そんなに安全なら、汚染土の再生利用は、まず東京オリンピックのための工事に東京都で使えばよい。
その上で考えてみよう!
汚染土再生利用の脅しと欺瞞!
「汚染土と復興~東日本大震災から8年」20190309報道特集
膳場キャスター:
こんばんは、3月9日、土曜日報道特集です。

今日は宮城県気仙沼市から、中継でお伝えします。
東日本大震災からまもなく8年が経ちます。
気仙沼の市街を歩いてみますと、ようやくかさ上げされた土地に、これから新しい施設を建設するなど、復興のスタート地点に今ようやく立てた、と言う人たちも少なくないことに、はっとさせられます。


金平キャスター:
東日本大震災と福島第一原発の事故が起きてからの歳月の長さを考えましても、この出来事が風化した過去のものだとは、取材を続けている限り全く思えません。
今年もこの出来事のそれからを、総力取材でお伝えします。
そして福島県の飯舘村には、日下部キャスターが行っています。
日下部さん?

日下部キャスター:
大飯舘村にあるですね、汚染土の仮置き場の一つです。

元々が田んぼだったところですけれども、仮置き場と言いながら、8年経った今も、これだけ多くのフレコンバックが積み上げられています。
そしてグリーンのシートが剥がされているところ、あそこが近く搬出が始まる、ということなんですね。
この飯舘村だけで、除染等によって発生した汚染土、瓦礫などはですね、フレコンバックにして250万という、途方もない量です。
これだけ大量の汚染土をどう処理していくのか、後ほどまたお伝えします。
気仙沼は日が落ちて、海から冷たい風が吹いてきました。

さて、福島第一原発の事故後、除染作業で放射性物質を含んだ大量の土、汚染された土壌、いわゆる汚染土が、大量に発生しました。
この汚染土を、全国の公共工事で再生利用をする考えを環境省が示し、各地で住民が困惑しています。

震災発生からまもなく8年、その汚染土を生み出すきっかけとなった福島第一原発は、今一体どうなっているのでしょうか。
(ナレーション・屋良有作)
事故からまもなく8年を迎える、東京電力福島第一原発。

現在は、1日4200人が、廃炉作業に当たっている。

除染が進み、構内の96%で、防護服を着なくても作業できるようになった。

2号機と3号機の間の通路に来ていますけれども、去年はバスの中で、ここ取材した記憶がありますが、バスの中もかなり高い数値を記録しましたですけれども、今こういう風に鉄板が貼られて…、

だが、線量は依然として高いままだ。
防護服に着替え、当時原子炉をコントロールしていた、3、4号機の中央制御室に向かった。

金平キャスター:
うわーこれびっくりだな、僕初めて見たんで、これこの34号機のコントロールルーム、これ事故当時のままですか?
東電の担当者:
まあ少し片付いたところもありますね。


