わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問51 セラミックのピアス用の釉薬で見本通りの色が出ない件

2021-11-14 15:50:27 | 質問、問い合わせ、相談事

森野様より以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を記します。

 

はじめまして!

趣味でセラミックのピアスを作りはじめたのですが、何が悪いのか、焼成後の色合いが悪く、

陶芸ショップで見たサンプルと同じような焼き上がりになりません。

釜のサイズは、奥行き20センチ✖️高さ12センチ✖️幅20センチ


釉薬は海外のものでCone6と書いています。

ピアスは小指の爪くらいの大きさで、表面のみ釉薬がかけてあり、裏側は素地のままです。


1、市販の磁土を成形し、素焼きをせず釉薬を塗る


2、3時間乾燥させた1を電気釜に入れ、スイッチオン。


3、釜の温度を、537Cまで1時間かけて上昇させ、932Cまでさらに1時間、998で3分

キープし、1時間かけて693Cまで下げて、スイッチオフ。

この工程のあと、1日待って釜をあけても、サンプル通りの色が出ません。

どこを変えればいいでしょうか。アドバイスいただけると嬉しいです。

 

明窓窯より

当方、Cone6なる釉薬は未知な物ですので、文面より想像してお答えします。

1) 焼成温度と綺麗な色彩をご希望とのことで、Cone6は上絵付け用の釉薬又は

  絵具(顔料)では無いかと推察します。

  焼成温度はご購入の際に添付された通りになされたと思われます。

  尚、窯出しまでの時間は、もっと短くて良いと思います。1日待つ必要は有りません。

  よって上絵付けならば、釉薬自体に問題ありません。

2) 素地の磁器土ですが、これも推奨された物でしょうか?

  若しそうならば、磁器土は本焼き(1250~1300℃)した後、再度1000℃前後で絵付けの

  焼成をする必要があります。

  ① 本件の焼成温度では、磁器土のやや高温の素焼き程度しか成りません。

   その為、土が磁器化せず、吸湿性が生じ、釉薬が素地に吸収され、希望の色に

   ならないと思われます。又強度(壊れ易さ)的にも問題に成り、磁器本来の良さを

   発揮出来ていません。

  ② 一般的に、本焼きは作品を制作、乾燥、素焼き、施釉、高温での焼成と成りますが、

   作品が小さいので、必ずしも素焼きは必要ないと、思われます。

   素焼きは施釉の際と、焼成の際に作品が壊れる(割れる)のを防ぐ目的ですが、

   食器類や多くな器等では、必要です。

   その後に、上絵付へと進みます。

  ③ 施釉は磁器用の透明釉を使います。

   尚、素焼きをしない場合は、生掛け(素地に直接施釉)となります。

   又、施釉せずに本焼きし、高温で焼成する事も可能ですが、仕上がりは若干劣ります。

  ④ 施釉方法は添付の資料に従って下さい、若干厚めに掛けた方が良い場合があります。

3) 上記の如く、可成りの高温が必要に成りますが、お持ちの窯の最高温度は十分満た

 されているでしょうか?

 ① 磁器土を使用する目的は、機械的強度を得る為と、素地が白色なので、色が鮮明に

  成るからだと思われます。

 ② 一つの提案なのですが、磁器土の本焼きと成ると、時間的、経済的にも多きな

  負担となります。そこで、半磁器土を使う事をお勧めします。

  焼成温度を50℃程度下げる事も可能ですし、素地の色も磁器土と同程度に白く

  焼き上がります。但し、強度は若干劣ります。

以上、思い付く範囲での説明と成ります。参考にして貰えれば幸いです。

 

疑問などが有りましたら、再度お問い合わせください。

情報量は多い程有難いです。

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質問50 炭化用黒粘土の販売所に付いて

2021-11-08 10:53:02 | 質問、問い合わせ、相談事

獅子丸様より以下のご質問を頂きましたのでお答えいたします。

 

炭化黒粘土の紹介を拝見して気になりコメント致しました。

どこかで販売しているのでしょうか?

