復している。これに対してENEOS及び出光はメジャーズと全く逆に、2020年度は前年度よりキャッシュフローが増加しており、2021年度は大きく減少、2022年度はマイナスに転落している。これは上記に述べた通り、日本の当局が消費者を保護する一方、精製企業にもある程度の利潤確保を補償するという競争よりも保護を目的とエネルギー政策を実行しているためである。
具体的に年(度)の推移を見ると、2019年はShellが422億ドルと飛び抜けて高く、次いでExxonMobil、Chevron、bp、TotalEnergiesが200億ドル台であった。ENEOSの営業キャッシュフローは47億ドルにとどまり、出光の場合は▲3億ドルであった。
2020年(度)にはメジャーズ5社は極めて厳しい状況となり、Shellのキャッシュフローは341億ドルに急減、他の4社はさらに大きく落ち込みChevronは前年の4割、100億ドルをわずかに上回るフローであった。これに対して邦系2社は前年度を上回るキャッシュフローを生み出している。但し金額的にはメジャーズで最も少ないChevronよりも低い水準にとどまっている。
2021年に入るとメジャーズの営業キャッシュフローは大幅にアップし、2022年もその傾向が続いた。2022年(度)の各社の営業キャッシュフローはExxonMobilが768億ドルともっとも多く、次いでShellが684億ドル、その他3社は400億ドル台であった。一方、邦系2社は共に続けて2年間減少しており、2022年度はマイナスに転落している。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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(目次)
プロローグ(6)
006.中東を流れる三つのアイデンティティ(1/3)
ここから先、筆者なりの見方で戦後75年の中東の歴史をたどっていくつもりであるが、中東には三つのアイデンティティがあると筆者は考える。一つは「血」のアイデンティティ。二つ目は「心」のアイデンティティ。そして最後の一つは「智」のアイデンティティである。今後各章でこれら三つのアイデンティティについて頻繁に触れることになるが、ここで簡単に説明しておきたい。
最初の「血」のアイデンティティとは人間としてこの世に生まれたときにすでに与えられている特性、現代風に言えばDNAとでも呼ぶべきもので生物学的なアイデンティティである。「血」のアイデンティティはすなわち「民族」であり、中東でその最大のものは「アラブ」であるが、中東にはそのほかにも、トルコ民族、ペルシャ(イラン)民族などいくつかの民族が共存している(「ユダヤ民族」という呼称があるが、ユダヤは生物学的な意味での「民族」とは言えない)。
「民族」となるとかなり大きな概念になるが、「血」は先ず本人と他者との血縁関係から始まる。最も近い関係が親子・兄弟姉妹であり、これが「家族」と呼ばれる。伯父・叔母・従兄弟等の関係まで広げると「親族」となり、遠い縁戚関係を含めると「一族」となる。さらにその上に「一族」を束ねる「部族」があり、最終的には「民族」のカテゴリーに行き着く。すべてに共通しているのは「族」という言葉である。「族」とは同じ祖先から分かれた血統であり、すなわち「血」のつながりである。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
5/30 JOGMEC
カナダブリティッシュコロンビア州と水素・アンモニア、CCUS分野でも協力
https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00114.html
5/31 ENEOS
組織の改正について
https://www.hd.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20230531_01_01_0960492.pdf
5/31 TotalEnergies
Brazil: TotalEnergies signs Production Sharing Contract for the Agua Marinha offshore block
https://totalenergies.com/media/news/press-releases/brazil-totalenergies-signs-production-sharing-contract-agua-marinha
6/1 ExxonMobil
ExxonMobil signs carbon capture agreement with Nucor Corporation, reaching 5 MTA milestone
https://corporate.exxonmobil.com/news/news-releases/2023/0601_lcs-nucor-agreement
6/2 JX石油開発
パプアニューギニアにおける LNG 権益の取得について
https://www.nex.jx-group.co.jp/newsrelease/upload_files/20230602JP.pdf