ここは8年前、事故対応の最前線だった。
十数人の職員が、原子炉の緊急停止や水位の確認に追われた。

金平キャスター:
これが原子炉ですね?
東電の担当者:
(バルブが)緑なら閉じて赤なら開いている。

原子炉への注水などは、別の場所で管理していて、ここは今使われていない。

廃炉作業は、一進一退を繰り返している。

屋上にカバーが付いた3号機では、去年秋に、使用済み燃料プールから、核燃料の取り出しを始める予定だった。
しかし、トラブルが相次ぎ、まだ始まっていない。


カバーの中へと入る。
金平キャスター:
3号機の、オペレーションフロアに来ていますけれども、大体地上30メートル以上なんですが、

東電の担当者:
柵があったんですけど、今はなくて、落ちちゃうんで。

ここは、燃料プールの真上に当たる。
燃料の取り出しに向け、転落防止の柵やネットが外されていて、プールに近づけない。

3号機には、今も566体の燃料棒がある。


取り出し作業は、来月にも始まる見込みだ。

廃炉作業で最も困難なのが、溶け落ちた核燃料、デブリの回収だ。

金平キャスター:
2号機ですね。

2月の13日に、ロボットを使って調査をやったという。

2号機では、ロボットでデブリに触るという、初めての調査が行われた。

デブリとみられる格子状の堆積物を持ち上げることができたが、取り出す方法の検討はこれからだ。

原発事故の影響は計り知れない。

東北から関東にかけて、広く放射性物質が拡散した。
福島県内だけで、除染によって出た汚染土は、およそ14,000,000立方メートル。


東京ドーム11個分もの、膨大な量になるとみられる。

各自治体で仮置きされ、2021年度までに、すべて福島第一原発近くの中間貯蔵施設に、運び込まれることになっているのだが…。


事故から8年、汚染土の現実を追った。

先月3日、福島県南相馬市で、緊急の住民集会が開かれた。

議題は、福島第一原発事故の後、除染によって出た汚染土の、再生利用計画だ。

膳場キャスター:
Q. どうお感じになりましたか?
住民:
絶対ダメです。とんでもない話だ。

南相馬市小高区の羽倉地域を通る常盤自動車道に、汚染土を使うというものだ。

羽倉行政区・相良繁廣区長:
孫、ひ孫の代まで、我々は苦しめられるわけよ。
そんではいかんとなって。

最終的には、羽倉で突破口を開いて、安全性を確かめたよってなったら、ダーっと流れていくと思う。


降ってわいた計画は、環境省の強い意向によるものだった。

膳場キャスター:
除染した土の再利用計画の現場がこちら、常磐自動車道です。

町の中心部からは離れていまして、周りはですね、かつては農地だったと思われる土地が広がっています。
この道路を4車線化する工事で、除染した汚染土を、この盛り土の一部として使おうという計画です。

環境省の計画では、南相馬市内のこの仮置き場に保管されている汚染土、およそ1000袋を、(常磐道)拡幅工事の盛り土として使う。


その表面を、汚染されていない土で覆う予定だ。

羽倉地域の住民:
いやあ、なんで羽倉なのかと。
大熊(中間貯蔵施設)に持ってったらいい。
東京のど真ん中でもいいな。
道路をかさ上げして実験してみたらいい。
みなさん、どう思うか。



住民集会では、全員一致で、計画に反対することが決まった。

汚染度の再生利用は、3年前、環境省が打ち出したものだ。

汚染土の総量を減らすためだという。
使われるのは、放射性物質の濃度が、1キロ当たり8000ベクレル以下の汚染土。

道路や防潮堤などの公共工事で、再生利用を目指している。

今回候補地に挙げられた、羽倉地域のある、南相馬市小高区。

2年半前、ほぼ全域で、避難指示が解除されたが、震災前の2割に当たる、およそ3000人しか帰っていない。

Q. ここで受け入れてしまったら、羽倉地域、羽倉地区の未来にとって、どういったことになりますかね?
羽倉行政区・相良繁廣区長:
プラスには全然見えないでしょ。
若い人たちも戻ってこない。
子どもは育たない。
そしてまた作物事業もできない。


南相馬市で、汚染土の再生利用に反対する渡部寛一市議に、前市長の桜井氏から電話があったのは、去年10月ごろだった。



渡部市議:
(汚染土の)再生利用をするのをダメだなんていうことを言うべきじゃないと。

桜井前市長は、震災直後に、物資が届かない現状を、インターネットで世界に訴えた。

その後、脱原発を掲げ、復興に取り組んできたが、去年1月、市長選には落選した。

Q. 電話の訳は?
渡部市議:
常磐道の小高インターチェンジができる方向で今、かなり前向きに動きが始まっていて、現実的になってきたと。
で、そのインターチェンジをつくる予算は、環境省で出すことに決まっているんだと。



これまで南相馬市は、国土交通省に対して、小高区にインターチェンジを設置することを、要望してきた。

だが、採算性などの観点から、実現に至っていない。
桜井前市長と同じ会派だった市議に聞くと、
渡部一夫南相馬市議:
どうも、小高のインターチェンジをつくる代わりに、実証実験がね、なんかそこにぶら下がってきているんだなっていうことを、私たちが認識をしたっていうか。
南相馬市民からすれば、小高のインターチェンジは、バーターでつくり上げていくもんだなんて、最初思ってもいなかったと思いますよ。