 

明窓窯より

粘土類を取り扱っている多くのメーカーで一般に市販されています。

メーカーのカタログを取り寄せて何処の土が最適か検討して下さい。

 ネーカーによって若干の相違がある場合が多いようです。

 最少量の粘土を購入し、試験焼きをしてから決めて下さい。

 メーカーはネットでも検索可能です。取り扱い店は全国にありますので、電話等で

 問い合わせる際には、お住まい近くのメーカーを選ぶと便利です。

まだカタログ類をお持ちで無いならば数社のカタログを取り寄せて下さい。

粘土以外の釉薬や試薬(鉄、銅、マンガン、錫等の金属族類)、小道具類等の掲載された

総合案内カタログが手元にあれば色々役立ちます。

私の方から特定のメーカーをお教えする事は差支えますのでご了承ください。

 以上

 

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質問49 赤織部の釉薬の危険性に付いて

2021-04-23 13:59:19 | 質問、問い合わせ、相談事

匿名希望の「陶芸作品が好きな方」から以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの回答を

致します。

 

はじめまして。ブログをみさせていただきました。

陶芸作品が好きで、時々買い求めます。

先日赤織部の茶碗をてにし、この釉薬は大丈夫なのかと心配になってきました。

趣味で作っておられるのですが、食事に使っても、大丈夫でしょうか?

わかれば教えてください。よろしくお願いいたします。

 

