わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉の話 11 (灰について)

2010-03-11 22:00:50 | 釉薬の調合と釉を掛ける
灰釉の話を続けます。

 5) 各種、灰の特徴

   天然の灰には、「アルミナ」「シリカ」「アルカリ」の全ての成分が、含まれています。

   灰の種類に拠って、その含有量に、差が有ります。何度も言う様に、同じ種類の灰でも、

   差が有りますが、一般的な、共通事項(特徴)が有りますので、説明します。

  ① ほとんどの、木の灰には、石灰分(CaO)が、20~50%含まれています。

    その他の「アルカリ」成分に、マグネシア、マンガン、鉄分、リン酸などを、含みます。

    禾(のぎ)本科(藁、籾殻など)の灰は、「シリカ」成分が、80%程度含まれます。

  ② 土灰は、他の灰と比べて、「アルミナ」と「シリカ」成分が、やや少なめで、MgO(マグネシア)と、

    CaO(カルシュム)、Fe2O3(鉄)を、比較的多く含みます。

  ③ 松灰、樫(かし)灰は、「アルミナ」と「シリカ」成分が、多目で、MnO2(マンガン)も多く、

    含みます。「マンガン」は、黒い釉を調合するのに、適します。

   ・ 各種金属を配合し、色釉を作る際、灰の成分や、酸化、還元焼成によって、色の出方が、

     微妙に変化します。 この件に関しては、後で説明する、予定です。

  ④ 木灰には、松、樫、楢(なら)、杉の他、栗皮(栗の実の皮でく、幹の皮です)、

    橙(だいだい、その他の柑橘類)、椿など あらゆる木の灰が、釉の原料に成ります。

    又、木や、草以外のコーヒ灰や、お茶の葉灰等、その他、作品にマヨネーズや、靴墨を塗っても、

    それらが、燃えて灰に成ると、熔けて、釉の様に働きます。 即ち、燃えた「カス」の灰は、

    どんな灰でも、多かれ少なかれ、ガラス質に成ります。

  ⑤ 自分で灰を作る

    ご自分で、木や草を燃やし、灰を作る方もいますし、作ってみたい方も、多いと思います。

    その方法について、述べます。

    木灰を良く燃やし、灰化させ、乳鉢や、臼などで、細かくします。これを何度も、水に浸し、

    上澄液を捨てて、水溶性のアルカリ分を、取り除きます。

    更に、乾燥後、篩(ふるい)に掛けて、土砂や、不純物を取り除いてから、使います。

   ・ 但し、籾殻を配合して、乳濁釉を、作る場合には、あまり細かく、粉砕しない方が、気泡が発生し

     乳白効果が上がると、言われています。

   ・ 灰を作るには、大量の木や藁が、必要です、更に燃やすと、大量の煙が出ます。

     焼く場所など、環境問題にも成りますので、注意が必要です。

  ⑥ 合成灰について、

    天然の灰は、変化が大きく、釉として、再現性に乏しいです。そこで、常に品質が一定に成る様に、

    合成した、各種の灰(合成土灰、松灰、藁灰、いす灰、栗皮灰など)が、市販されています。

     値段的にも、こちらの方が、安価で、容易に入手可能です。

   ・ 但し、メーカーによって、若干の差が有りますので、なるべく特定の物を、使う事を勧めます。
    
6) 長石について

以下次回に続きます。

 灰について

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釉の話 10 (基礎釉 灰釉2)

2010-03-10 20:47:34 | 釉薬の調合と釉を掛ける
灰釉の話を続けます。

 2) 藁(わら)灰乳濁釉を作る

    「アルミナ」成分に対して、「シリカ」成分が、多く成ると、釉は乳濁します。

     (Al2O3:SiO2 = 1:12~14 程度で、乳濁する。)

