ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

テレマティクスとCRM

2004年09月15日 | ITS
テレマティクスをCRMに活用することへの疑問について引き続き。

まず、そんなハイテクをつかわなくても、ディーラーは自社のサービスに入る車の走行距離は判っている。まあ、多少古い車でも30%はディーラーに入る。しかし、いったいどの程度の自動車ディーラーがその情報をCRMに活用しているだろうか。殆どないはずだ。累計走行で10万キロを超えたら新車を検討するだろうとか、年間走行距離から割り出してそろそろオイル交換の時期だろうとかのCRMは今の情報だけでも出来る。しかし、そこまでしていない。一般的には定期点検時期に合わせた営業マンによる6ヶ月毎のコンタクトをもって顧客管理としている。

ディーラーがやらないなら、テレマティクスを活用してメーカーがやる、という見方もある。でも、結局本当のCRMは人と人のコミュニケーションであり、それはディーラーにしか出来ない。
そもそも車両のコンディション情報を活用したマーケティング自体が行われているのかという、原点の疑問がある。

(但し、テレマティクスが装備されていると中古車となりオーナーが変わった後でも顧客管理が出来るという可能性は確かにある。これはまた別の機会にふれたい)

もう一つの問題、むしろこちらの方が大きな障害だと思うが、それは顧客情報保護の観点である。

これはまた明日。

日本ITS推進会議

2004年09月14日 | ITS
去る9月8日、日本のITSに関する新たな会議体として「日本ITS推進会議」が発足し、初会合を開いた。関係省庁の局長、自工会会長など、ITSに関連する重鎮で構成されている。
目指すべき交通社会(事故死者、渋滞ゼロなど)とITSの進め方、官民の取り組み課題などを議論する。

9月9日付けの日刊自動車記事を引用する。

以下引用

政府が96年に「ITS推進に関する全体構想」を公表して以来、カーナビやVICS,ETC等が普及し、ITS市場は黎明期を過ぎた。一方でテレマティクスやプローブカー構想など民間主体のサービスは普及に弾みがつかず「成長役のエンジン」を探している状況だ。「ハード偏重、ソフト戦略不在」と反省も聴かれる中、同会議がどのようなビジョンを打ち出すが注目される。

ここまで

まあ、8年も探して見つからないということは、成長役のエンジンなんてないんじゃないか、と思うべきだろう。決してハード偏重がいけなかったとは思わない。ソフト戦略不在というよりも、もっと単純に「何が消費者にとって価値ある物であるか」ということをきちんと考えなかったツケが回ってくるのではないのか。

テレマティクスの本当の狙い

2004年09月14日 | ITS
ここまで、テレマティクスの消費者ベネフィットには大騒ぎする程のマーケットバリューがないぞ、と書いてきたが、テレマティクスの最終ゴールはなにかというと、先日ほんこんさんからコメントをもらったように実はカーメーカーがCRMをしたいのだ。テレマティクスで顧客に利便を提供し、利益を得ながら顧客情報も頂くというのが最初の目論見だったとおもう。しかし、コストをまかない、その上利益を生む有料サービスは厳しいということが判り始めてきたようだ。
まさに、日産はカーウイングスの有料コンテンツを3年間無料にするという。

顧客囲い込みのための顧客情報の入手と、顧客とのインタラクティブなやりとりができればそれで良い、そのコストだという判断に変わりつつあるようだ。

確かに、ディーラーでサービスを受けない顧客の車は今累計で何キロ走行しているか、カーメーカーサイドには判らない。故障が多発していても、民間の修理工場に入っていると判らない。従って、買い換えの時期を知ることが出来ない。それを根本的に解決するためには車とダイレクトに繋がって情報をとれるようにすればいいのだ。

テレマティクスそれ自身は儲からなくてもいい、これはこれでいいのだというのなら、これ以上突っ込んでも意味がない。
が、しかし、これにも疑問がつきまとうのである。
疑問は大きく分けて2つ。
その情報を本当に活用できるのかということと、顧客情報保護に反するのでないか、ということである。

日産カーウイングス続報

2004年09月13日 | ITS
日産は10月1日以降、カーウイングスの有料コンテンツ「コンパスリンクライト」を3年間無料にするようだ。現在でも、6ヶ月のお試し期間がついているが、それを3年に延長する。更に、コールセンターを24時間オープンにするらしい。

