わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉の話 21 (鉄釉4 青磁1)

2010-03-25 22:25:23 | 釉薬の調合と釉を掛ける
鉄釉の話を、続けます。

6) 青磁釉

  青磁釉は、中国の漢、唐の時代から作られ、東洋を代表する、釉とも言えます。

  青磁には、色調の種類も多く、各々、名前が付いています。

  ① 砧(きぬた)青磁

    千利休が、砧形の花瓶に、掛けられている釉を、砧青磁と呼んだ事が、語源です。

    帯藍青緑色の、綺麗な色で、花瓶や香炉などに使われ、青磁釉の代表と成っています。

  ② 天竜寺青磁

    足利尊氏が、後醍醐天皇の為に、天竜寺を建立しました。

    その天竜寺に、所蔵されている、香炉の色が、帯黄濃緑色をしており、その青磁を天竜寺青磁と、

    呼ばれています。

  ③ 七官青磁

    氷裂文(ひび割れ文)のある、黒味かかった、透明の緑色釉で、時代により色調に、差が有ります。

  ④ 朝鮮青磁(高麗青磁=こうらいせいじ)

    朝鮮は、高麗時代より、青磁釉の本場で、中国以上の優れた、作品が多くあります。

  ・ 釉の主着色剤は、酸化鉄で、還元焼成で得られます。

    更に、素地に赤土などの、鉄分があると、深みのある、色が出ます。

  ・ 青磁釉は、鉄分を多くしても、濃くなりません。鉄分が多くなると、飴色、褐色、黒い釉と成ります。

    それ故、濃くしたい場合には、2度3度と、重ね塗りする、必要が有ります。
 
  調合例

   ) 長石:61.3、 石灰石:7.5、 カオリン:4.9 珪石:24.8 酸化鉄:1.5

     (河井寛次郎氏の、Sk-6~8の青磁釉の調合 酸化で薄黄色、還元で緑又は帯青緑色)

   ) 長石:64、 松灰:27、仮焼黄土:9

     (浜田庄司氏の、Sk-6~8の調合 酸化で薄黄色、還元で曇った濃い緑、高温で暗い緑)
    
   ) 長石:25、石灰石:25、カオリン:6.5 粘土:20、石英:20、仮焼黄土:2、弁柄:1.5

     (バーナード・リーチ氏の、SK-7~9の調合 酸化で薄黄色、還元で灰緑)

   ) 長石:62、木灰:18、カオリン:12、石英:2、仮焼黄土:6、弁柄:0.12

     (尾形乾山の、SK-7~9の調合 酸化で薄黄色、還元で透明黄緑)

 以上は、有名な陶芸家が、調合した青磁釉です。

 ・ 注意:当然ですが、釉の調合以上に、焼成の仕方で、発色は、左右されます。上記の調合でも、

   良い色が出る保障は、ありません。

 現在でも、市販の、釉ではなく、自分独自の、青磁釉を作る方は、大勢いますし、日々新たな青磁釉が

 開発、発表されています。次回も青磁の調合について、述べます。

 青磁釉



 
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釉の話 20 (鉄釉3 黄瀬戸)

2010-03-24 22:33:26 | 釉薬の調合と釉を掛ける
鉄釉の話を、進めます。  ここでは、黄色い釉について、お話します。

3) 黄瀬戸釉

 ・ 瀬戸や美濃(岐阜県)で焼かれた、黄色の陶器で、特に、桃山期の美濃産が、珍重されています。

   肉厚で透明な「ぐい呑み手」、薄造りで、不透明な「あやめ手(あぶらげ手)」、

   江戸初期に造られた、厚手で光沢の強い「菊皿手」があります。

 ・ 黄瀬戸釉は、黄褐色を帯びた釉で、釉肌に「ざらつき」が有る、油揚手と呼ばれる物で、

  「てかてか」熔けない、鈍い光沢のある物が、良いと言われています。

   (油揚手とは:艶消し釉に、微細な結晶が、析出している状態、又は、熔け不足の場合が有ります。)