    藁や、籾殻(もみがら)の灰は、シリカ(SiO2)成分を、80%(重量比)も含みます。

    それ故、乳濁させる、材料になります。 又、珪石の替りに、使う事も有ります。

    但し、藁や、籾殻を焼いた灰には、30%程度の炭素分が、残りますので、調合の際、計算から

    差し引く必要が、有りますので、注意して下さい。

  ) 調合例: 釜戸長石 50、  土灰 20、 藁灰 30 

              長石 50、 いす灰 20、 藁灰 30

              長石 30、 いす灰 30、 藁灰 40

              長石 20、 いす灰 40、 藁灰 40

              長石 60、 いす灰 10、 藁灰 30

     長石には、福島長石や、釜戸長石、対州長石、平津長石などが、有りますが、上記調合例では、

     長石の種類に拠って、違いが出ます。各長石の特徴に付いては、後日お話する予定です。

     いす灰は、鉄分の少ない灰ですので、釉に色が付く事が、少ないです。

 3) マット釉を作る

    マット釉は、Al2O3:SiO2=1:3~6(モル)で、良いマットに成ると、言われています。

    即ち、長石(アルミナ成分)を、多くすれば、マットに成ります。

    但し、釉が熔け難くなりますので、硼酸(BOH3)を添加して、融点を下げます。

      調合例  釜戸長石  90、 土灰  10

  ・ 乳濁釉や、マット釉は、乳濁剤、失透剤などを、添加して作る方法が、有ります。この件についても、

    後日、述べる予定です。

 4) 灰釉の注意点

  ① 熔け過ぎ、熔け不足

    調合によっては、熔け過ぎや、不足する事が、多いです。特に、熔け過ぎには、要注意です。

    ) 長石成分(アルミナ)が多いと、釉の粘性が大きくなり、ゴス等の、下絵がはっきり出ます。

    ) 灰(アルカリ成分)が、多く成るに従い、釉が流れ易く成り、下絵も流れる場合が、有ります。

    ) テスト焼きする場合、流れ過ぎの、対策を採ります。

  ② 酸化、還元焼成

    鉄分を多く含む灰(松灰、土灰)は、焼成時に、着色する場合が、有ります。

    酸化では、黄色掛り、還元では、緑色っぽく成ります。その場合、鉄分の少ない「いす灰」を使うと、

    着色しません。

  ③ 釉を厚く掛けた場合

   ) 灰釉では、透明釉であっても、釉を厚く掛けると、乳濁が起る、傾向に有ります。

   ) 灰釉を、厚く掛けると、貫入が入り易く成ります。厚く掛ける程、大きな貫入と、成ります。    

 5) 各種灰の特徴

以下次回に続きます。

灰釉の注意点
     
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釉の話 9 (基礎釉 灰釉1)

2010-03-09 22:14:04 | 釉薬の調合と釉を掛ける
木の灰や、藁(わら)、籾殻(もみがら)などの、灰を使って作る釉を、灰釉(かいゆ、又は、はいゆ)

又は、灰立(はいだて)と言います。

当然、透明釉も作れますので、灰釉で基礎釉を、作る事が出来ます。

但し、天然の灰は、木、草の種類の差や、産地、季節によって、成分の変化が大きく、必ずしも、

理論通りには、いきません。もしも、以下の調合例を、試す際には、微調整が必要かも知れません。

1) 土灰透明釉を作る(土灰とは、雑木や、藁、草等を燃やした、灰の事です。)

  灰は、単味では熔けず、長石と反応して、初めて熔けます。それ故、長石と混合して、釉を作る事に、

  成ります。

  素地にも、長石は含まれています、直接素地に、灰を振り掛けた、だけでも、灰は熔けます。

    例、備前焼など、薪で焼成した場合、その灰が作品に掛かり、熔けて、独特の模様となります。

  調合例  ① 釜戸長石  70、 土灰  30  Al2O3:SiO2= 1:8.7

 (重量比)  ② 釜戸長石  80、 土灰  20

 ・ 釜戸(かまと)長石と、土灰で釉を造りますが、土灰が多い①の方が、熔ける温度は、低く成ります。

   調合例 ①のゼーゲル式は、以下の様に、表せます。

    (0.12 K2O+0.17 Na2O+0.15 MgO+0.75 CaO)・0.35 Al2O3 ・3.06 SiO2 と燐酸カルシウム1.5%

  調合例 ③ (重量比)