報道特集は、複数の市議から話を聞いた。
南相馬市議A氏:
桜井さんが市長をやめるとき、
「再生利用を受け入れないと、小高インターチェンジができないことになっている」と、直接言われたんです。
本当に驚きました。



南相馬市議B氏:
いわば、アメヤニンジンをぶら下げられた状態ですよ。
国に対しては、卑怯だと言いたい。


小高インターチェンジの実現は、汚染土再生利用の受け入れを条件としたものなのか。
桜井勝延前市長が、私たちのインタビューに応じた。
Q. 桜井さんは、あの事業(汚染土の再生利用)についてはどうお考えですか?

桜井勝延前南相馬市長:
私はやむを得ず、それはやるべきだと思っていますね。

Q. どういったメリットが?
桜井前市長:
一番は、仮置き場が、徐々になくなっていくわけですよ。
そのことによって、農業の復旧が進むわけですよ。


当初、汚染土は、3年から5年で撤去される予定だった。

だが、中間貯蔵施設への搬入が遅れ、今なお、大量に積み上げられている。

インタビューには、小高区の住民も同席した。

こう訴える。
南相馬市小高区の住民:
まだ仮置き場にフレコンバッグがいっぱいあって、再生できなくてどうすんのそれはと。
そのままでは農業再生なんてできないよと。


桜井前市長は、私たちを、南相馬市の防災林へと案内した。

津波で出た、災害がれきが使われている場所だ。
桜井前市長:
災害がれきは当然放射性物質があったわけだけど、それでも当時3000ベクレル以下のものは入れてきた。
今までの経緯でも防災林の下にがれきなんかを入れてきたわけだから、
コンクリート廃材とかアスファルト廃材を利用してるのに、なぜその(汚染)土はできないんですかっていう。




桜井前市長はおととし、インターチェンジの設置について、国交省と交渉した。

桜井前市長:
おおよそ60億弱かかるんですよね。
で、国交省としてはそんな予算がないと。

そこで、国交省から提案されたのが、環境省の予算を使う案だったという。

桜井前市長:
道路局長から、あれは環境省の、中間貯蔵(施設)への除染土の運び込みの予算でつくっているから、
環境省と話してもらえれば、小高(インターチェンジ)の問題も進むでしょうっていう話で。


インターチェンジができれば、中間貯蔵施設への汚染度の運び込みが早くなり、環境省にとってもメリットがある。

南相馬市では、おととし、すでに、環境省による、汚染度を使った盛り土の実験が始まっていた。


桜井前市長:
まあ我々がやって、実証実験も含めてですけれども、小高でそういうキーワードを使えば、予算としては十分確保できるんじゃないかと。

Q. そういうキーワード、小高にとってのキーワードっていうのはなんですか?

桜井前市長:
我々がやっている除染土の、再利用の実証実験をやっているわけじゃないですか。

国交省からの提案を元に、環境省の担当局長らと面会したという。

桜井前市長:
そこは、あの、協力していきましょうみたいな、まあ、前向きな回答だったと思いますよ、当時。

Q. 環境省とのこの交渉の中で、除染土の再生利用っていうことを持ち出したことは、結果的に小高インターチェンジを進める上で、プラスに働いたっていう実感はありますか?
桜井前市長:
ありますよ、うん、それは。
環境省としても、再生利用ができるっていうができるのであれば、進めたいっていう立場だったと思いますから。