 ・ 但し、現在では、透明の黄瀬戸や、乳濁した黄瀬戸、結晶化した黄瀬戸も、存在しています。

   色も濃い黄色、薄い黄色や、黄褐色な物、茶色に近い物まで、千差万別です。

   どれも、黄瀬戸釉として、市販されていて、本来の黄瀬戸と、大きく変化しています。

 ・ 種類は、鉢、向付、香合、花入れ、抹茶茶碗、ぐい呑等で、線描や、タンパンで、菖蒲、蕪(かぶ)、

   梅、菊、櫛目などの、模様が付けられている物が、多いです。

  調合例  この釉は、鉄分を多く含む灰を、用いた釉です。

    ① 基礎釉:20、 土灰:40、 赤土:40

    ② 長石 :40、 土灰:50、 藁灰:10、酸化鉄:1

    ③ 長石 :25、 土灰:50、 赤土:25

     上記、赤土の替りに、酸化鉄を、少量加えて、(弁柄の場合、釉が薄く赤くなる程度)も

     同じ様な、黄瀬戸が出来ます。

  ・ 灰の種類に拠って、色調も変化します。この灰に「こだわる」作陶家も多いです。

    「あお桐」の葉を燃やした灰、備長炭の灰等が、良いと言われていますが、自然物ですので、

     常に同じ状態の物が、入手できるとは、限りません。

  ・ 何れも、基本は、酸化焼成で行います。但し、窯の焚き方で、発色に差が出ます。

    弱還元で焼成したり、酸化、還元を交互に行ったり、窯をゆっくり冷ます人も、います。

4) 伊羅保釉(いらぼ)

  黄瀬戸釉と同じ様な、黄色い釉に、黄伊羅保釉が有ります。(青い、青伊羅保釉も有ります。)

  伊羅保釉は、鉄分が多い赤土に、木灰を混合した釉で、江戸時代前期に、萩焼で見られた技法です。

  黄瀬戸釉と黄伊羅保釉は、同じ様ですが、伊羅保釉は、焼成した時、流動性が有り、表面を、

  流れ落ちた、模様に成るのが、特徴です。又表面に、濃淡が、斑(まだら)模様に成る物も有ります。

 ・ 珪酸分が、少ないと、流下し易く、アルミナと、鉄の含有量及び、原料(灰)の種類や、

   素地の性質の違いで、様々な、伊羅保釉の作品が出来ます。

  調合例

    ① 長石:23、 土灰:72、 藁灰:5、  弁柄:8

    ②   :24、      :48、   :28、    :8

    ③   :30、      :62、   :8、     :8

    ④ 黄土:50、  土灰:50、

    ⑤ 来待石:70、 土灰:30

5) 渥(あつみ)釉 

   黄褐色で、土灰等を、単味で使い、艶の無い、鮫肌の釉です。(SK-8~9)

6) 青磁釉

以下次回に続きます。

 黄瀬戸釉


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釉の話 19 (鉄釉2、油滴天目釉)

2010-03-23 22:13:29 | 釉薬の調合と釉を掛ける
引き続き、色々な、鉄釉について、述べます。

1) 天目釉の調合

  調合例 ① 基礎釉:56、 木灰:8、  石英:24、 弁柄:12

      ②    :62、   :12、   :17、   :9

   上記調合例では、黒色~強褐色に成ります。

      ③ 長石:60、  土灰:40、  弁柄:10

      ④   :50、    :40、    :10、  藁灰:10

      ⑤   :30、    :40、  鬼板:40

   灰を使わない調合例

      ⑥ 長石:56.7 珪石:21.2  石灰石:15.3 カオリン:6.8  弁柄:8.0

      ⑦    :57.0    :21.5      :12.3      :6.6     :8.0   MgCO3:2.6      

2) 油滴天目釉

   黒い釉の中に、丸い斑点が、油の滴の様に、出現し、光り輝いています。

  ・ 高温で熔けた釉から、抜け出た気泡に、酸化鉄が、細かい結晶となって、析出した物です。

  ・ 焼成温度、ねらし(その温度を保持する)時間、釉の粘性、冷却速度などの、条件により、

    油滴(結晶)の形、大きさが、左右されます。

  ・ MgO 成分を入れると、粘性が下り、油滴が出来易く成ります。

    酸化コバルトを0.6%程度、添加すると、油滴が銀色に成ります。

    炭酸マンガンを、3%程度添加すると、油滴の出来る温度周辺で、粘性を下げる、働きが有ります。

  調合例 ① 福島長石:65.3、 珪石:24.0 石灰石:4.3 焼滑石:6.4 酸化鉄:7~9

       ② 三雲長石:32.5  来待石:67.5 炭酸マンガン:1.95

       ③   長石:70、   土灰:10、  藁灰:20、  弁柄:8

       (参考資料:窯業界誌)