     ) 釜戸長石 100、 土灰 10  Al2O3:SiO2= 1:8.9

     ) 釜戸長石 100、 土灰 20  Al2O3:SiO2= 1:8.8

     ) 釜戸長石 100、 土灰 30  Al2O3:SiO2= 1:8.8

     ) 釜戸長石 100、 土灰 40  Al2O3:SiO2= 1:8.7

     ) 釜戸長石 100、 土灰 50  Al2O3:SiO2= 1:8.7

  ③の調合例は、釜戸長石(又は、釜戸石粉)100に対して、土灰を、10~50と増やした物です。

   Al2O3:SiO2= 1:8.9~8.7 と成っていて、全て透明釉に成る事を、表しています。

  ・ 即ち、この範囲以内で、調合すれば、透明釉を作る事が、出来ます。(1:8~12で透明に成る)

    土灰の量の差は、熔ける温度に表れ、量の多い程、熔け易く成ります。

 灰には、天然の灰と、合成の灰が有ります。当然、天然の灰の方が、成分変化が大きく、釉としても、

 変化に富み、一定しません。但し、その事が逆に、釉に面白さが、出る事にも成ります。

 2) 藁(わら)灰乳濁釉を作る

以下次回に続きます。

基礎釉 灰釉


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釉薬の話 8 (基礎釉3)

2010-03-08 21:36:59 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回に続き、ブリストル釉について、述べます。

4) ブリストル釉の調合例 の解説

  ③ 他の5種類を、ゼーゲル式で表すと、以下の様に、成ります。

    3)-①は RO ・ 0.572 Al2O3 ・ 3.413 SiO2 と成ります。 アルミナ:シリカ=1:5.97

      -②は RO ・ 0.532 Al2O3 ・ 2.607 SiO2     1: 4.90

      -③は RO ・ 0.536 Al2O3 ・ 3.124 SiO2     1: 5.82

      -④は RO ・ 0.398 Al2O3 ・ 1.668 SiO2    1: 4.19

      -⑤は RO ・ 0.312 Al2O3 ・ 3.120 SiO2    1: 10.0

      -⑥は RO ・ 0.792 Al2O3 ・ 5.048 SiO2     1: 6.37

  ④ 上記のデータから

    ) 透明釉に成るのは、3)ー⑤の、調合の場合のみです。

    ) 他の調合は、マット系に、なっています。

       この釉を、透明釉にするには、珪石(SiO2成分)を、増やす必要が有ります。

    ) このマット系の中で、一番熔け易い釉は、3)-④の調合で、一番熔け難い釉は、

       3)-⑥の調合です。上記調合例は、全体に、融点が低いです。石灰石や、亜鉛華又は、

       両方の分量を、減らして、温度を上昇させた方が、良いでしょう。    

      ・ Al2O3とSiO2nの値が、小さい時は、熔け易く、大きいと熔け難く成ります。

        但し、値が小さいと、貫入が入り易く、成ります。

  ⑤ 福島長石を、釜戸長石に換える。

    上記データは、長石に、福島長石を、使用して計算しましたが、余り良い結果が、出ませんでした。

    ) 釜戸長石は、福島長石より、アルミナ成分が、少なく、シリカ成分は多く成ります。

       又、アルカリ成分は、少なく成り、融点を上げます。

    ) 化学分析値を示すと、以下の様に成ります。(100g当り)