明窓窯より

赤織部は鉄分の多い赤土を用い、白土などで絵柄を施した作品です。

織部焼きの釉は、酸化銅(青織部)や鉄(黒織部)等の金属を多く含む釉が一般的ですが、

赤織部は、絵柄部分に透明系の釉を施し、他の部分に従来の釉が掛けられ、全体に明るく

赤く発色した作品です。

酸化銅は有毒ですが、その他これらの素材や釉の中に有毒な物質は含まれていません。

尚、酸化銅は有毒では有りますが、釉の表面はガラス質で覆われ、銅が直接露出する事は

有りませんので、食器で使用しても何ら問題ありません。

◎ 釉で危険な物は、鉛(なまり)が含まれた場合です。

釉に鉛が入ると、釉の発色がよくなり、更に釉の熔ける温度を下げる働きがる為、昔は

使われていました。しかし鉛が酢酸(お酢)等の酸で溶け出し、人体に悪影響を与える事が

判明し、現在では、一部楽焼の抹茶々碗にのみ使用する事が認められていますが、

それ以外の作品に使う事事は出来ません。市販の作品や自作の作品であっても同じです。

それ故、市販の釉では抹茶々碗(楽焼)以外の物には、鉛は含まれておりません。

◎結論 食器で使用しても何ら問題ありません。安心してご使用下さい。

 疑問などが有りましたら、再度質問をお受けします。

以上

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陶芸と金属類の関係3

2021-03-02 16:36:25 | 陶芸と金属類

3)金属が独自の色彩を持つ理由。

 各金属はその金属特有の色を発します。

 焼成する以前であっても、焼成後であっても、色を発しますが、焼成前と焼成後では

 同じ場合と、異なる場合が有ります。これは焼成によって高い温度に晒され熱的変化や

 酸化又は還元変化によって化学反応が起こり、色彩が変化する為です。

 ① 陶芸とは直接関係しないですが、金属には炎色反応と言うものがあります。

  ⅰ) 花火の発色は金属の炎色反応による物です。

   この現象は金属の電子が高温により熱エネルギーをもらう事で起こります。

   電子は高いエネルギーをもらうと、より高いエネルギー状態に移行します。

   これを遷移(せんい)と言います。この状態では不安定のため瞬時に元の状態に

   戻ります。その際、余ったエネルギーを光として放出します。

   光は電磁波の一種で波長(振動数)を持っています。エネルギーの強さは波長に反比例し

   紫>藍>青>緑>黄>橙>赤の順に成ります。波長は赤が一番長く、紫が最短に

   成ります。

 ② 金属によって色が異なるのは、結晶構造の違いによる物と思われます。

  物質はその種類に拠って結晶構造が異なります。結晶構造と言うのは、原子の並び方

  の事です。光線が結晶に衝突すると、金属類は、一部は透過する場合も有りますが、

  大部分は結晶原子によって反射されます。その際の反射の違いによって色に差が出ると

  思われています。

 ③ 金属の種類によって、金属の色はおおむね決まっていますが、金属を取り巻く環境

  によって、千変万化します。その為苦労して独自の色(光沢)を開発する人が多いのです。

  ⅰ) 例えば鉄は、純鉄であればステンレスの様に白銀色をしていますが、空気中では

   錆が発生し、赤、黄色、茶褐色、黒色等に変化します。これは酸化作用ですが、水中

  でも起こります。それ故、陶芸では窯の雰囲気や、温度、釉の調合(含有量)によって

   各種の色彩を作り出す事が可能に成ります。  

  ⅱ) 銅で有れば、赤銅色が基本色ですが、酸化作用によって青から緑色へ変化します。

  ⅲ) コバルトは濃紺、青色を基調にしますが、濃淡によって黒色にも出来ます。

  ⅳ) 黄色系であれば、チタンが入っている可能性があります。

    その他、陶芸で使用する金属類は多種に渡ります。

  ⅴ) 二種類以上の金属は高温で混ざり合い、合金を作ります。 

    合金は、発色にも影響します。  

2) 金属結晶釉と金属光沢釉

 ① 釉の冷却時に金属が析出し、結晶化するのが結晶釉に成ります。

  結晶の大小によって結晶構造が見られる物と、見た目では明確な結晶とは確認でき

  なくとも、金属顕微鏡で確認できる細かな結晶が存在すると判る場合が有ります。

  結晶釉と呼ばれる場合、大きな結晶を析出する場合が多いです。

 ② 結晶構造は金属の種類や、結晶時の温度環境や窯の雰囲気によって、千差万別の

  様相を呈します。

 ③ 金属光沢釉とは釉の表面に金属質の光沢が現れる釉です。

  勿論、光沢の無い又は光沢の少ない釉も有ります。これは梨地と呼ばれる場合が有り

  一般にマット釉と呼ばれる物です。

  尚、マット釉では、必ずしも金属が必要と言う訳では無く、ガラス質の成分により

  マット調にする事も可能です。

  光沢は、表面から反射する光の他、釉内の金属結晶からの反射による物です。

  釉内の結晶は大きさと、結晶周辺の色彩によって結晶釉の良し悪しが決まります。

  一方マット釉は表面と釉内に金属結晶が存在していても、表面が滑らかでなく

  細かい凹凸があり、「ザラツイタ」感じの手さわりで有り、光が乱反射してた結果

  光沢が出ません。

以下次回に続きます。 

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質問48 マンガンラスター釉について

2020-11-19 10:24:02 | 質問、問い合わせ、相談事

イノウエ様より以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を述べます。

 

◎ こんにちは。初めまして。釉薬について検索しておりましたら、こちらのページが

とても詳しくわかりやすかったので、教えて頂きたい事がありメッセージを書いております。

よろしくお願いします。

マットの黒地に燻し金のような表面を持つマグカップに水を入れるとキラキラしたものが

浮いてきます。何度洗ってもでてくるので、厚塗りの釉薬が剥がれてるのかなと心配に

なっています。

検索していたら、こちらで「マンガンラスター」をみつけ、この釉薬ではないかと

思いました。マンガンを多く(厚く?)かけると、焼成後に定着せずに剥がれる可能性は

あるのでしょうか?販売先は、マンガンを使っており、浮いてくるのは「スス」との

ことですが、どう見てもキラキラしているのです。体に有害だと嫌だなと思い使うのを

ためらっています。

ぶしつけに個人的な質問を失礼かと存じますが、回答を頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

 