       ④ 来待石:60、 藁灰:40 (1,250℃~1,280℃) 

 ・ 油滴天目を作る時の注意点

  ) 釉を厚く掛けると、油滴が大き過ぎ、気泡の痕が残りやすく、薄過ぎると、油滴が小さい。

     葉書1~2枚程度の、厚さにすると良いと、言われています。

  ) 焼成は、酸化焔で行います。冷却時間は長い方が、良い結果が出ます。

  ) 釉は、石灰ーマグネシア釉が良く、石灰分が多いと、鉄分が、釉の中に溶け込み、

     結晶化しません。

     又、釉の粘性が弱いと、釉中のガスが、容易に抜け出て、気泡が残らず、油滴が出来ません。

3) 黄瀬戸釉

以下次回に続きます。

 油滴天目釉 

  

   

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釉の話 18 (鉄釉1)

2010-03-22 21:40:25 | 釉薬の調合と釉を掛ける
基礎釉に鉄や、銅、クローム、マンガン、コバルト、チタンなどの酸化金属を、添加して、色の付いた、

釉薬を、色釉(着色釉)と呼ばれています。

各金属によって、発色も違いが有ります。以下順次述べたいと、思います。

1) 鉄釉

  鉄の成分は、鬼板、弁柄、黒浜(砂鉄)、黄土、来待(きまち)石、益子赤粉などから、取ります。

  鉄釉は、鉄の含有量や、他の不純物に応じて、黒、褐色、茶、黄色、青など、多彩な色を、呈します。

  更に、基礎釉の「アルカリ」成分に、どの様な材料を、使うかによっても、色は変化します。

 ① 天目釉

   中国の天目山の寺で、使用されていた、仏前に献茶する為の茶碗に、掛かっていた釉が、語源に

   成っています。この茶碗は、小振りで、「スッポン口」と言う、独特の形をしています。

   この釉は、酸化鉄を、多く添加し、酸化焼成して、青味又は、黒、褐色にした釉で、天目釉と

   呼んでいます。

  ) 基礎釉は、長石釉で、「アルカリ」に、石灰(CaO)を多くすると、黒褐色に成り、

     マグネシア(MgO)を多くすると、青褐色に成ります。

  ) 天目釉は酸化鉄が、主成分で、少量の不純物に、酸化マンガンや、酸化チタンを含みます。

     その影響で、飴(あめ)色、柿、鉄砂など、変化のある色に成ります。

    (一般の黒釉は、鉄分として、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、酸化マンガンの混合物を、

     使っています。)

  ) 基礎釉に添加する、酸化鉄は、8~15%程度です。

     鉄分の多い、弁柄などは、10%程度で、鬼板や黄土など、鉄分の少ない物では、

     20%~40%程度、添加します。

  ) 天目と名の付く釉は、色々有ります。

     黒天目、油滴天目、柿天目、禾目(のぎめ)天目、柚子肌天目、来待天目、木の葉天目、

     そして、耀変天目等です。

  ) 鉄釉は、素地の差、釉の掛け方、燃料の差、窯詰めの仕方、窯の焚き方、冷却の仕方等で、

     発色の仕方が、大きく変化します。釉は一般には、やや厚くかけます。

     それ故、釉に流動性があると、色に濃淡が出易いです。熔け過ぎると、柿釉や、飴釉に成ります。

 ② 鉄釉には、上記、天目釉の他に、瀬戸黒、蕎麦(そば)釉、黄瀬戸釉、伊羅保(イラボ)釉、そして、

   青磁釉などが、有ります。

次回より、各釉について、述べたいと思います。
     
 鉄釉

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釉の話 17 (下絵付け2)