      ・ 福島: Al2O3が、0.182モル SiO2が、1.111モル アルカリが、0.164モル

      ・ 釜戸:       0.143モル      1.267モル         0.124モル

    ) 釜戸長石で計算し直すと、3)-③のゼーゲル式は、以下の様に成ります。

       RO : 0.546 Al2O3 : 4.375 SiO2 となります。

       アルミナ:アルカリ= 1:8.01となり、透明釉と成ると共に、融点も高くなりました。

    ) 同様に、3)-①、ー⑥の調合例も、透明釉に成るはずです。

 以上の事から、調合には、福島より、釜戸長石の方が、適している様に、思われます。

以上は、理論値です。当然原料の成分も、「ばらつき」が有り、窯の構造や、焼成温度などで、

調合通りでも、上手く行かないでしょう。その場合には、適宜、調合を変化して下さい。

次回は「灰釉」、灰立ての調合について、述べます。    

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釉薬の話 7 (基礎釉2)

2010-03-07 21:57:01 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回に続き、ブリストル釉について、述べます。

4) ブリストル釉の調合例 の解説

  前回、6種類の調合例を、紹介しました。この調合例について、解説したいと、思います。

 ① 透明釉、マット釉、乳濁釉のいずれであるかを、見極める。

   前に説明した様に、アルミナ(Al2O3):シリカ(SiO2)の比によって、どの様な釉に成るかが、

   決まります。透明釉は、アルミナ:シリカ= 1:8~12(モル)の場合で、アルミナが多いと、

   マット釉に、シリカが多いと、乳濁釉に成ります。

 ② 調合例を、モル数で書き換える

   )化学分析から、各原料100g当りの、含有量と、モル数は、以下の様に、表せられます。

     (出展:入門 やきものの科学 共立出版社)

 
              SiO2   Al2O3   Fe2O3   CaO   MgO   K2O    NaO  
    
  ・ 福島長石 %  66.74   18.57   0.18    0.24    -     0.42    3.48

       モル数   1.111   0.182                      0.111    0.056

  ・ 福島珪石 %  98.62    0.56   0.03    -     -     0.05    0.28
      
       モル数   1.643

  ・ 朝鮮カオリン%  45.82   37.27   0.58     0.60     0.25   0.54   0.46

       モル数   0.764   0.366           

  ・ 石灰石  %   0.40    0.2    0.22     55.05    0.04  0.05    0.20

       モル数                       0.983


  ) 以上のデータより

     (計算が続きますので、興味の無い方は、読み飛ばし、結論だけを、見てください。)

    3)-①の調合例は、長石の、SiO2は、100g当り1.111モルですから、61.0gでは、

      61.0/100*1.111=0.678モルと成ります。

      同様に、Al2O3は、61.0/100*0.182=0.111モルに成ります。

          KO+NaOは、61.0/100*(0.111+0.056)=0.102モルと成ります。

     ・ 珪石は11.0gで、SiO2は、11.0/100*1.643=0.181モルに成ります。

     ・ 朝鮮カオリンは14.0gで、SiO2は、14.0/100*0.764=0.107モル

              Al2O3は、14.0/100*0.366=0.051モル

     ・ 石灰石は6.0gで、CaOが、6.0/100*0.983=0.058モルです。

     ・ 亜鉛華は、1モルは、81.4gですので、10gでは、10/81.4=0.123モルです。

    以上まとめると、

     SiO2の合計は、(長石)0.678+(珪石)0.181+(カオリン)0.107=0.966モル

     Al2O3の合計は、(長石)0.111+(カオリン)0.051=0.162モル

     アルカリ成分は、(長石)0.102+(石灰石)0.058+(亜鉛華)0.123=0.283モルと成ります。

   ) 以上の事を、ゼーゲル式で、表すと、

      0.283 RO ・ 0.162 Al2O3 ・ 0.966 SiO2 と成りますが、ゼーゲル式は、ROを1としますので、

      全体に、1/0.283を乗じます。すると、3)-①の調合例では、以下の様に表せます。

      RO ・ 0.572 Al2O3 ・ 3.413 SiO2 と成ります。

  ③ 同様にして、他の5種類を、ゼーゲル式で表すと、以下の様に、成ります。

以下次回に続きます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釉薬の話 6 (基礎釉1)

