写真は起立採決場面(共産党と緑の党が反対)です。
※発議第3号反対討論
緑の党グリーンズジャパン 松谷 清
発議第3号は、「静岡親子の会」の皆さんからの議会陳情があり7月2日の厚生委員会で賛成多数で可決されたことにより5人の議員によって提案された「離婚後共同親権制度の採用及び共同養育・面会交流支援等に必要な法整備を求める意見書」案です。
私も厚生委員会を傍聴し「静岡親子の会」の父親の方々の切実な声を直接聞きました。2019年度、1年間の離婚数が20万8496件を超え離婚を経験した未成年20万5972人という実態の中でこの共同親権制度が新しい家族像を示すものになりうるのか、どうか。共同親権制度の流れは、離婚が増加する中で2011年の民法766条改正によって離婚後の養育費や面会交流が明文化されたことが大きく影響しています。そして、今年に入り上川陽子法務大臣が共同親権制度を含む家族法制の在り方を法制審に諮問をしたことで具体的な法制度の議論が国のレベルで始まりました。
今回、この意見書の取り扱いをどうすべきか、まず、シングルマザーで活躍する方々にご意見を伺いました。「共同親権制度導入に慎重に」とのことでした。
意見書案は「親権を得るために配偶者の同意を得ずに一方的に連れ去り、強制的監護状態を作り、面会拒否をしたり、一方の親と断然を余儀なくされるケースが多発している」ことを前提に、「DVなど特段の事情がない限り」共同親権制度による別居親との継続的面会交流、養育費による経済的安安定性により子どもの健やかな成長がもたらされるとの趣旨となっています。これに対して「連れ去りが多発でなく」DV被害によって「逃げなければ命の危険を感じる」状態は「特段」でなく実情として理解することから始めて欲しい、と訴えています。
離婚において協議離婚が88%で母親が親権を持つケースが84%です。あとでも紹介しますが参議院法務委員会調査部の資料によれば、養育費ですが離婚時に取り決めをしている割合は、母子世帯で42.9%、父子世帯27.3%ですが実際に養育費を受給しているのは母子世帯で24.1%、父子世帯で3.2%です。面会の取り決めは、母子世帯で24.1%、父子世帯で27.3%ですが実際に母子世帯で29.8%、父子世帯で45.5%です。こうした現実を共同親権制度の前に政府や行政の公的支援で解決する必要があります。
新たな家族像や子どもの権利条約という観点から、諸外国の事例やEU勧告の事例が語られます。2019年に法務省の依頼による外務省の調査で24か国中22か国が共同親権制度を取り入れているとのことです。小川博之福岡大学教授は、「先進国は離婚後も共同親権といわれるが、日本でいう「親権」を離婚後の父母が共同で行使する国はないと指摘しています。ドイツでは、著しく重要な事柄の決定に父母の合意が必要であるとしても、この日常生活に関する事柄については同居親が単独で決定する権限を持っています。メキシコでは双方で共同で行使するのは財産管理権のみで、監護権は父母の一方が行使することにしています。
更に共同親権制度を導入しているオーストラリア、イギリス、アメリカ、カナダなどでDV被害を重視し様々な法改正が進行し、オーストラリアでは共同養育よりも、子どもや同居親の安全確保を最優先することを法律に明記しました。共同親権制度は一見、平等、幸平のように見えますが諸外国の経験から学ぶべきです。2017年に長崎市で面会交流のために元夫に会った女性が殺害され、兵庫県伊丹市では面会中の父子無理心中が起きています。原則面会交流の原則化や離婚後共同親権導入には大きなリスクを伴うことを直視しなければならないと小川氏は指摘します。
先ほどの参議院法務委員会調査室では昨年9月に離婚後の共同親権制度導入について報告書を提出しています。論点として、1、離婚に伴う配偶者間紛争の深刻化の防止との関係はどう整理するか。2,離婚後の共同養育による子の健全な人格形成との関係はどう整理するか。3,円滑な面会交流及び養育費支払い促進との関係をどう整理するか。4,DVや児童虐待との関係はどう整理されるのかなど6点をあげています。
民法766条の「具体的な子育ては父母の協議で定める」とあり、現行でも離婚後、父母が合意すれば共同養育することは可能です。適切な形で父母が養育を分担するよう公的機関の支援が必要です。世界経済フォーラム135か国中の日本はジェンダーギャップ120番目の日本の男女役割分担の固定化が離婚による父母間の紛争を強めていることはないでしょうか。
議会としても共同親権制度を導入に賛成、反対の当事者から情報として共有しておく必要があるのではないでしょうか。
識者の中でも意見の違いがあり議会改革の意味でも参考人制度で議論すべきではないでしょうか。
そうした議論を通じて静岡市の公的支援を具体化していく作業も併せて政策化していくことが議会の責務であります。この経過がほとんどないままに議会としてのこの意見書を上げることは時期尚早であり十分な議論を尽くす必要があることを述べて反対討論とします。