2010-03-19 22:04:12 | 釉薬の調合と釉を掛ける
鉄絵の話を、続けます。

 ② 黒浜(砂鉄)について

 岩石に含まれる、鉄酸化物の内、磁鉄鉱(Fe3O4)は、風化によっても、分解されず、海岸や、川岸に

 堆積し、黒浜(砂鉄)と呼ばれ、黒っぽい色をしています。

 ) 参考までに、化学分析値を、表示すれば、

   Fe3O4:82%、TiO2:6%、Al2O3: 2%、SiO2: 2%、MnO: 3%、MgO: 2%、その他、CaO、NaO2、

   と成ります。

   鉄分以外に、「チタン」も、多く含まれています。

 ③ 黄土について

  岩石は、風化すると、粘土質に成ります。火成岩の様に、鉄化合物が入っている物は、赤色や、

  黄色の粘土質に成り、赤土とか、黄土と呼ばれています。特に中国産の黄土が、代表的な物です。

  鉄以外の、かなりの不純物を、含みます。

 ④ 弁柄(べんがら)について

  ) 弁柄の化学的分析値は、以下の様に成っています。

    酸化第二鉄(Fe2O3): 89%、SiO2: 7.5%、 Al2O3: 1.5%、水分(H2O): 2%

    赤い粉(鉄さび)状に、存在し、ほとんどが、鉄分です。主に釉に入れて、鉄系の釉を造ります。

 ⑤ 鉄絵として使う場合、

  鬼板単体で使用する場合と、弁柄、酸化鉄、黄土を混ぜて、使う場合が有ります。

  混ぜ合わせる効果は、素焼面で、線の伸びを良くし、書き易くする為です。

  お茶を使うと、素地によく、密着する為と、絵に釉を掛ける際、鉄の動きを防止する、目的で、

  お茶を入れて、乳鉢で良く摺ります。お茶の「タンニン」が、この作用を助けます。

 ⑥ 鉄絵の濃淡

  ) 鬼板の場合、濃度が濃くなると、濃さが増し、黒っぽく成ります。

    薄くするに従い、茶色が明るく成ります。 鬼板を、薄くし過ぎると、色が出ません。

    (呉須の場合には、薄くても出るのと、違います。)

  ) 鬼板以外の鉄絵では、塗った際、濃淡が、判り難いです。焼き上がれば、判定できますが、

     塗った直後では、判り難く、経験が必要に成ります。

     筆運びの速度で、吸収量を調節したり、二つに分けた、一方に、水を加えて、濃淡に差を

     付けたりします。

 ⑦ 鉄絵を使った、陶器には、以下の様な、焼き物が、有ります。

  )絵唐津焼き、)織部焼き、)絵志野、鼠(ねずみ)志野、)黄瀬戸などです。

    鬼板を使う物が、多いです。

   尚、黄瀬戸の場合には、鉄以外に、「タンパン」と言う、銅系の一種の、絵の具を使い、緑色に

   発色させます。

   「タンパン」は、硫酸銅で、水と共に、乳鉢で粒子を細かくして、筆等で、塗っていきます。

    素地を裏まで、通過して、「抜けタンパン」として、珍重されます。

以下次回に続きます。
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釉の話 16 (下絵付け1)