2010-03-05 22:36:28 | 釉薬の調合と釉を掛ける
基礎釉とは、光沢の有る、良く熔けた、透明釉で、この釉に各種の金属を、添加し、色釉の基に成ったり、

他の釉の材料を加えて、マット釉や、乳濁釉などに、変化させうる、釉のことで、文字通り釉の基礎に成る

釉の事です。但し、基礎釉は、必ずしも、1種類でなく、より良い発色や、焼成温度の差などで、

2~3種類用意する、必要が有るかも知れません。

1) 石灰立と灰立

  前回述べた様に、「アルカリ」に石灰石を、使用する石灰立と、灰を使う灰立が有ります。

  ここでは、石灰立を中心に、述べて行きます。

2) ブリストル釉について、

   調合が容易で、焼成温度範囲も広く、安価な釉であり、且つ、綺麗な透明釉にもなり、マット釉や

   乳濁釉にも成る釉に、ブリストル釉が有ります。

 ① ブリストル釉は、亜鉛華(ZnO)、又は、マグネシヤ(MgO)、酸化バリウム(BaO)を含む釉です。

   そして鉛化合物は、使用しません。

 ② 安価な材料で、出来る

   釉の材料は、長石、カオリン、石灰石、珪石、亜鉛華、バリウム(BaO、BaCO3)で、安価で、

   容易に手に入る物、ばかりです。

 ③ 温度範囲

   SK-5a(1180℃)からSK-9(1280℃)の範囲で、焼成可能です。

   場合に拠っては、SK-3a(1140℃)位のものも、出来ます。

   又、焼成時間が、長くなっても、影響が少なく、焼成温度を、下げる事が出来ます。

 ④ マット釉や、乳濁釉にも適します。

   この釉は本来、マットや乳濁する釉で、色の付いた素地の、色を隠す為に、使われていました。

   それ故、マット釉や、乳濁釉に向くのは、当然です。亜鉛華を多く、混入すると、白く不透明な、

   釉に成ります。

 ⑤ 綺麗な光沢のある、透明釉に成る

   この釉が、十分熔ける温度で、熟成すると、透明釉に成ります。

   亜鉛華を5%程度、添加すると、光沢や、融解性を増し、貫入も入らず、熔融温度範囲を広げます。

 ⑥ 色釉が出来る

   ブリストル釉の特徴は、亜鉛華が、入っている事です。この亜鉛華が、陶磁器用の顔料と反応し、

   色釉(色ブリストル釉)を作ります。色釉に付いては、後日述べます。

以上の事から、基礎釉としての、有力な候補と成ります。

3) ブリストル釉の調合例 (単位は、gです。但し合計が100とは、成らない場合が有ります)

        ①     ②     ③     ④      ⑤     ⑥     

   長石   61.0  50.0   80.0    45.5   54.8   59.7  

   カオリン 14.0  18.0   ーーー   21.1   ---   13.8   

   石灰石   6.0   9.0   10.0    20.4   14.8     8.0  

   亜鉛華   8.0  10.0   10.0    10.0    6.7     6.5   

   珪石   11.0  13.0   ーーー   -ーー   23.7   12.0  

 以下次回に続きます。 

陶磁器の基礎釉


 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釉薬の話 5 (アルカリ類)

2010-03-04 22:23:09 | 釉薬の調合と釉を掛ける
ゼーゲル式の、「アルカリ類」について、述べます。

アルカリ類(R O)は、熔融剤として、働きます。個々の熔融剤は、以前「釉の熔融剤について」で、

述べましたので、参照して下さい。(カテゴリー参照)