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
プロローグ(5)
005.ヨーロッパとアジアをつなぐ中東(3/3)
ヨーロッパが南アジアに直接到達したのはアフリカ南端の喜望峰を経由する帆船ルートであった。陸上ルートはオスマントルコ帝国或いはペルシャ帝国との中継貿易に頼らざるを得ず自由な交易が阻まれていた。こうして15世紀から17世紀に「大航海時代」が訪れた。ヨーロッパ勢が海に乗り出した最大の理由はオスマン帝国の領土を迂回して胡椒や紅茶などのインド洋沿岸諸国の富を手に入れ、或いは中国の陶磁器、日本(ジパング)の金銀を手に入れるためであった。
こうしてヨーロッパ諸国は南アジアからインド洋の沿岸伝いに東へ東へと進出していった。帆船による点と点を結ぶ東洋進出であり、「大航海時代」は交易の時代であった。自らは有力な交易商品を持たない当時のヨーロッパ諸国は、インド洋ルートの寄港地であるアフリカ、インド、東南アジア、ジャワなどの産物を行く先々で仕入れ(あるいは略奪し)、物々交換の差益を巨大な富として自国に持ち帰った。そして蓄えた富で工業化を図り鉄砲など武器を製造するようになるとそれまでまがりなりにも対等であった交易が、19世紀には武器による侵略すなわち「植民地主義」によるアジア支配の時代に入ったのである。
西欧諸国にとってアジア・ルートの最大の障害はオスマントルコであったが、植民地侵略を通じてオスマントルコ支配地域は徐々に浸食され、19世紀後半の1869年にはフランスがスエズ運河を建設、その後英国が実質的な支配者となった。こうして地中海からスエズ運河、さらに紅海を経由してインド洋に至るルートが確保され西欧列強のアジア支配は確固たるものとなった。そして1914年から17年の第一次世界大戦でオスマントルコ帝国が敗れたことにより、中東から東南アジアに至る広大なアジア地域は英国、フランス、オランダの西欧植民地主義国家が支配し、彼らはアジアの富を独占したのである。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
2.売上高利益率
(二桁の利益率を確保したメジャー3社、水面すれすれのENEOS/出光!)
(1)2022年(度)売上高利益率
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-03.pdf 参照)
2022年(度)の売上高利益率を比較するとENEOSは1.0%、出光は2.7%であり、メジャーズ5社で最高のChevron(15.0%)とは圧倒的な格差がある。またExxonMobil(13.5%)およびShell(11.1%)も二桁の利益率を確保しており、TotalEnergies(7.3%)と比較しても大きく見劣りする。メジャーズの中でただ1社bpのみがマイナス(▲1.0%)でENEOS、出光を下回っている。
(コロナ禍の影響大きいメジャーズ、可もなく不可もないENEOS/出光!)
(2)2018年(度)~22年(度)売上高利益率の推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-13.pdf 参照)
2018年(度)から2022年(度)までの5年間の売上高利益率の推移を見ると、メジャーズと邦系2社の動きは大きく異なる。即ち、メジャーズ5社は2020年にいずれも利益率が大幅なマイナスに落ち込み、その後、2021年、2022年は利益率が急激に改善している(2022年のbpは例外)。これに対し、ENEOS及び出光は2019年度を除き、過去5回中4回はプラスであった。ただし、その利益率はメジャーズ各社に比べて極めて低く、5年間を通じて可もなく不可もないという状況である。
具体的に年(度)の推移を見ると、2018年(度)はChevronが9.3%で最も高い利益率を示し、以下ExxonMobil(7.2%)、Shell(6.0%)、TotalEnergies(5.5%)、bp(3.1%)、ENEOS(2.9%)、出光(1.8%)であった。2019年(度)はChevronの利益率が急下降(2.1%)したが、その他メジャーズ4社はほぼ横ばいであった。これに対してENEOS/出光両社は共にマイナスとなっている。これは2020年初にコロナ禍が始まり、同年1-3月に大きな損失が発生しており、4-3月決算の邦系2社に影響したためである。
2020年(度)はコロナ禍が企業業績を大きく圧迫しメジャーズ5社を直撃している。利益率もbp(▲18.6%)を筆頭にExxonMobil、Shellは▲12%台、Chevron、TotalEnergiesも▲5%台の損失率となった。しかし邦系2社は原油価格の製品価格への転嫁を認める政府のエネルギー政策のおかげで損失を出さずプラスの利益率となっている。
2022年(度)は原油価格が回復、bpを除くメジャーズ4社の利益率は5%を上回り、特にChevron,ExonMobil及びShell3社は二桁台の利益率を達成している。
(続く)
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