2010-03-18 22:25:06 | 釉薬の調合と釉を掛ける
下絵付けの方法について、話を進めます。

1) 呉須の使い方

 市販されている、呉須は、チューブ入りの物と、粉末状の物が有ります。

 ① チューブ入りの物は、ペースト状になっていて、絵皿などに、押し出し、水で濃さを調節して

   使います。特別何かを、添加する必要も無く、直ぐに使えます。但し、粉に比べて、やや高価です。

 ② 粉末状の物は、乳鉢で良く摺り、粒子を細かくします。

   粒子は細かい程、発色が良いと、言われています。

  ) 呉須その物は、高い温度で、熔けるわけでは、ありません、それ故、乳鉢で摺る際、

    透明釉を同程度、添加して摺ります。これは、呉須を濃く塗った場合に、釉が逃げるのを、

    防ぐ働きも有ります。又、素地との接着を良くする為、化学糊(CMC)を入れる事も、有ります。

  ) 呉須の濃度は、水分の量で、調節します。

     呉須は、他の下絵用の顔料と違い、どんなに薄くしても、色が出ます。

     それ故、色の濃淡を付ける事が、出来ます。

     但し、間違った場合に、消す去る事は、中々困難です。拭い去る程度では、残りますので、

     紙ヤスリ等で、削り取るのが、確実です。

  ③ 呉須で描いた部分は、絶対に触らないで、下さい。触ると、指に呉須が、転写され、

    その指で、他の部分を触ると、触った部分に、呉須が更に、転写されます。

    それ故、呉須で描く場合には、作品を持つ部分を、常に確保して置く、必要が有ります。

    但し、釉(一般には透明釉)を掛けた後では、何処を持っても安全です。

  ④ 呉須の使い方として、

   )筆で塗る、)吹く墨(ブラッシング)、)転写紙を使う方法が、有ります。

   )の吹く墨は、紙に模様を切り取り、作品の上に載せ、動かない様にしてから、呉須を含ませた、

     液を霧吹きに入れ、型紙を中心に、霧を吹く方法です。霧吹き後、紙を慎重に取り除くと、

     型紙通りの模様が、浮き出てきます。

     霧吹きが無い場合には、細かい金網を用意し、呉須を付けた、歯ブラシで、金網を擦り、飛沫を

     飛ばすと、霧吹きと、同じ効果が出ます。

2) 鉄を使った絵付け

  酸化鉄は、下絵の顔料に成ります。特に、鬼板や弁柄などが、代表的な顔料ですが、他の酸化鉄も

  使用可能です。

  鉄絵の発色は、酸化、還元、中性焔で、違いは有りますが、各々、発色の良い物も、多いです。

   尚、鉄を釉に使う、鉄釉については、後日述べます。

 ① 鬼板について

  ) 鬼板は、鉄化合物の入った、岩石が、風化し、雨水に溶け、それが再び、褐鉄鉱になり、岩石の

     割れ目などに、沈着した物で、一般的に、板状に成っています。

  ) 化学薬品と違い、酸化鉄以外に、かなりの不純物を、含みます。

    参考までに、ある化学分析値を示すと、

    酸化第二鉄:41%、Al2O3:24%、SiO2:11%、MnO:7%、MgO:3%、CaO:2%

    と成っています。勿論、天然ですので、産地等によって、バラツキがあります。

    合成された、鬼板も有ります。

  ) 鬼板は、細かく砕き、乳鉢で、そのまま(生)で、磨り潰して、使うか、一度焼いてから、

     使用します。

 ② 黒浜(砂鉄)について

 以下次回に続きます。

下絵付け    

   
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釉の話 15 (染付け、呉須)