◎ 明窓窯より

1) 浮き上がった物が本当にキラキラした物かを確認する。

 水(又は白湯)をカップに入れ浮き上がったと思われる時の液体を、白色の皿等の

 器に移し変えて下さい。

 その際、やはりキラキラした物が存在すれば、何かの物質がカップから出て来た事に

 なります。もし出現して無ければラスターの釉の反射と思われます。

2) 例え熱湯であっても、商品として流通した作品が、釉が剥がれたり、溶け出る事は

 有りません。例え剥がれたとしても、剥がれた痕は釉が変色したり、ザラザラ感が出て

 確認出来ます。尚、完全にガラス化又はガラス質に包まれた物質は水では溶ける事は

 有りません。それ故、釉以外から来た事に成ります。

 又、マンガンは金属ですので、舌触りで判別できます。

3) 一番考えられる事は、カップの汚れです。

 カップをどの様な使用しているかの記載が有りませんが、コーヒーや紅茶、緑茶などでは

 茶渋等が付く事が多いですので、それらが析出したとも思われます。

 特に表面がザラ付く場合や、貫入(ひび割れ)がある場合等に起こり易いです。

 若しも、素焼きする事が出来れば、これらの汚れを燃やして取り除く事が出来ます。

 「スス」で有っても素焼き(700~800℃)で取り除く事が出来ます。

4) 油等の汚れの可能性が有ります。

 何度洗っても出現するとなると、水では溶けない汚れが考えられます。

 既に試しているとは思われますが、食器用洗剤で洗って脂分を取り除けるかも知れません。

◎ 結論 釉から溶け出した物質とは考えられ難いです。

 それ故、このまま使用し続けても、健康に問題が出るとは思われません。

以上 

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質問47 本焼きに付いて

2020-11-05 12:08:33 | 質問、問い合わせ、相談事

伊藤吉和様より、以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を述べます。

 

 ◎ 何時も貴ブログを参考にさせていただいてありがとうございます。

 素人サークルで市の設備、ガス窯にて陶芸をしています。指導者はいません。

 質門は950℃に達するまでの焼成の方法です。一番温度が上がる方法は中性炎と聞いてます

 が、酸化炎で焼くと書いてるいる本もあり、どちらが良いのか?

 又ガラス化する前の→酸化&還元に入るまえまでの焼成は、極端に言って還元・酸化・

 中性炎~どの焼き方でも良いように思えてきたんですが、それでよろしいのでしょうか?

 宜しくお願い致します。

 

◎ 明窓窯より

1) 釉がガラス質に変化するのは、950℃前後からとされています。

 キッチリ温度が一定でないのは、釉は一定の融点(熔け始め)が無い為です。

 ガラス質になる前までに酸化、還元、中性焼きを決める必要は有りますが、その前段階では

 伊藤様のおっしゃる通り、どの様な焼き方でも問題有りません。

 但し、窯にもよりますが、酸化から急に還元に変更しても、直ぐには変化せず、有る程度の

 時間が必要ですので、950℃丁度ではなく、ある程度前から準備した方が上手く行くと

 思われます。

2) 温度上昇時の窯の雰囲気は、酸化が良いのか、還元が良いのかの件。

 確実に言える事は、強酸化も強還元も温度上昇に寄与しません。

 強還元では確実に温度が低下します。強酸化も温度は上昇せず、排熱に伴い熱が煙突から

 外に逃げていきます。

① 最適の候補は弱酸化、弱還元、中性炎と成ります。

 窯の温度を上げるのは、一概に窯の雰囲気が全てではありません。

 窯の構造、大きさ、窯詰めの違い、作品の多さ、作品の大きさ、更にガスか電気か、

 又は、薪等の違いにより、同じ焼き方でも雰囲気に違いが発生します。

 更に、窯の容量(大きさ)によっては、窯全体が一様な雰囲気に成る事は少なく、

 窯の場所場所によって、違いが起きるのが普通です。

 ガス窯の場合、煙突の挽(窯への空気の流入量)の大小による事も大きく関係します。

 極端に言うとその窯特有の温度上昇の癖があります。この癖は窯焚きの頻度を増す事で

 次第に判明してきます。

② それ故、窯焚き時には、時間、温度、窯の雰囲気(炎、挽の強さで判る)等を記録し、

 更に、一目で判る温度上昇曲線を描く事をお勧めします。

 

