石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(5)

2023-06-02 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

プロローグ(5)

 

005.ヨーロッパとアジアをつなぐ中東(3/3)

ヨーロッパが南アジアに直接到達したのはアフリカ南端の喜望峰を経由する帆船ルートであった。陸上ルートはオスマントルコ帝国或いはペルシャ帝国との中継貿易に頼らざるを得ず自由な交易が阻まれていた。こうして15世紀から17世紀に「大航海時代」が訪れた。ヨーロッパ勢が海に乗り出した最大の理由はオスマン帝国の領土を迂回して胡椒や紅茶などのインド洋沿岸諸国の富を手に入れ、或いは中国の陶磁器、日本(ジパング)の金銀を手に入れるためであった。

 

こうしてヨーロッパ諸国は南アジアからインド洋の沿岸伝いに東へ東へと進出していった。帆船による点と点を結ぶ東洋進出であり、「大航海時代」は交易の時代であった。自らは有力な交易商品を持たない当時のヨーロッパ諸国は、インド洋ルートの寄港地であるアフリカ、インド、東南アジア、ジャワなどの産物を行く先々で仕入れ(あるいは略奪し)、物々交換の差益を巨大な富として自国に持ち帰った。そして蓄えた富で工業化を図り鉄砲など武器を製造するようになるとそれまでまがりなりにも対等であった交易が、19世紀には武器による侵略すなわち「植民地主義」によるアジア支配の時代に入ったのである。

 

西欧諸国にとってアジア・ルートの最大の障害はオスマントルコであったが、植民地侵略を通じてオスマントルコ支配地域は徐々に浸食され、19世紀後半の1869年にはフランスがスエズ運河を建設、その後英国が実質的な支配者となった。こうして地中海からスエズ運河、さらに紅海を経由してインド洋に至るルートが確保され西欧列強のアジア支配は確固たるものとなった。そして1914年から17年の第一次世界大戦でオスマントルコ帝国が敗れたことにより、中東から東南アジアに至る広大なアジア地域は英国、フランス、オランダの西欧植民地主義国家が支配し、彼らはアジアの富を独占したのである。

 

(続く)

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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原油高値と円安で拡大する国際石油企業と日系企業の格差:2022年(度)業績比較 (6)

2023-06-02 | 海外・国内石油企業の業績

2.売上高利益率 

(二桁の利益率を確保したメジャー3社、水面すれすれのENEOS/出光!)

(1)2022年(度)売上高利益率

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-03.pdf 参照)

 2022年(度)の売上高利益率を比較するとENEOSは1.0%、出光は2.7%であり、メジャーズ5社で最高のChevron(15.0%)とは圧倒的な格差がある。またExxonMobil(13.5%)およびShell(11.1%)も二桁の利益率を確保しており、TotalEnergies(7.3%)と比較しても大きく見劣りする。メジャーズの中でただ1社bpのみがマイナス(▲1.0%)でENEOS、出光を下回っている。

 

(コロナ禍の影響大きいメジャーズ、可もなく不可もないENEOS/出光!)

(2)2018年(度)~22年(度)売上高利益率の推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-13.pdf 参照)

 2018年(度)から2022年(度)までの5年間の売上高利益率の推移を見ると、メジャーズと邦系2社の動きは大きく異なる。即ち、メジャーズ5社は2020年にいずれも利益率が大幅なマイナスに落ち込み、その後、2021年、2022年は利益率が急激に改善している(2022年のbpは例外)。これに対し、ENEOS及び出光は2019年度を除き、過去5回中4回はプラスであった。ただし、その利益率はメジャーズ各社に比べて極めて低く、5年間を通じて可もなく不可もないという状況である。

 

 具体的に年(度)の推移を見ると、2018年(度)はChevronが9.3%で最も高い利益率を示し、以下ExxonMobil(7.2%)、Shell(6.0%)、TotalEnergies(5.5%)、bp(3.1%)、ENEOS(2.9%)、出光(1.8%)であった。2019年(度)はChevronの利益率が急下降(2.1%)したが、その他メジャーズ4社はほぼ横ばいであった。これに対してENEOS/出光両社は共にマイナスとなっている。これは2020年初にコロナ禍が始まり、同年1-3月に大きな損失が発生しており、4-3月決算の邦系2社に影響したためである。

 

 2020年(度)はコロナ禍が企業業績を大きく圧迫しメジャーズ5社を直撃している。利益率もbp(▲18.6%)を筆頭にExxonMobil、Shellは▲12%台、Chevron、TotalEnergiesも▲5%台の損失率となった。しかし邦系2社は原油価格の製品価格への転嫁を認める政府のエネルギー政策のおかげで損失を出さずプラスの利益率となっている。

 

2022年(度)は原油価格が回復、bpを除くメジャーズ4社の利益率は5%を上回り、特にChevron,ExonMobil及びShell3社は二桁台の利益率を達成している。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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