2010-03-16 22:00:43 | 釉薬の調合と釉を掛ける
陶芸で、下絵付けとして、利用出来るのは、酸化鉄、酸化銅、及びその化合物です。

これらが、1,250℃以上に成ると、発色が、不安定になりますが、呉須(ゴス)は安定した発色に

成りますので、高い温度で、焼成する場合に、利用出来るのは、呉須のみと、成ります。

1) 呉須の成分

  呉須には、多くの不純物が、含まれています。この不純物が、良い色出す、基になっています。

  天然の呉須は、酸化コバルト(CoO)を、多く含む、マンガン土で、他に、酸化ニッケル(11%程度)、

  酸化鉄、酸化銅、酸化鉛、珪酸、亜硫酸、マンガンなどを、含みます。

2) ご自分で、呉須の成分を、見つけ精製して、使用する事は、少ないと、思います。

   ほとんどが、市販されている、各種の呉須を、使っている事と、思います。

3) 天然の呉須は、古い作品に見られますが、深みのある、渋い発色が、出ています。

   これは、コバルト以外の成分と、釉の成分との、相乗効果の、賜物です。

   市販の呉須は、科学的に合成された、呉須です。

  ・ 種類としては、古代呉須、紫呉須、青呉須、土呉須、墨呉須、焼貫呉須など、多種に渡り、

    その発色も、異なります。

   科学的に、純粋に作られた、酸化コバルトは、非常に鮮明な、藍色を示します。

4) 生素地や、素焼素地に、各種呉須で、下絵付けし、長石釉などの、透明系の釉を掛け、焼成した

   作品を、染付けと呼んでいます。

 ・ 昔より、染付けの釉として、天草陶石と、いす灰又は、栗皮灰で、調合した物が、特に発色が良いと、

    言われています。

   勿論、染付けの上に、伊万里や、九谷焼きの様に、更に、上絵付けを、施す技法も有ります。

5) 酸化焼成、還元焼成

  ① 還元焼成では、コバルトは、紫がかった、藍色が出ます。

    純粋に近い、酸化コバルトは、濃い藍色と成ります。

  ② 酸化焼成すると、黒味が強く出ます。

  ③ 呉須に含まれる、他の酸化物に因っても、色が変化します。

   ) 酸化銅が、入っていても、高温で、揮発しますので、なんら影響は、ありません。

   ) 酸化鉄は、還元で、淡い青を、酸化では、黄色又は、褐色に成りますが、量が多くなると、

      暗黒色に成ります。

   ) 酸化マンガンは、還元で、灰紫色、酸化で、灰褐色に成ります。

  尚 焼成温度が低いと、紫色が強く出、温度が高いと、紫色は、弱く成ります。

6) 上に掛ける釉の、組成によっても、色の出が、変化します。

  ① 珪酸や、マグネシア成分が多いと、コバルトは、黒くなる。

  ② 長石や、カオリンなどの、「アルミナ」が多いと、紫藍色が、鮮やかに成ります。

  ③ 石灰が多いと、色濃く、暗色になり、石灰を石灰石から取ると、藍色に成ります。

    石灰を、木や草などから取ると、色は変化します。

  ④ 亜鉛華を入れると、藍色は、空色に変化します。

以下次回に続きます。

参考文献: 素木洋一著、図解 工芸用陶磁器 技法堂出版(株)

  染付け 呉須


   

  
  
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釉の話 14 (熔ける温度の調整)

2010-03-14 21:58:33 | 釉薬の調合と釉を掛ける
陶芸の窯焚きで、一番重要な事は、作品が、壊れ無い事と、釉が熔ける事です。

色の出が、少々思惑と違っても、さほど問題に成りませんが、作品が壊れたり、釉が熔け不足に成った

場合は、大きな問題に成ります。造り直しか、焼き直す必要が、出てきます。

作品が、壊れる原因は、色々有りますが、ここでは触れずに、釉の熔け不足の対策を、述べます。

 釉が熔けない理由に、何らかの原因で、温度が上がらず、

 ① 窯の中の全ての作品が、熔け不足の場合と、

 ② 作品の一部に、熔け不足が生じる場合が、有ります。

 ①の場合は、窯の問題、窯詰めの問題、燃料の問題、焼成の仕方の問題などが、考えられますが、

 必ずしも、釉の問題ではありませんので、ここでは、述べません。

 ②の場合は、釉の熔ける温度を調整して、問題を解決する事が出来ます。以下その方法を、述べます。

1) 釉の熔融温度を下げる。

  釉が熔け過ぎて、熔融温度を上げたい場合も、有りますが、大部分は、融点を下げる方が多いです。

 ① ゼーゲル式から判るように、「アルカリ」に対して、「アルミナ」「シリカ」の量が増えると、

   熔ける温度は、上昇します。

  ) 逆に、「アルカリ」成分を増やせば、温度は下がる事に成ります。

  ) 亜鉛華(ZnO)や、鉛(PbO)が入ると、温度は下がります。

     但し、鉛は有毒ですので、なるべく使用しない様にします。

   ・ 市販されている、透明釉に、石灰3号と石灰4号が有ります。

     3号でSk-8程度(1250℃)、4号でSK-7程度(1230℃)で、熔けます。

   ・ 更に低い温度の、1200℃でも熔ける為には、3号に亜鉛華を、12%(外割り)添加すれば、

     良い言う、データも有ります。

   ) 「アルカリ」を多くし、「アルミナ」と「シリカ」を、減らせば、尚一層温度が下ります。

   ) 硼酸(B2O3)を添加すると、温度が下ります。

  尚、熔ける温度を上げるには、上記方法と、反対の事を、行えば良い事に成ります。

 2) 現在の窯は、内部の温度が、なるべく均一に成る様になっていますが、窯の容量が大きい場合や、

    薪などの燃料ですと、窯の部分部分によって、温度差が、出易いです。

    そこで、釉に強(温度が高い)弱(低い)を付ける方法が、昔より取られていました。

  ① 釉元(モト)