◎ 結論、本焼時950℃付近までは、窯の雰囲気はどの様な状態でも大差ありません。

 最適な温度上昇は、各々の窯の状態や、窯焚き時の事情によって異なる為、どの雰囲気が

 最適とは、一概に言えません。ご自分で最適状態を試行錯誤して見つけて下さい。

 尚、当方の窯(プロパンガス)では、窯を炊くたんびに温度の上昇度合いは異なります。

 常に温度上昇には気を付けています。

 更に、窯焚きで一番大切なのは、目標の温度に到達させる事です。

 焼き過ぎよりも、焼き不足(釉が溶けない)に成ると窯焚き失敗ですので一大事です。

以上 参考にして頂ければ幸いです。

不明な点が有りましたら、再度ご質問下さい。

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質問46-2 本焼きでの割れ(冷め割れ)

2020-11-03 11:33:56 | 質問、問い合わせ、相談事

田中様より以下の追加のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を記します。


◎ 割れですがお話を伺っていますと冷却時の割れで間違い無いと思います、スパッと割れて

いますのと釉は流れていません、もう少し詳細に申し上げればよかっと反省しております、

窯はH40cmW35cmの丸い窯でちいさいので早く冷却されるのでしょうね

(いつも満杯で焼いています)、ならば冷却を遅らせる良い手はありますでしょうか、

また今はひも作りでその辺も問題ありかとは思っています(たまには空気が入ったりもします、

下手なんですね)。追加の質問で恐れ入ります。

 

◎ 明窓窯より

 冷め割れの原因は、急速に窯(作品)が冷えた事によって起こります。

 窯の大きさ(容量)や、窯の壁の厚みに左右され易いです。

 陶磁器は急冷、急熱に対して弱く出来るだけ避ける事が大切です。

 尚、土鍋など火に掛けても問題なく使用出来るのは、耐熱用の土が使われているからです。

 土鍋用でなくても、素地の中には、急熱急冷用の物が市販されていますので、

 その様な素地を使う事も一方法です。陶芸材料メーカーのカタログ等で確認して下さい。

 窯が早く冷える原因は二つあります。

 1) 窯の蓋を早く開いた場合。

  焼き上がりを早く確認したいと、十分冷えていない状態で窯の蓋を開き、外気が

  入り込んで窯が冷える状態です。

  ① 昔から、窯を冷やす時間は、窯を炊いた時間と同じ時間と言われていますが、

   これは大きな窯の場合で、小規模の現在では、必ずしも当てはまりません。

   現在では、焼成時間も冷却時間も大幅に短く成っています。

  ② 当方では、最低100℃以下に成った段階で窯の蓋を開けています。

   この温度でも手袋は必要です。時間に余裕が有りましたら、50℃程度まで下がる

   まで、待つべきです。

  ③ 100℃の状態でも、窯出し直後は「チンチン」と釉に貫入が入る音がします。

2) 窯が早く冷えるの防ぐ方法。

 ① 田中様の窯は電気を使用しいると思われます。

  徐冷する為に、冷却過程で弱く通電し急冷を防ぐが事できます。

  冷め割れは、600℃~500℃の間の急冷で発生すると言われ、原因は素地中の石英が

  この温度範囲で結晶構造が変化し、急膨張を起こす為と言われています。

 ② 窯詰めを検討する。

  窯は下部から冷却し、上部ほでゆっくり冷えます。

  それ故、割れ易い素地の作品は、窯の上部に窯詰めし、急冷を防ぐ方法も有ります。

 ③ 窯が早く冷えるのは、作品の量が少ない為でも有ります。

  作品の熱容量が少ないと、窯の内部は速く冷めます。それ故作品の量を多くすると共に、

  作品以外の熱容量の多い物を窯詰めすると有効です。作品の肉厚を厚くする事も大切です

  窯がいっぱいとの事ですが、上下方向などに作品が入らない程度の小さな隙間があるはず

  です。例えば、棚板を支える小さな支柱などを隙間に詰め込んだり、棚板の数を増やしたり

  又は棚板を二枚重ねにして使用する等の方法があります。

  棚板が高価であれば、手製の粘土板を作りる事で代用できます。

  その他、割れた作品の欠片(かけら)等(但し施釉の作品は溶着に注意)を詰め込み、

  熱量を長く保持する方法もあります。素焼きした大小の粘土玉を隙間に入れる事で

  熱容量を増やす事が出来ます。

  注:熱容量が大きいと、温まり難く冷め難く成る事です。

以上決定的な方法を提示できませんが、色々試行錯誤して試して下さい。

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質問46 本焼きでの割れの原因

2020-10-30 14:51:28 | 質問、問い合わせ、相談事

田中様より以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの回答を致します。

 