悩み抜いた末の選択だった。

桜井前市長:
この人たちの生活を、やっぱり一刻も早く、まあどんな形でも補償して、自らの生活を再建できるようにしていくっていう中では、
まあこういうことも、悔しいけれども、我々としては手段として取らざるを得ないっていう思いでやってきているってことは、理解していただきたいなと思いますね。

環境省は取材に対し、
「南相馬市からの要望をふまえて、当時の桜井市長と、小高スマートインターチェンジを含め、高速道路での除去土壌の再生利用について、意見交換をしたことは事実ですが、結論は出ていません」
と回答した。



一方で、常磐道の拡幅工事における再生利用計画については、
「桜井前市長と、具体的に相談した事実はない」
としている。


また国交省は、
「当時の道路局長との間で、桜井前市長が話したような、除去土壌に関わるやり取りは、行われていません」
と口頭で回答した。


実は、汚染度の再生利用計画は、去年、福島県二本松市で頓挫している。

周りは森林に囲まれた農地、そして民家が点在しているような場所です。

計画では、こちらの道、二本松市の市道なんですけれども、この農道の200メートルに渡って、除染土を埋めていこうということでした。

予定地は、田んぼの脇にある農道。
この先は行き止まりだ
すぐそばを、湧き水が流れる。

近くに住む人はー
Q. この道は使いますか?
住民:
道なんか使わねえんだ。
ただ農作業の時にトラクターで行くくらいなもんで。

計画では、近くの仮置き場にある汚染土500袋を、使う予定だった。

仮置き場が早くなくなるならと、計画に賛成した住民もいたという。

だいぶ劣化が進んでいますね。

一方で…、
大橋さらさん:
絶対にやめてもらいたいというか、反対しなければいけないなというふうに思いました。
近くに住む主婦、大橋さらさん。

娘のなおさんを、神奈川へ自主避難させている。
再生利用計画を知ると、すぐ、インターネットの署名募集サイトで、反対を呼びかけた。

大橋さん:
将来子供を産んで、孫ができたときに、
「おばあちゃんちには放射能があるから、来ない方がいいよ」とは言いたくないんですよね。

汚染土は、当初の約束通り、中間貯蔵施設へ運ぶべきだと考えている。
去年5月の、環境省による住民説明会でも、反対の声が相次ぎ、「東京で再生利用すればいい」との声も上がった。

住民:
オリンピックのなんか、工事やってるでしょ。
(汚染土を)その下敷きにはできないんですか?

環境省の担当者:
福島で今、どこどこの町で出たもの(汚染土)を、東京に持って行ってっていうふうにしても、まあやはりどこも、皆さんと同じように、気持ちとしてやはり難しいかなと思います。


結局、電子署名は、全国から2700人以上集まり、環境省は去年6月、計画を中止した。
大橋さん:
汚染された土を埋めるというのは、故郷を汚すことになるので、それは人が通る通らないということではなく、それはしてはならないと思います。


膳場キャスター:
桜井前市長の取材の中で、非常に印象に残ったのは、
汚染度の再利用を受け入れようと考えたのはやむにやまない南相馬ならではの事情があったからで、一律に他の地域で同じことをしてはいけない、と話していたことです。
つまり、南相馬が汚染土の再生利用に踏み切ったとしても、それを他の自治体でも同様に進めるための布石にするのは間違いだ、ということなんですね。
金平キャスター:
それにしてもね、住民説明会での、その、オリンピック工事の下に、汚染土を敷き詰めたらどうかという住民の訴えには、非常に強烈なものを感じましたね。
膳場キャスター:
そうでしたね。
そして、南相馬の汚染土再生利用計画をめぐっては、おとといの夜、環境省が初めて、地域の区長およそ10人を集めて説明会を行いました。
その中では賛成する意見は無く、反対の声が相次いだということで、環境省は、現状のままでは計画を進めるのは難しいとしています。
環境省の掲げる汚染土の再生利用については各地域の実情に合った議論、しかもオープンな議論が不可欠です。
******* ******* ******* *******
続きはまた後日。
その上で考えてみよう!
汚染土再生利用の脅しと欺瞞!
「汚染土と復興~東日本大震災から8年」20190309報道特集
膳場キャスター:
こんばんは、3月9日、土曜日報道特集です。