    今まで、ゼーゲル式から、釉を述べて来ましたが、民芸窯や、陶芸家などの、釉の調合は、

    今でも、大雑把な物です。これで、十分通用する物です。

    原料の長石(石粉)、珪石(ギヤマン)、石灰石で釉元を作ります。

   ・ 例えば、容積比で、石粉10に対して、ギヤマン5と、石灰石を加えて、二合釉薬のモトを

     作ります。このモトに、木灰を段階的に、増加し、加えて、強弱を付ける、方法です。

     モトに1升(1.8ℓ)に灰を、三合(0.54ℓ)加えた釉を、三合釉と言い、四合加えると、

     四合釉と成ります。当然木灰の量が多くなれば、熔ける温度は、下ります。

   ・ 三合半を加えますと、その中間に成ります。同様にして、四合半も作る事が出来ます。

   ・ 灰を加えても、釉の性質が、ほとんど、変化しない事を、利用した方法です。

以下次回に続きます。
    
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釉の話 13 (乳濁釉、マット釉)

2010-03-13 22:55:21 | 釉薬の調合と釉を掛ける
透明釉と同じ様に、乳濁釉や、マット釉(艶消し釉)も、人気のある釉です。

透明釉でない、これらの釉を、失透釉と呼びます。失透には、釉のガラスの中に、微細な結晶が、

浮遊している物(マット釉)と、分相と呼ばれる、二つのタイプ(乳濁釉)が有ります。

その調合について、述べたいと思います。

1) ゼーゲル式で、「アルミナ」:「シリカ」は、透明釉で1:8~12モル、マット釉で、1:3~5モル

   乳濁釉で、1:12~14モル程度です。但し 「シリカ」を増やし過ぎると、不溶性のマット釉に

   成ります。

2) 乳濁釉を作る

  ゼーゲル式より、アルカリ成分より、シリカ成分を、増やせば、乳濁する事が、判ります。

 ① 分相(ぶんそう): 釉の中の、ガラス成分が、変化を起し、ガラスでありながら、互いに熔けて

   混ざり合わ無い、現象を分相といいます、その為失透する物を、乳濁と呼んでいます。

 ② 珪石、マグネサイト、タルク(滑石)、藁灰、土灰、骨灰、酸化チタンなどを添加する。

   分相を起す、添加物は、上記の物質です。

 ③ 乳濁剤である、ジルコン(酸化ジルコニウム、ジルコニア)、酸化錫、亜鉛華を、添加する。

   上記原料は、釉に溶け込み、冷却と共に、結晶を生成し、乳濁します。

 ④ 乳濁釉には、藁白釉(石灰系、灰系)、白萩釉、卯(鵜)の斑(ふ)釉、乳白釉が有ります。

  調合例 藁白釉 :) 三雲長石20、 土灰30、 藁灰50  (重量比)

           ) 三雲長石30、 藁灰30、 石灰石 40

     卯の斑 : ) 土灰30、   籾灰50、 長石 20

 3) マット(艶消し)釉を作る

  上記2)-③の乳濁剤は、少量ですと、結晶化せず、乳濁しますが、量が増えたり、焼成の仕方に

  より、微細な結晶が発生し、光が、結晶に当り、乱反射し、マット釉薬に成ります。

  粒子が細かく、屈折率も高く、反射が大きい程、白さが増します。

  ・ 光沢の無い釉を、マット釉と言いますが、光沢の無い、透明マットも、存在します。

  ① 良いマットを出す為には、窯の冷やし方(冷まし方)に、関係します。

   「ゆっくり」と、冷やす方が、良いマットに成ります。小さな窯や、壁の薄い窯では、冷却速度が

   早く、結晶が出来難いです。又、釉の厚みも、厚い方が、良い結果が出易いです。

  ② 微細な結晶が、大きく成長した物が、結晶釉に成りますが、後日述べる予定です。

  ③ マット釉には、カオリンマット、藁灰マット、チタンマット、タルクマット、亜鉛マット
 
    リチウムマット、バリウムマットなど、添加物によって、名前が付けられています。

    又、色相から、白マット、黒マット、クリームマット、鉄マット、白鳳マットと呼ばれる、マット釉が

    市販されています。

   調合例1 タルク(滑石)マット釉(重量比、外割り)Sk-9(1280℃)

