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(目次)
第1章 民族主義と社会主義のうねり(1)
017.大西洋憲章(1/3)
戦争の当事者たちはそれぞれに戦争開始直後から戦争が終結した場合の戦後新秩序について構想を練るのが常である。それは一対一の国同士の場合は敵国領土の自国への編入或いは敵国にいかほどの賠償を支払わせるかと言うことであったが、第一次大戦、第二次大戦の両大戦では戦後世界をどうするかと言う地球的規模の新秩序の構想がそれに加わった。
第二次世界大戦を例にとれば開戦直後もしくは勝敗の決着がつく前の段階で連合国側及び枢軸国側双方に戦後構想があったはずである。しかし結果は戦勝国となった連合国の描いた戦後世界秩序がすべての始まりとなった。当然のことながら日独伊の枢軸国が描く戦後像は闇に葬られた。と言うより戦勝国である連合国側が痕跡をとどめないまでに抹殺したと言うべきであろう。
それでは連合国側の戦後構想とはどのようなものであったろうか。それは1941年8月、ルーズベルト米国大統領とチャーチル英国首相が宣言した「大西洋憲章」に始まる。英国とフランスがドイツ第三帝国に宣戦を布告し第二次大戦がはじまった1939年から2年後のことである。因みに当時の米国は英仏を側面支援していたものの参戦していたわけではない。米国が日独伊の枢軸国に正式に宣戦布告し、連合国の一員として正面に立ちはだかったのは同年12月7日に日本軍が真珠湾を奇襲攻撃した翌8日である。
(続く)
荒葉 一也
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