今日は宮城県気仙沼市から、中継でお伝えします。
東日本大震災からまもなく8年が経ちます。
気仙沼の市街を歩いてみますと、ようやくかさ上げされた土地に、これから新しい施設を建設するなど、復興のスタート地点に今ようやく立てた、と言う人たちも少なくないことに、はっとさせられます。


金平キャスター:
東日本大震災と福島第一原発の事故が起きてからの歳月の長さを考えましても、この出来事が風化した過去のものだとは、取材を続けている限り全く思えません。
今年もこの出来事のそれからを、総力取材でお伝えします。
そして福島県の飯舘村には、日下部キャスターが行っています。
日下部さん?

日下部キャスター:
大飯舘村にあるですね、汚染土の仮置き場の一つです。

元々が田んぼだったところですけれども、仮置き場と言いながら、8年経った今も、これだけ多くのフレコンバックが積み上げられています。
そしてグリーンのシートが剥がされているところ、あそこが近く搬出が始まる、ということなんですね。
この飯舘村だけで、除染等によって発生した汚染土、瓦礫などはですね、フレコンバックにして250万という、途方もない量です。
これだけ大量の汚染土をどう処理していくのか、後ほどまたお伝えします。
気仙沼は日が落ちて、海から冷たい風が吹いてきました。

さて、福島第一原発の事故後、除染作業で放射性物質を含んだ大量の土、汚染された土壌、いわゆる汚染土が、大量に発生しました。
この汚染土を、全国の公共工事で再生利用をする考えを環境省が示し、各地で住民が困惑しています。

震災発生からまもなく8年、その汚染土を生み出すきっかけとなった福島第一原発は、今一体どうなっているのでしょうか。
(ナレーション・屋良有作)
事故からまもなく8年を迎える、東京電力福島第一原発。

現在は、1日4200人が、廃炉作業に当たっている。

除染が進み、構内の96%で、防護服を着なくても作業できるようになった。

2号機と3号機の間の通路に来ていますけれども、去年はバスの中で、ここ取材した記憶がありますが、バスの中もかなり高い数値を記録しましたですけれども、今こういう風に鉄板が貼られて…、

だが、線量は依然として高いままだ。
防護服に着替え、当時原子炉をコントロールしていた、3、4号機の中央制御室に向かった。

金平キャスター:
うわーこれびっくりだな、僕初めて見たんで、これこの34号機のコントロールルーム、これ事故当時のままですか?
東電の担当者:
まあ少し片付いたところもありますね。