コンパスリンクライトは有人オペレーターがナビの目的地設定などを行う機能。BlueTooth対応と併せて、テレマティクスの実際の活用は拡大していくだろう。

一方で、この方針変更は現在のやり方、つまり「6ヶ月無料、その後は472円/月の利用料」では十分に利用者が確保出来ていないということに他ならない。ここまでインフラを築いたからには普及させるしかない。もっと使ってもらって、便利さを知ってもらうことでなんとか離陸させたいということか。

しかし、ビジネスモデル的にはどうなっているのだろう。全くの投資先行なのか、ある程度ハードウエアで回収しているのかちょっと興味があるところである。

カーウイング2

2004年09月12日 | ITS
日産のテレマティクス「カーウイングス」は近々バージンアップし、BuleToothを搭載するらしい。
すでにトヨタのG-BookがBuleToothに対応し、今度は日産が対応ということで、携帯電話メーカーも本格的にBuleTooth搭載に動いてくると思われる。携帯電話がどれだけの割合で搭載してくるかが今後のキーとなるが、まあBuleToothにとっては追い風となるのだろう。

緊急通報

2004年09月10日 | ITS
テレマティクスのもたらすベネフィット、最後に緊急通報と盗難車追跡について考えてみよう。

緊急通報とは、事故発生(衝撃感知やエアバック展開感知)をセンターに送信し、119番通報されるというものである。それ以外にも強盗や急病時にワンプッシュで非常警報がセンターに送信されるようになっているケースが多い。GPS情報とリンクして位置特定が出来るので、ドライバーが気を失っても救急車がやってくる。
すでに我が国にもヘルプネットというサービスが存在する。まだ対応している車載機や車種が少なく、普及は今ひとつのようだ。

アメリカではこの緊急通報のニーズがかなり高い。しかし、世界一安全な国に住む我々には今ひとつぴんと来ない。さらに、日本は人口密度が高く、事故を起こしても通常は誰かが近くにいて通報をしてくれるのが普通だろう。

さらに、消費者(特に日本人)はこうした非常事態に対するコストをあまりかけない。自分にはそんなことは起きないと思っているからである。

盗難車追跡については過去に書いているので詳細はさけるが、盗難リスクの高い特定の車に乗ってる人には重要な機能だろう。しかし、まだ全てのユーザーが必要としているかというと疑問だ。
また、盗まれた車を追跡するためには車に通信端末が埋め込まれてなくてはならない。乗車時だけ携帯を接続するという使い方は出来ない。そこがまだ敷居を高くしている。

さらに、セコムがココセコムという商品名で既に専業者として市場に参入しており、専業者ならではの緊急対応サービスとリーズナブルな価格でユーザーを増やしている。新規参入の壁は高い。

どちらも実用的なサービスであるが、万人向けのキラーコンテンツにはならないだろう。

車々間通信

2004年09月10日 | ITS
テレマティクスがもたらすと言われているベネフィットに車車間通信がある。

車々間通信というのは車と車の間の通信。(そのままだろ!)
まあ、車が他の車とコミュニケーションをしたいわけではなく、車と車が通信回線で結ばれていることによって、運転者に有益な情報を提供するということである。

複数の車両でドライブに行ったときに、仲間がどこにいるかをナビ画面に表示するといった機能が当然考えられるが、携帯電話が発達している現在ではそれほど大きなニーズはないだろう。

むしろ、最近は安全関連への応用が注目されているようである。
例えば、見通しの悪い交差点で、車が来るのが判る。
例えば、高速道路を隊列を組んで自動運転する事が出来る(プラトーン走行)
しかし、この運用をするためには道を走っている車に100%装着が要求されるのだろう。それには大変な時間がかかりそうだ。

それよりも、車載カメラやレーダーによる自立システムのほうが実現性が高いと思うのだがどうなのだろう。

駐車場料金自動支払いシステム

2004年09月09日 | ITS
松下電器、住友商事、JCB、三井住友カードの4社は、共同で日本初ICクレジットカード対応のDSRC駐車料金自動支払いシステムを開発すると発表した。松下電器ニュースリリース

以前から指摘しているとおり、駐車場については間違いなく「ノンストップ」という消費者ベネフィットが存在する訳で、これら大手4社が本気でやるなら、それなりのマーケットを形成する事になるだろう。