自窯で13回本焼きしました、12回目までは割れると言う経験がありませんで

したが今回半磁器土5つの(マグカップ、お皿など)うち4つ割れていました、

原因は1成型がまずかった2釉薬が内、亜鉛結晶釉、外、萌黄交趾と言う少し

流れやすい(亜鉛結晶釉よりは流れはまし)透明感のある釉3乾燥のしかた

(釉薬を掛けて4時間後焼いた)、今まで素焼きでヒビが入ったことはありまし

たが本焼きは無かったので少しショックです。

もう一枚お皿も(たたらで半磁器)カンが入ったような割れ方でマグなども同じです。

もう一度同じものを挑戦はしたいと思っていますが不安です、注意点などござ

いますでしょうか。

手轆轤で成形(比較的表面は綺麗と思います少し水が多かったかも)、1250度

で亜鉛結晶釉の温度設定、因みに同窯で陶土は割れておりません。

 

明窓窯より

割れた作品を拝見していないので、詳しい原因は不明ですが、一般的な説明に成りますので、

ご了承下さい。

焼成で起きる割れには、焼成中に起きる場合と、冷却時に起こる物に分かれます。

冷却時に起こる場合は、割れの断面が綺麗であり、釉が断面に付着していない事等から

判ります。今回の割れた断面を良く見て下さい。

冷却時の割れは冷め割れと呼ばれ、焼成時の冷却スピードに関係します。

一方焼成時の割れの場合、断面にややザラツキが有ったり、釉が断面の縁に付いている

場合が多いです。

今回のご質問は、後者の事の様に思われますので、焼成中の割れに付いてお話します。

1) タタラを使った作品(皿、マグカップ)を半磁器土で制作との事ですが、割れの主な

 原因は、土の締りが弱い為と思われます。

 ① 面積の大きいタタラ製の板状の作品は「ひび」が入り易い。

  タタラを作る際、素地を叩き板等で強く叩き締めます。上下方向だけでなく、板の全周の縁

  も手の親指や、厚みのある板で板の内側に向かって、縁が持ち上がる程度押し土を締めます

  その後、なめし皮等で縁(特に角部分)を拭き押した痕を消し滑らかにします。

   縁の小さな傷も本焼きでは、大きな傷に成ります。

  ⅱ) 板状の皿に脚を付けると、作品は変形したり割れを起こし易いです。

   なるべく脚は付けない方が安全です。

   又、皿の周辺を持ち上げる事で、変形や割れを防ぐ事が出来ます。

   持ち上げる量が大きい程効果が有ります。尚、持ち上げた部分が本焼きすると、

   下に落ち、高さが低く成ります。

  ⅲ) タタラを筒に巻いてマグカップを作る際にも、上で述べた方法で土を締めてから

   筒などに巻いて形を造る事です、マグカップの取っ手も土を締めてから形を造り

   取付ます。

  ⅳ) タタラの場合、作品によっては繫ぎ目が生じますので、繫ぎ目の処置が悪いと

   その繫ぎ目から「ひび」が入る事もあります。繋いだ痕が出ない様に綺麗に仕上げるか

   繫ぎ目をあえて二重にする方法もあります。その他接触面積を大きく採る(断面を斜めに

   カットする等)とより割れ難くする事です。

2) 今回半磁器土で発生したとの事ですが、他の素地でも同様な事が起こる可能性が

  有りますので、上記の点をご注意下さい。

  素地の種類に拠っては、同じ方法でも安全な場合と、不安定な素地がりますので

  多くの素地を試す事をお勧めします。

尚、上記方法を行っても割れが発生する場合があります。それは、

① 素焼き時に既に「ひび」が入っているのを見逃した場合。

② タタラが均等な厚みでない場合。

③ タタラが正方向又は長方形の様に綺麗な形ではなく、複雑な形(不定形)の場合。