ここは8年前、事故対応の最前線だった。
十数人の職員が、原子炉の緊急停止や水位の確認に追われた。

金平キャスター:
これが原子炉ですね?
東電の担当者:
(バルブが)緑なら閉じて赤なら開いている。

原子炉への注水などは、別の場所で管理していて、ここは今使われていない。

廃炉作業は、一進一退を繰り返している。

屋上にカバーが付いた3号機では、去年秋に、使用済み燃料プールから、核燃料の取り出しを始める予定だった。
しかし、トラブルが相次ぎ、まだ始まっていない。


カバーの中へと入る。
金平キャスター:
3号機の、オペレーションフロアに来ていますけれども、大体地上30メートル以上なんですが、

東電の担当者:
柵があったんですけど、今はなくて、落ちちゃうんで。

ここは、燃料プールの真上に当たる。
燃料の取り出しに向け、転落防止の柵やネットが外されていて、プールに近づけない。

3号機には、今も566体の燃料棒がある。


取り出し作業は、来月にも始まる見込みだ。

廃炉作業で最も困難なのが、溶け落ちた核燃料、デブリの回収だ。

金平キャスター:
2号機ですね。

2月の13日に、ロボットを使って調査をやったという。

2号機では、ロボットでデブリに触るという、初めての調査が行われた。

デブリとみられる格子状の堆積物を持ち上げることができたが、取り出す方法の検討はこれからだ。

原発事故の影響は計り知れない。

東北から関東にかけて、広く放射性物質が拡散した。
福島県内だけで、除染によって出た汚染土は、およそ14,000,000立方メートル。


東京ドーム11個分もの、膨大な量になるとみられる。

各自治体で仮置きされ、2021年度までに、すべて福島第一原発近くの中間貯蔵施設に、運び込まれることになっているのだが…。


事故から8年、汚染土の現実を追った。

先月3日、福島県南相馬市で、緊急の住民集会が開かれた。

議題は、福島第一原発事故の後、除染によって出た汚染土の、再生利用計画だ。

膳場キャスター:
Q. どうお感じになりましたか?
住民:
絶対ダメです。とんでもない話だ。

南相馬市小高区の羽倉地域を通る常盤自動車道に、汚染土を使うというものだ。

羽倉行政区・相良繁廣区長:
孫、ひ孫の代まで、我々は苦しめられるわけよ。
そんではいかんとなって。

最終的には、羽倉で突破口を開いて、安全性を確かめたよってなったら、ダーっと流れていくと思う。


降ってわいた計画は、環境省の強い意向によるものだった。

膳場キャスター:
除染した土の再利用計画の現場がこちら、常磐自動車道です。

町の中心部からは離れていまして、周りはですね、かつては農地だったと思われる土地が広がっています。
この道路を4車線化する工事で、除染した汚染土を、この盛り土の一部として使おうという計画です。

環境省の計画では、南相馬市内のこの仮置き場に保管されている汚染土、およそ1000袋を、(常磐道)拡幅工事の盛り土として使う。


その表面を、汚染されていない土で覆う予定だ。

羽倉地域の住民:
いやあ、なんで羽倉なのかと。
大熊(中間貯蔵施設)に持ってったらいい。
東京のど真ん中でもいいな。
道路をかさ上げして実験してみたらいい。
みなさん、どう思うか。



住民集会では、全員一致で、計画に反対することが決まった。

汚染度の再生利用は、3年前、環境省が打ち出したものだ。

汚染土の総量を減らすためだという。
使われるのは、放射性物質の濃度が、1キロ当たり8000ベクレル以下の汚染土。

道路や防潮堤などの公共工事で、再生利用を目指している。

今回候補地に挙げられた、羽倉地域のある、南相馬市小高区。

2年半前、ほぼ全域で、避難指示が解除されたが、震災前の2割に当たる、およそ3000人しか帰っていない。

Q. ここで受け入れてしまったら、羽倉地域、羽倉地区の未来にとって、どういったことになりますかね?
羽倉行政区・相良繁廣区長:
プラスには全然見えないでしょ。
若い人たちも戻ってこない。
子どもは育たない。
そしてまた作物事業もできない。


南相馬市で、汚染土の再生利用に反対する渡部寛一市議に、前市長の桜井氏から電話があったのは、去年10月ごろだった。



渡部市議:
(汚染土の)再生利用をするのをダメだなんていうことを言うべきじゃないと。

桜井前市長は、震災直後に、物資が届かない現状を、インターネットで世界に訴えた。

その後、脱原発を掲げ、復興に取り組んできたが、去年1月、市長選には落選した。

Q. 電話の訳は?
渡部市議:
常磐道の小高インターチェンジができる方向で今、かなり前向きに動きが始まっていて、現実的になってきたと。
で、そのインターチェンジをつくる予算は、環境省で出すことに決まっているんだと。



これまで南相馬市は、国土交通省に対して、小高区にインターチェンジを設置することを、要望してきた。

だが、採算性などの観点から、実現に至っていない。
桜井前市長と同じ会派だった市議に聞くと、
渡部一夫南相馬市議:
どうも、小高のインターチェンジをつくる代わりに、実証実験がね、なんかそこにぶら下がってきているんだなっていうことを、私たちが認識をしたっていうか。
南相馬市民からすれば、小高のインターチェンジは、バーターでつくり上げていくもんだなんて、最初思ってもいなかったと思いますよ。