ここでは、アルカリ類の、相互作用について、述べます。

 1) アルカリ類は、3種類以上を、使う事

   アルカリ単体でも、熔融剤として働きますが、数種類のアルカリを使うと、より効果的に成ります。

 2) 主にどの「アルカリ」を、使うかによって、釉の種類を分ける分類方法が、有ります。

  ① 石灰系釉 ② 石灰亜鉛釉 ③ バリウム釉 ④ マグネサイト釉等と、呼ばれています。

 3) ゼーゲル式の「R O 成分」は、以下の様に、表します。

   xKNaO+yCaO+zRO 但し、x y z は変数です。 x+y+z=1(モル)、KNaOは、KOとNaO成分です、

   zROが、CaOなら石灰釉、ZnOなら石灰亜鉛釉、BaOならバリウム釉、MgOならマグネサイト釉と、

   呼びます。

   式から解かる様に、CaO 成分は、ほとんどの釉に、多少なりとも、含まれている事です。

 4) 各釉の特徴

  ① 石灰系釉: 最も典型的釉で、長石、珪石、石灰石、カオリンで、調合されます。

    市販の石灰系透明釉が、代表的な釉です。

  ② 石灰亜鉛釉: 焼成温度範囲が広く、使い易い釉です。徐冷すると結晶が析出して、乳濁し易い。

    どちらかと、言うと、熔けかたも、昇温度と共に、ゆっくり熔けて、「サラット」せず、

    「ぽってり」とした、感じになります。

  ③ BaO(バリウム)釉: 石灰系より、溶け易く、透明感が出る。トルコブルー釉に適します。

     この釉は、他の釉に比して、ある温度より、急激に熔ける、傾向に有ります。

  ④ MgO(マグネシア)釉: 灰釉(かいゆ)の場合に多い、徐冷すると、乳濁し易い。

  これらの、「アルカリ」の差は、後で述べる、着色釉である、鉄釉、銅釉等に、影響を与えます。

 5) 灰釉 (かいゆ、はいぐすり)に付いて、

   木や稲などの、木草類を焼いた残りの、灰には、「アルカリ」成分が、多く含まれています。

   それ故、石灰石ではなく、各種の灰を使い、長石を混ぜて、釉を作る事は出来ます。と言うより、

   燃料の灰が熔けて、素地の長石と、反応し、ガラス質に成る事から、釉が発見発明され、

   発展した物だと、言えます。

  ① 灰釉の特徴は、灰の成分が、一定せず、焼成での、変化が大きい事です。

    同じ、灰であっても、天然の灰は、取れた場所、取れた時期、幹か、枝か、葉であるかに拠っても、

    差があり、品質が一定しません。

    逆に、この事が、窯変等の、思いも掛けない、良い製品が、出来る事にも成ります。

    それ故、灰釉を使う、陶芸作家の方も、多いです。

  ② 灰は、多種類のアルカリ成分を、含んでいます。

    アルカリ成分以外にも、鉄分や、マンガン、ポロニウム(P2O5)などの、金属を含む物も、多いです。

    鉄分の少ない灰は、「いす灰」で、マンガンの多い灰は、松灰などです。

  ③ 灰の種類に拠って、アルカリ成分が、異なります。

    木灰の珪酸は、30%程度ですが、稲などの禾本科の、植物の灰は、80%程度です。

    珪酸が多いと、乳濁し易く成ります。各灰には、特徴があり、その特質を考慮して、釉を作る

    必要が有ります。

  ④ 合成灰について。

    天然の灰が、品質不安定の為、釉にばらつきが出ます。それを嫌い、品質を一定にする為、

    各種類(土灰、松灰、藁灰など)の合成灰が、市販されています。

次回は、「基礎釉」について、述べる予定です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釉薬の話 4 (ゼーゲル式3)

2010-03-03 21:45:14 | 釉薬の調合と釉を掛ける
ゼーゲル式の話を、続けます。

3) 単位「モル」(グラム分子)について

  「モル」は、高校で化学を、学んだ人は、記憶の一部に、残っているかも知れません。

  一般には、馴染みのない単位です。化学の苦手の方は、少し解かり難いかも、知れません。
 
 ① 原子量

   物質の基である、元素は、その元素固有の、重さ(質量)を、持っています。

   この重さを、原子量といいます。

    例えば、酸素(O)は16、アルミニウム(Al)は27.0、シリカ(Si=ケイ素)は、28.1、

      ナトリウム(Na)は23.0、カルシウム(Ca)は、40.1等と成ります。

   これらは、元素周期律表に、表記されています。(インターネットからも、見つける事が出来ます。)