  特に縁に切れ込みを入れると、そこからひびが入り易いです。

④ その他:成形時に部分的に力が入った等。

3) タタラ以外で作品を作る際、手捻りの場合肉厚に差が出ると、割れが生じ易いです。

 手捻りの方法も、紐作り、玉作り等色々な方法が有りますので、作品の大きさ等を考え、

 適宜選ぶ事です。

陶芸では、作品の割れは、常に付き纏う事柄で、原因も多肢に渡りますので、その都度原因を

考えて下さい。

以上 お役に立つか分かりませんが、参考にして頂ければ幸いです。   

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質問45 白磁が焼成で白く成らない

2020-09-25 15:03:21 | 質問、問い合わせ、相談事

オオヤマネコ様より以下のご質問をお受けしましたので、当方なに回答します。

 

【磁器が真っ白になりません】

私は真っ白な磁器の質感が好きになり、何とか自分でも作ってみたいと思って

いる陶芸超初心者です。

中古の小型電気窯を購入し、九谷磁器土、九谷用石灰透明釉を入手し、見よう

見まねで練り、粘土細工をし、完全乾燥、900℃で素焼き、うすピンクになっ

た物に下絵の具で下絵付け→石灰透明釉をかけ、1300℃で焼成しました。

すると、少し縮んでカチコチに硬くなりツヤツヤに焼けましたが、

真っ白にならず、なんだか全体が青みがかった灰色なのです。

絵付けをしなかったものも全て同じ灰色でした。

画像検索をして磁器の単純酸化焼成の見本写真を見てみると、皆肌色がかった

白には見えますが、こんなに灰色のものは見当たりません。

酸化だから?磁土や釉薬の種類?焼き過ぎ?

何がいけないのかまるでチンプンカンプンです。

何とか真っ白な磁器を作ってみたいのですが、どうしたら今の設備で灰色では

ない真っ白な磁器が作れますでしょうか?

どうか何卒ご教示のほどよろしくお願いいたします。

◎ 明窓窯より

最初に当窯では磁器(半磁器は有り)を焼いた事はありませんので、当方の回答も経験に基ずく

ものでは在りませんので、的外れに成る可能性もあります。ご了承下さい。

 

白く成らない原因として

1) 素地その物が焼成で白く成らない場合

 九谷磁器土を入手との事ですが、その際この土を焼成した色見本をご覧に成っていないの

 ですか? 陶芸店等では色見本を置いている所が多いです。

 一口に九谷磁器土と言ってもメーカーに拠って違いが有る物です。

 即ち、轆轤挽し易い様に、又は白さや透光性、青白磁用、艶を出す為等の理由で、

 磁土の源土に他の土を混ぜたりして調整しているのが、一般的です。

 当然各メーカーに拠ってその混入物や混入割合が異なります。

 その結果、九谷磁器土の名で市販されていても、異なる色に成る場合も有ります。

 入手した磁器土の焼成された色見本(無釉、施釉した物)が手に入れば良いのですが、

 さもなければ写真でも確認下さい。出来ればメカーに問い合わせ下さい。

 尚、画像検索では色や形の良く出来た作品のみ表示されますので、当てにしてはいけません。

2) 見本で白く焼ける事が確認できた場合

 制作過程で何らかの問題がある事になります。

 一番考えらる事は、素地に不純物が混入した場合です。

 ① オオヤマネコ様の工房では、白磁以外に他の粘土類を使用していますか?

  白磁以外に他の土を使用していると、微量ですがこの土が混入する場合があります。

  特に、鉄分等の金属類は、素地を汚し色が付きます。

  即ち、磁器土は数百回練る必要がありますが、練り台が他の粘土と共用していませんか?