報道特集は、複数の市議から話を聞いた。
南相馬市議A氏:
桜井さんが市長をやめるとき、
「再生利用を受け入れないと、小高インターチェンジができないことになっている」と、直接言われたんです。
本当に驚きました。



南相馬市議B氏:
いわば、アメヤニンジンをぶら下げられた状態ですよ。
国に対しては、卑怯だと言いたい。


小高インターチェンジの実現は、汚染土再生利用の受け入れを条件としたものなのか。
桜井勝延前市長が、私たちのインタビューに応じた。
Q. 桜井さんは、あの事業(汚染土の再生利用)についてはどうお考えですか?

桜井勝延前南相馬市長:
私はやむを得ず、それはやるべきだと思っていますね。

Q. どういったメリットが?
桜井前市長:
一番は、仮置き場が、徐々になくなっていくわけですよ。
そのことによって、農業の復旧が進むわけですよ。


当初、汚染土は、3年から5年で撤去される予定だった。

だが、中間貯蔵施設への搬入が遅れ、今なお、大量に積み上げられている。

インタビューには、小高区の住民も同席した。

こう訴える。
南相馬市小高区の住民:
まだ仮置き場にフレコンバッグがいっぱいあって、再生できなくてどうすんのそれはと。
そのままでは農業再生なんてできないよと。


桜井前市長は、私たちを、南相馬市の防災林へと案内した。

津波で出た、災害がれきが使われている場所だ。
桜井前市長:
災害がれきは当然放射性物質があったわけだけど、それでも当時3000ベクレル以下のものは入れてきた。
今までの経緯でも防災林の下にがれきなんかを入れてきたわけだから、
コンクリート廃材とかアスファルト廃材を利用してるのに、なぜその(汚染)土はできないんですかっていう。




桜井前市長はおととし、インターチェンジの設置について、国交省と交渉した。

桜井前市長:
おおよそ60億弱かかるんですよね。
で、国交省としてはそんな予算がないと。

そこで、国交省から提案されたのが、環境省の予算を使う案だったという。

桜井前市長:
道路局長から、あれは環境省の、中間貯蔵(施設)への除染土の運び込みの予算でつくっているから、
環境省と話してもらえれば、小高(インターチェンジ)の問題も進むでしょうっていう話で。


インターチェンジができれば、中間貯蔵施設への汚染度の運び込みが早くなり、環境省にとってもメリットがある。

南相馬市では、おととし、すでに、環境省による、汚染度を使った盛り土の実験が始まっていた。


桜井前市長:
まあ我々がやって、実証実験も含めてですけれども、小高でそういうキーワードを使えば、予算としては十分確保できるんじゃないかと。

Q. そういうキーワード、小高にとってのキーワードっていうのはなんですか?

桜井前市長:
我々がやっている除染土の、再利用の実証実験をやっているわけじゃないですか。

国交省からの提案を元に、環境省の担当局長らと面会したという。

桜井前市長:
そこは、あの、協力していきましょうみたいな、まあ、前向きな回答だったと思いますよ、当時。

Q. 環境省とのこの交渉の中で、除染土の再生利用っていうことを持ち出したことは、結果的に小高インターチェンジを進める上で、プラスに働いたっていう実感はありますか?
桜井前市長:
ありますよ、うん、それは。
環境省としても、再生利用ができるっていうができるのであれば、進めたいっていう立場だったと思いますから。