ポイントは前にも書いたが、
・既に料金収受を無人化している駐車場業者がこれに投資をするか?客数増加に繋がるならするだろうが。
・対応ETC車載機の普及と、対応駐車場の普及がチキンエッグ状態となる。車載機の普及が不透明な中で駐車場が投資をするわけがないし、サービスを受けることに出来ない車載機に消費者がプレミアムを払うこともあり得ない。
車載機側で小売り価格アップなしに対応するというブレイクスルーが必要。
・駐車場ノンストップ決済はたしかに便利だが、それに対する消費者の金額換算価値はどの程度なのだろうか、よく考えるべきである。普通の人にとっては、ETCの付加機能として付いているならその方がいい、というレベルのものだろう。

故障診断

2004年09月09日 | ITS
外出などでアップデートが滞ってしまった。
さて、テレマティクスの消費者ニーズについて書いてきた。
今日は「故障診断」について。

故障診断とは、車両に自己診断の仕組みを組み込み、車に異常や消耗品の交換時期が来たら、その情報をカーメーカーのサーバーに飛ばし、カーメーカー(ディーラー)から入庫の案内がくるというサービスである。

この故障診断という機能がテレマでは必ず謳われるが、ちょっと疑問な点は何故その情報をカーメーカーのサーバーに送らなくてはいけないか、ということである。
このままでは爆発するというなら、確かに連絡は必要だろうが、消耗品交換時期や通常のトラブルであれば、車ローカルの計器に表示すればいい話だ。ユーザーはそれを見て、自分の意志で修理先を決めればいい。

カーメーカー(ディーラー)にはおいしい話だ。顧客の車に修理の必要が生じたら、それを察知し呼び込める。修理やメンテナンスはサービスという名の商売である。
さらに、メーカー・ディーラーは走行距離情報を手に入れることが出来る。これは新車買い換え時期を判断する大きな要因である。
もしかしたら位置情報までとるかもしれない。他社ディーラーの駐車場に入ったら察知されるとか。まあ、それはないだろうが、管理社会的な恐ろしさすら感じてしまう。

確かに、安全を第一にして完璧な修理を望むユーザーも多い。そういうユーザーにとっては、有益なサービスであろう。

しかし、囲い込まれたくない顧客だって沢山いるはずだ。

NHK放映

2004年09月05日 | ITS
昨晩深夜のNHKで8月6日に行われたITSセカンドステージのシンポジウムの模様をやっていたが、途中で寝てしまった。
最後まで見なかったが、結局第一ステージのITSはナビとVICS及びETCで、第二ステージにはいると情報通信により車がつながり、安全や商業利用が進むといういままで通りのストーリーだろう。
商業利用のところでは、キャッシュレスが高齢者に便利で、バリアフリーに貢献するという見方がたびたび出てきたが、キャッシュレスが高齢者に優しいというなら、いまでも高齢者のカード利用率はその他のジェネレーションより高いのか?あるいは、年をとると駐車場の精算機に手を伸ばすのが大変だけど、それが解消されるということだけ?どうもストーリーに無理があるなあ。

ETC技術(DSRC)の駐車場利用は確かに利用者の利便は向上するけど、ふと思ったのだが商業施設利用による割引はどう処理するのかしら。まあ、ノンストップになるように何か工夫するのだろうが。

ナビと周辺情報

2004年09月03日 | ITS
さて、テレマティクスはナビと連携して最新の周辺情報や目的地情報を提供することができる。
これにはニーズがあるのか?

よく言われることは、車の中で「今からどこへ行こうか」と考える人はいないということ。普通はどこに行くか計画をしたから車に乗ったんじゃないの?

そうはいっても、「そろそろ昼飯の時間だな」ということで、周辺のレストラン情報が欲しい事はある。
特に観光地周辺の街道沿いでは迷う。見かけで飛び込むととんでもなく不味かったり、なんか俺に恨みでもあるのかと思うほど無愛想だったりすることがある。昔、日光でいかにも本格的な店構えのそば屋があったので入ったところ、「土日は忙しいからそば湯はだしません」といわれたことがある。

折角の休日を台無しにされる位なら、有名ファミレスの方が安全だと考えてしまう。

こうした状況を回避できる、真実の情報なら欲しい。ミシュランガイドとはいわないが、「いってはいけない店」情報があれば良いのにと思う。おそらく、こうした本当に使える情報は提供されないだろう。多分お店発のコマーシャル情報か、もしくはるるぶ等の観光情報と同じ程度の内容となるに違いない。

それなら、前もってPCからインターネットで情報を集めた方が賢いなと私は思う。

キーは情報の質。上質な本当の情報を提供できるならビジネスチャンスはあるが、それは大変なことである。


車内エンターテイメント

2004年09月02日 | ITS
車内エンターテイメントダウンロードはテレマティクスのキラーコンテンツとなるのか?