     ) 長石30、 珪石50、 カオリン20の基礎釉に、タルクを10~50

     ) 長石50、石灰石50の基礎釉に、タルク20~50

     ) 長石50、滑石50の基礎釉に、タルク30~80

   調合例2 SK-8(1250℃)釉

     ) 長石30、珪石17、石灰石23、ロウ石30

     ) 長石55、いす灰30、藁灰10、酸化錫10

     ) 長石30、いす灰30、藁灰40、酸化錫5

   調合例3 SK-4a(1160℃)釉

     ) 長石45.5 石灰石20.4 カオリン21.1 亜鉛華9.9 酸化錫3.1

  ③ 不熔性のマットについて、

    一般のマット釉は、材料が十分熔けています。しかし、「シリカ」成分が多過ぎると、十分熔けず、

    マット化します。その際、釉の表面は、「ザラツいた」感じに成りますので、区別できます。

 以下次回に続きます。  

 乳濁釉 マット釉  
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釉の話 12 (長石について)

2010-03-12 22:38:27 | 釉薬の調合と釉を掛ける
釉や素地に、必ず含まれる、長石について、述べます。

 ・ 長石に含まれる、「アルミナ」には、以下の働きが有ります。

 ① 熔融温度を、上げる作用がある。但し、量が少ないと、熔融温度を、わずかに下げます。

 ② 「アルミナ」の量の変化は、焼成温度の、変化に対して、釉の物理的性質を、大きく変化させない。

   (安定化させる)

 ③ 失透や、結晶生成を、防止する働きがある。又、貫入も、防止する。

6) 長石について
 
 ① 長石は、「アルミナ」成分を、多く含むと共に、「シリカ」成分と、CaO、MgO、K2O、Na2Oなどの、

   「アルカリ」成分を含み、釉の調合には、必要な物です。又、素地にも含まれています。

 ② 産地によって、名前が付けられ、その成分も、かなりの差が有ります。

   それ故、長石の種類が変わると、同じ様な調合でも、釉が変化します。

 ③ 長石の化学分析より

  ) 「アルミナ(AL2O3)」 成分の多い順と、100g当りのモル数は、以下の様に成ります。

    平津長石(0.195) > 福島長石(0.182) > 釜戸長石(0.142) > 対州長石(0.122) 

  ) 「シリカ(SiO2)」 成分の多い順、及びモル数は

    対州長石(1.325) > 釜戸長石(1.267) > 福島長石(1.111) > 平津長石(1.098)

  ) 「アルミナ」成分の中で、K2O(カリ)とNa2O(ナトリウム)が、多い順は

    平津長石 > 福島長石 > 釜戸長石 > 対州長石 と成ります。

   ・ 「アルミナ」の内、マグネシア(MgO)が、飛び抜けて多い(10倍以上)のは、平津長石です。

 ④ 朝鮮カオリンと、蛙目(がいろめ)粘土

   長石ではありませんが、「アルミナ」を多く含む物質に、カオリンと、蛙目粘土が有ります。

   長石の「アルミナ」分の不足を、補ったり、マット釉を作る時に、使用します。

  ) 「アルミナ」の成分は、平津や福島長石の、約2倍程度多く、含みます。

     即ち、100g当りのモル数は、朝鮮カオリンで、約0.38モル、蛙目粘土で、約0.34モルです。

  ) 「シリカ」成分は、長石類の、約半分程度で、各、0.76モル、0.83モルです。

尚、自然物の長石や、カオリン、蛙目の化学分析値は、必ずしも、この値を取る訳では、ありません。

一応、参考程度と、考えて、調合の際は、色々試す必要が有ります。

次回は、乳濁釉、マット釉について、述べます。

 長石について
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