悩み抜いた末の選択だった。

桜井前市長:
この人たちの生活を、やっぱり一刻も早く、まあどんな形でも補償して、自らの生活を再建できるようにしていくっていう中では、
まあこういうことも、悔しいけれども、我々としては手段として取らざるを得ないっていう思いでやってきているってことは、理解していただきたいなと思いますね。

環境省は取材に対し、
「南相馬市からの要望をふまえて、当時の桜井市長と、小高スマートインターチェンジを含め、高速道路での除去土壌の再生利用について、意見交換をしたことは事実ですが、結論は出ていません」
と回答した。



一方で、常磐道の拡幅工事における再生利用計画については、
「桜井前市長と、具体的に相談した事実はない」
としている。


また国交省は、
「当時の道路局長との間で、桜井前市長が話したような、除去土壌に関わるやり取りは、行われていません」
と口頭で回答した。


実は、汚染度の再生利用計画は、去年、福島県二本松市で頓挫している。

周りは森林に囲まれた農地、そして民家が点在しているような場所です。

計画では、こちらの道、二本松市の市道なんですけれども、この農道の200メートルに渡って、除染土を埋めていこうということでした。

予定地は、田んぼの脇にある農道。
この先は行き止まりだ
すぐそばを、湧き水が流れる。

近くに住む人はー
Q. この道は使いますか?
住民:
道なんか使わねえんだ。
ただ農作業の時にトラクターで行くくらいなもんで。

計画では、近くの仮置き場にある汚染土500袋を、使う予定だった。

仮置き場が早くなくなるならと、計画に賛成した住民もいたという。

だいぶ劣化が進んでいますね。

一方で…、
大橋さらさん:
絶対にやめてもらいたいというか、反対しなければいけないなというふうに思いました。
近くに住む主婦、大橋さらさん。

娘のなおさんを、神奈川へ自主避難させている。
再生利用計画を知ると、すぐ、インターネットの署名募集サイトで、反対を呼びかけた。

大橋さん:
将来子供を産んで、孫ができたときに、
「おばあちゃんちには放射能があるから、来ない方がいいよ」とは言いたくないんですよね。

汚染土は、当初の約束通り、中間貯蔵施設へ運ぶべきだと考えている。
去年5月の、環境省による住民説明会でも、反対の声が相次ぎ、「東京で再生利用すればいい」との声も上がった。

住民:
オリンピックのなんか、工事やってるでしょ。
(汚染土を)その下敷きにはできないんですか?

環境省の担当者:
福島で今、どこどこの町で出たもの(汚染土)を、東京に持って行ってっていうふうにしても、まあやはりどこも、皆さんと同じように、気持ちとしてやはり難しいかなと思います。


結局、電子署名は、全国から2700人以上集まり、環境省は去年6月、計画を中止した。
大橋さん:
汚染された土を埋めるというのは、故郷を汚すことになるので、それは人が通る通らないということではなく、それはしてはならないと思います。


膳場キャスター:
桜井前市長の取材の中で、非常に印象に残ったのは、
汚染度の再利用を受け入れようと考えたのはやむにやまない南相馬ならではの事情があったからで、一律に他の地域で同じことをしてはいけない、と話していたことです。
つまり、南相馬が汚染土の再生利用に踏み切ったとしても、それを他の自治体でも同様に進めるための布石にするのは間違いだ、ということなんですね。
金平キャスター:
それにしてもね、住民説明会での、その、オリンピック工事の下に、汚染土を敷き詰めたらどうかという住民の訴えには、非常に強烈なものを感じましたね。
膳場キャスター:
そうでしたね。
そして、南相馬の汚染土再生利用計画をめぐっては、おとといの夜、環境省が初めて、地域の区長およそ10人を集めて説明会を行いました。
その中では賛成する意見は無く、反対の声が相次いだということで、環境省は、現状のままでは計画を進めるのは難しいとしています。
環境省の掲げる汚染土の再生利用については各地域の実情に合った議論、しかもオープンな議論が不可欠です。
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続きはまた後日。