  例え、練り台を綺麗に掃除していても、同じ台を使用していれば、混入する可能性

  も有ります。

  なるべく、保管や粘土類から離して制作する事です。

 ② カンナ類から鉄粉等が混入する場合。

  磁器は削る事で肉薄にします。その際カンナを用いますが、一般に使用するカンナ

  ではなく、超鋼の物を使うか、木片を加工したナイフ状の物を使うと良いでしょう。

  即ち、乾いた硬い素地を削る際、カンナも削れ(摩耗)鉄粉が素地に混入するのを

  防ぐ為です。

 ③ 釉が汚れている場合。

  施釉しない素地片を焼成する。白く焼ければ釉に関係すると思われます。

  市販の透明釉に問題がある場合。

  ⅰ) 釉は金属製の容器(バケツ等)に保管されていないか?

    金属類の錆(さび)が入り込む恐れがあります。

  ⅱ) 施釉の際、漬け掛けでは他の素地の作品と同じ共用していないか?

  ⅲ) 施釉用具を白磁以外の作品と共用していないか?

 ④ 石灰透明釉は還元焼成で灰色に成る。

  電気窯であるので酸化焼成のはずです。しかしながら何らかの理由で還元焼成に

  なる事は無いのでしょうか?例えば、磁器土以外の素地で制作した作品を一緒に

  焼成する事はありませんか?

  又施釉の仕方(例えば釉の厚み)によって、不透明に成ったり白っぽくなる場合や

  水色っぽく成る時もあります。

  透明釉に問題が有る場合には、他の透明釉薬(灰系透明釉)等に変更する手も

  有ります。

以上決めてになる回答に成っていませんが参考にして下さい。

 

尚、本ブログをお読みの方で、この件で何らかの情報をお持ちの方がおりましたら

コメント欄に御投稿下さい。  

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質問44-2 亜鉛結晶釉と撥水剤に付いて

2020-08-26 15:19:46 | 質問、問い合わせ、相談事

田中豊治様より追加のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を記します。

 

撥水の事ですが言葉足らずでした、使用したのはCP-F3(油性超強力タイプ 色

はブルーで前CP-E2と同じ)で以前の分より強力と言う事で購入しました

が・・・結果はあまり変わりませんでした、但し浸した時は結構弾きます、自

身思うのはコンプレッサーで吹くと徐々に釉が付着して弾いてくれないのか

なと・・・? 沢山釉があれば浸けちゃうのですが量が少ないもんで吹いて

おります、仕方なく今は陶画糊でやりますが後の処理が結構大変で撥水が出来

ればよいのですが、吹き付けの方が弾かないと言うご経験ありませんか。

 

明窓窯より

昔より施釉の厚みは郵便はがき一枚分が理想的と言われています。

市販の郵便はがきの紙厚は、0.24mm(即ち240μ=ミクロン)です。

陶芸ではないのですが、近年では少なく成りましたが、家の外壁塗装もガン吹きで行うい

ます。即ち同じスプレー掛けです。

その際に塗膜の厚みは上塗り(仕上げ塗り)で0.100mm(100μ)程度との事です。

(ネット調べです。)

1) 釉を弾かない原因は、釉の厚みが薄い為と思われます。

 施釉を漬け掛けすると弾く事から、漬ける事で釉の厚みが増す結果と思われます。

 田中様のは、どの程度の釉厚なのかは不明ですが、昔から簡易な方法で釉の厚みを

 見る方法に、指の爪で引っ掻いてその痕で判定するやる方が有ります。

 引っ掻いた痕はシッカリ残る事が大切です。又断面から釉の厚みを見る事もできなす。

 漬け掛けした時と吹き掛けの厚みを見比べて下さい。違いがあるはずです。

 釉が薄い為、素地に吸収されてしまうのではないでしょうか?

2) 釉を節約する為に、漬け掛けは出来ないとの事ですが、流し掛けにすれば、

  漬け掛けと同じ効果が得られ、釉の量も多く蓄える必要はありませんので、

  一度挑戦して下さい。

結論、吹き掛けで釉が弾かれない理由は、釉の厚み不足と思われます。

  拭き掛ける回数を増やす、又は釉の濃度を増す等の方法で釉を厚く掛けて下さい。

  新に違う事を行うと何かと問題が発生するものですが、乗り越えて下さい。

尚、当方ではスプレー掛けの経験はありますが、撥水剤使用の上での経験はありません

ので、適格にお答えできません。悪しからず。

以上

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