 ② 分子量

   元素は、単体で存在する事は、少なく、大部分は、他の物質との化合物です。

   この化合物を、分子と言い、各々の成分の、合計の重さを、分子量と言います。

   この分子量に、グラム(g)を付けた値を、「1モル」(1グラム分子)と、呼びます。

   例 Al2O3は、27.0*2+16.0*3=54+48=102 Al2O3 の1モルは、102gです。

     SiO2は、28.1+16*2=28.1+32=60.1  SiO2 の1モルは、60.1gです。

   ) 面倒な事は、Al2O3 や、SiO2 は、長石やカオリン、珪石等の、釉の原料に、含まれて

      いますが、その他に、色々な物質が、入っている為、必要な原料は、化学分析値から、

      含有量を、計算する必要が有る、事です。詳しい事は、次で述べます。

4) 他の成分は、無関係

   釉で使われる物質は、「アルカリ成分」「アルミナ成分」「シリカ成分」以外に、「水分」や諸々の、

   不純物を、含んでいます。「水分」は、重さに影響しますので、計算から差し引く、必要が有りますが、

   他の不純物は、有っても無くても、釉にとって、無関係ですので、無視します。

5) 釉の原料の成分

  ① 釉の原料である、長石や、珪石、カオリン等を、実際に、この式で利用するには、どんな成分が、

   どの位含まれているかを、知る必要が有ります。

  ② 長石と言っても、種類によって、その含有量に、差が有ります。

   カリ長石(正長石)、ソーダ長石、灰長石に分類され、又、産地によっても、差が有ります。

   福島長石、釜戸長石、平津長石、三雲長石、志野長石などが有り、その性質にも、差が有ります。

   又、石粉(いしこ)又は「さば土」と呼ばれる、長石の半分解物も、各地で使われています。

   三河石粉、波佐見石、釜戸石粉、千倉石などが、有ります。

  ・ 長石には、アルミナ、シリカ以外に、鉄(FeO)、CaO、MgO、K2O、NaO 等が、含まれています。

    それ故、含まれている、アルカリ類も、計算の対象にまります。 

  ③ どの原料を使うかによって、釉の熔け具合などに、影響が有ります。

   なるべく、使う原料は、固定して、調合しないと、収拾が、付かなく成りますので、注意が必要です。

  ④ 以上の様に、釉の調合には、知るべき事(知識)や、調べる事で、手間暇が、掛かります。

   それ故、どの様な、釉を造りたいか、目的をしっかり、持たないと、完成まで苦労します。
   

以下次回に続きます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釉薬の話 3 (ゼーゲル式2)

2010-03-02 21:36:53 | 釉薬の調合と釉を掛ける
ゼーゲル式の、話を続けます。

2) この式から、解かる事

 ② 熔ける温度が、判明する。

    n : m の比を、一定にし、R O(アルカリ成分)に対して、量を増やすと、熔け難く成ります。

    逆に、n : m の比を一定にし、R Oを、増やせば、熔ける温度は、下ります。

   ) この性質を利用した物に、ゼーゲルコーン(錐)が有ります。

      窯の温度を、測定するのに、用いますが、逆に、コーンの番号から、R O : Al2O3 : SiO2 の

      配合の数値がわかります。

    ・  例えば、SK-7(1230℃)のコーンは、0.7(Ca)+0.3(K) : 0.7Al2O3 ::7.0SiO2

           SKー8(1250℃)のコーンは、0.7(Ca)+0.3(K) : 0.8Al2O3 : 8.0SiO2

        で、表せます。これらの数値は、釉の本などに、掲載されている場合も有りますので、

        見つけて下さい。

    ・ 但し、釉として使用する場合には、この番号の配合より、100℃位低い値の組成が、

      適当です。

      SK-7で、焼成したい場合ならば、SK-3a(1140℃)、SK-8では、SK-4a(1160℃)で、

      調合します。

      SK-3a は、MgO(0.067)+CaO(0.630)+Na2O(0.059)+K2O(0.244)+B2O3(硼酸、0.119)