音楽データダウンロードや同乗者への映像データダウンロードに対するマーケットニーズは確実に存在する。ポイントは、車に装備されたネットワーク(テレマティクス)を使う事になるのかどうか。

これにはいくつかの要素がある。通信料、ダウンロードスピード、データの使い回し、利便性などがコンペティターと比較しどうか、ということである。
コンペティターは携帯電話、家庭PC(+メモリー、HDD)、無線LAN等およびレンタルCD/DVD。この中で一番脅威となるのがi-podに代表されるHDD携帯オーディオだろう。
既にアメリカではBMWが純正でi-pod接続アダプターを発売している。標準装備のオーディオ画面やハンドルリモコンでi-podの操作ができるようになっている。自宅のPCでダウンロードするから通信料は不要、車の外でも聞ける等、アドバンテージがある。運転中にオンデマンドで好きな曲のダウンロードは出来ないが、HDDは数千曲を保管できる訳だから根本的にその問題はない。

また、同乗者への画像データに関しては、レンタルDVD等と競合し、情報料と通信料で500円を超えたら厳しいだろう。

以上の通り、可能性はあるもののコンペティターが多く、必ずしも車両の通信機器が使われるとは断言できない。

但しここで一つ可能性を提示しておこう。
カーラジオで流れた曲が気に入ったらワンタッチでそのラジオ局にアクセスし、その曲をダウンロード購入できる仕組みが作れれば、多分ビジネスモデルとして成立するとおもう。

テレマティクスとナビ

2004年09月01日 | ITS
次にナビゲーション。

日本はテレマティクス云々というまえからナビゲーションが普及をしているという世界的にも特有の市場である。既にDVD,HDDの車載ローカルのデータが必要十分な情報を持っている。ナビに関して言えば、日本の消費者にとってテレマティクスの意味は「それ以上の情報提供」でしかない。
その情報とは、最新地図データと最新周辺案内ということになる。

最新地図データは確かに欲しい。しかし、なくては運転出来ないということでもない。私自身7年前のCD地図を使っており、例えば東名都築インターは存在していないが、致命的に困ることもない。

ポイントは通信料だろう。家庭のADSLが3千円程度で常時接続を実現している。一般に車内で過ごす時間は平均すれば総生活時間の5%程度と言われており、常識的にはテレマティクス接続の通信料が3千円よりも安くなくては大幅な普及はないと思う。

ここで一つヒントとなるのは無線LANだと思う。コンビニなどに車用のホットスポットを作るという計画もあるようだが、車庫付き一戸建ての場合なら家庭での無線LANが車まで届く。これを使えば消費者の負担する通信料はゼロである。

テレマティクスのニーズ

2004年09月01日 | ITS
テレマティクスの消費者ニーズが見えてこないと言った。事実、テレマティクスを推進してきた関係者のあいだでも、プロダクトアウト発想が強すぎたという反省はあるようだ。

しかし、それではマーケットイン的発想のサービスって、本当に存在するのだろうか?

まず、今まで言われているテレマティクスの消費者向けサービスについて考えて見よう。

1.車の中でメールの送受信
2.ナビゲーション
3.各種エンターテイメント
4.周辺/目的地情報
5.緊急通報
6.盗難車追跡
7.故障診断
8.車車間通信

まず1.のメール受送信。若い世代では携帯メールの受送信が生活の一部となっている。運転中もやめられないだろう。従ってメール機能がテレマティクスをブレイクさせるはずだ、という意見もある。

しかし、これはあり得ない。メール発信者は相手が車に乗ってるかどうかを知らない。従ってテレマティクスのメールアドレスに送信はしない。もちろん、転送サービスが利用できるが、設定/解除の手間がかかる。設定しっぱなしだと車に乗るたびに大量の未読を処理しなければならない。
そんなことを考えたら、携帯メールのままで十分である。

当然、携帯メールは運転中に受送信できないことから、音声読み出しなどの機能を付加して車専用とすることも考えられている。顔文字とか、文末のYOをどう発音するかとか個人的には興味があるが、現実的にあまり使えそうもない。たわいのない友人からの携帯メールなら車を降りてから処理すればいいし、仕事のメールを出先で処理する人は結局モバイルPCを使ってきちんと返信をするだろう。

11月から運転中の携帯使用が厳しく取り締まられるようだが、信号待ちでメールを読む程度のことは容認される筈だ。それで十分だと思うのだが。