      と、 Al2O3(0.667)、SiO2(6.083)と、成ります。

      SK-4a は、各々、(0.048)+(0.649)+(0.043)+(0.260)+(0.086)と、(0.676)、(6.339)と

      成ります。なぜなら、コーンが表示す事は、完全に溶ける[液体になる]事ではなく、

      コーンの頭が、完全に垂れた[軟化した]状態を表します。

   ) 流れ易い釉を作る

      流れ易い釉を、作るには、釉に流動性を、持たせる原料を、入れる方法と、熔ける温度を、

      低くして、流動性を、持たせる方法が、有ります。

      前者に付いては、後日述べる予定です。後者に対しては、熔ける温度を下げる様に調合し、

      やや高めの温度で、焼成すると、釉が熔け過ぎて、流れる様に成ります。

      但し、温度を高くし過ぎて、釉が「煮え」ない様に、注意して下さい。

3) 単位「モル」(グラム分子)について

以下次回に続きます。

ゼーゲル式
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釉薬の話 2 (ゼーゲル式1)

2010-03-01 21:43:20 | 釉薬の調合と釉を掛ける
ゼーゲル(ジェーゲル)式は、釉の大まかな、性質を、教えてくれます。

従来、釉は経験に基とづき、何回もテストを繰り返し、調度良い、釉の調合を、見つけ出すと言う、

試行錯誤の末に、完成させていました。

この試行錯誤の替わりに、科学的、学問的な方法で、説明した人が、ドイツの「ゼーゲル」です。

彼は、釉の主成分の、「アルミナ」と「シリカ」それに、熔融剤としての、「アルカリ類」の組み合わせで、

釉の性質や、熔ける温度を、表現する、数式を導き出します。それが「ゼーゲル式」と呼ばれる物です。

1) ゼーゲル式は、以下の数式で、表現されます。

   R O ・ n Al2 O3 ・ m Si O2  

 ① この式の意味

   R O 1モルに対して、Al2 O3が nモル、Si O2が mモルの組み合わせです。

   尚、n、mは、変数です。 「モル」の単位については、後で述べます。

  ) R O とは、「アルカリ」成分(塩基成分)の事で、陶芸に、使われるのは、リチュム(Li)、

     ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、

     バリウム(Ba)の7種類ですが、 金属である、亜鉛(Zn)や、鉛(Pb)も、同じ様な働きが、

     有りますので、この仲間に入れてます。但し、鉛は有毒ですので、使用には、注意が必要です。

  ) これらの物質は、実際には、酸化物として存在していて、それぞれ、Li2O、Na2O、K2O、MgO、

     CaO、SrO、BaO、ZnO(亜鉛華)、PbO 及び、この化合物と成ります。

     働きとしては、熔融剤として、「アルミナ」と共に、「シリカ」を、熔け易くします。

  ) Al2 O3とは、「アルミナ」成分で、Si O2は、「シリカ」成分の事です。

     「シリカ」(ケイ素=シリコン)は地球上で、一番多く存在する物質です、単体では、

      1723℃で、溶けますが、 熔融剤の働きで、1200℃~1300℃程度で熔けます。 

     「アルミナ成分」は、主に長石から、「シリカ成分」は、 主に珪石から、取ります。

 2) この式から、解かる事

  ① 釉の状態が、透明釉、マット釉、乳濁釉の、どれであるかが、判明します。

    変数 n : m の比(アルミナ:シリカ)が1:8~12 で透明釉に成ります。

       n が大きくなり、m が小さく成ると、マット(艶消し)釉になり、逆に、n が小さく、

       m が大きくなりと、乳濁釉に成ります。

    ・ 透明、マット、乳濁釉の、詳細は、後日述べたいと、思います。

  ② 熔ける温度が、判明します。

   
以下次回に続きます。

  ゼーゲル式    
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする