わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉薬の話 1 (はじめに)

2010-02-27 21:47:06 | 釉薬の調合と釉を掛ける
釉薬については、以前にも、お話していますので、重複する部分も、有ると思いますが、御了承ください。

釉薬(又は、単に釉と言う)は、粘土で作品を造ると、同様に、大切な事項です。

作品を見る時、最初に目に入るのは、作品の大きさは、勿論ですが、それ以上に、色(色彩、色使い)や、

景色と言われる物です。この良し悪しで、「作品が評価される」と言っても、過言では無い位です。

・ 備前焼や信楽焼きでは、釉を掛けない、方法が有ります。

  備前や信楽焼きは、薪で焼成する事により、色、艶、緋色、胡麻、牡丹餅など、釉では出せない、

  表情を造りだす事が、出来ます。

  それ故、大変魅力的な、焼き物です。しかし、一般には、釉を掛けて、焼成します。

・ 釉に付いて、知りたい事も、多いと思いますが、調合の仕方、窯詰めの仕方、窯の状態(構造、

  壁の厚さ)、燃料の差(薪、ガス、電気)、焼成の仕方(酸化、還元)などで、 同じ釉でも、

 条件によって、大きく変化します。

・ 釉の調合の仕方も、企業秘密や、個人秘密(一子相伝)等で、技術を公表している事は、少ないです。

  たとえ、公表された、調合例によっても、同じ様に行きません。

・ 陶芸材料店(釉薬専門店)で、多種多様な、焼成温度、色、艶(光沢)の釉が、市販されています。

  わざわざ、自分で調合しなくても、安定した、比較的安価な釉を、容易に購入する事が、出来ます。

  釉の知識が、少しあれば、この市販されている、釉を自分なりの、釉に変える事も、可能です。

  例えば、焼成温度を下げる、色釉を作る、マット釉、乳濁釉を作る、釉に流動性を持たせる、

  逆に貫入がある釉を造る事も、出来る様に成ります。

・ 但し、プロとして作品を、販売する人や、公募展の様なコンクールに、出品する場合には、その人

  独自(オリジナル)の釉が、必要に成ります。

  又、過去の作品に、使われている釉で、今だ再現されていない、釉もあり、再現に挑戦している方も

  多いです。

・ どうしても、「オリジナル」な釉を、造りたい方は、基礎釉を造り、そこに、色々な金属、アルカリ類や、

  長石、珪石などの、釉の原料と成る、物質を配合して、目的とする釉を造る事に、なります。

  但し、目的の釉を、開発するまでは、かなりの苦労や、手間が必要になります。

・ 以上の事柄を、順次述べる予定ですが、ご希望に叶う物か、不明です。参考に成れば、幸いです。

 尚、今後記述する物は、必ずしも全てが、私の経験に基ずく物では、有りません。

 文献より、孫引きした記事も、多いです。念の為、お断りして置きます。


次回は、焼成温度や、釉の基礎である、ゼーゲル(ジェーゲル)式について、述べたいと、思います。
  
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施釉薬後の作業2(指跡、アルミナを塗る)

2009-06-06 21:33:31 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回の続を述べます。

3) 指跡の処置

   一般に、輪高台の場合、高台を持って、施釉する事が多いです。

   持った高台部分に、釉が掛からない、所謂指跡が、残ります。

   特に、「碁笥底高台」の場合、指跡が付き易いです。

   (釉を塗る際、工夫次第で、指跡を残さないで塗る方法も、出来ます。)

 ① 指跡をあえて残す場合

   抹茶茶碗などに多いのですが、あえて指跡を残し、景色として珍重する場合が有ります。

   (あえて残す場合には、高台ではなく、茶碗の腰を、3本の指で持つのが一般的です。)

   同様に、食器や、花瓶など、あえて指跡を残し、景色として用いても、問題有りません。

   (指跡が、3箇所で有る事は、景色的にも、バランスが取り易いです。)

 ② 指跡を消す

   一般には、指跡を消します。指跡は、指の周囲に、釉が厚く盛り上がります。

   そのまま、筆などで補修すると、その盛り上がった所が、目立ちます。

   それ故、この盛り上がりを、滑らかにしてから、補修します。

   尚 筆で補修する(塗る)と、釉が薄くなり勝ちです、濃い目の釉を使い、置いて行く様にます。

   又、指跡部分が、濡れている早い段階で、指に着けた釉で、補修すると、割合

   上手くいきます。

 ③ 指跡を残さない塗り方

  ) 霧吹きや、ガン吹きなどで、施釉すれば、作品を持つ事無く、指跡は付きません。

  ) 半分づつ施釉する。

    作品を持った指に、釉が掛からない様に、半分掛けた後、掛けた釉が乾いたら、

   その部分を持ち、残りの部分に、施釉します。

  ) 釉で濡らした手で、作品を持つ

    持つ手が、綺麗だと、その部分に、釉薬が載らず、指跡と成ります。

    予め、釉に指先を釉で濡らし、高台を持てば、手に付いた釉が、作品にしみ込みます。

    その結果、指跡が消えたり、薄く成たりします。

4) 作品に、アルミナを塗る

   作品と棚板が、接着しない様に、又 蓋物など、作品同士がくっつかない様に、アルミナを

   塗ります。

  ① 作品が、棚板に接する部分に、水に溶いたアルミナ(水酸化アルミナ、酸化アルミナ)を

   筆や、漬け(浸し)て塗ります。

  ② 蓋物(急須など)は、本体と一体にして、焼成するのが、基本です。

   別々に焼成した場合、一方が熱により、変形すると、蓋が合わなくなる危険性があるからです。

   一体で焼成すれば、たとえ器が変形しても、その合わせた位置では、必ず蓋が出来ます。

   但し、一体で焼成した場合、蓋と本体が接する部分(本体と蓋両方)には、釉が塗れません。

   この部分に、アルミナを塗る事を、忘れない様にします。

   忘れると、蓋が取れなくなってしまう事が、多いです。

 ・ 尚 本体の蓋受けに、釉を掛けたい時は、別焼きと成ります。耐火度の高い土を使うか、

    蓋受け周辺を、やや肉厚に作り、変形を起さない様にします、蓋受けに釉を掛ける場合

    釉の厚みで、蓋が出来なく成る事を防ぐために、若干蓋との隙間を多く取ります。


以上で、 釉掛けの項を、終わります。

次回から、窯詰めについて、お話したいと思います。

陶芸の釉薬の掛け方 

指跡 アルミナ
   

   
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施釉薬後の作業1(釉の補修、釉を剥がす)

2009-06-05 21:37:09 | 釉薬の調合と釉を掛ける
作品に釉薬を掛けた後、窯詰め前に、幾つかの確認事項と、幾つかの必要な作業が有ります。

1) 釉の塗り残し、釉の剥がれ、が無いかを、確認します。

 ① 釉薬の塗り残しは、注意していても、見逃す事が有ります。

   特に、見えない裏側の陰の部分や、細かい凹凸部分などで、気泡が残り、釉が、

   掛かっていない場合が有ります。(ピンホール)

  (気泡の部分は、指や、硬めの筆で、周囲を擦り、粉を出し、その粉を、掛かって居ない部分に

   摺り込むように、入れます。)  

 ② 釉は、素焼の作品の上に、載っているだけで、剥がれ易いです。

   作品同士が、ぶつかる場合は勿論、それ以外でも、剥がれる要素は、沢山有ります。

   特に厚く塗ると、触っただけで、剥がれる場合も、有りますので、取り扱いに注意。

 ③ 剥がれや、塗り残しは、筆(刷毛)などで、補修します。

   注意する事は、当然ですが、剥がれた(塗り残した)釉と、同じ釉を塗る事です。

   色々な作品に、施釉すると、後から補修する際、どの釉を使用したか、解からなくなってしまいます。

   生の状態の、釉は、同じような色をした物が、多数有ります。

   掛けた釉が何であるか、判断に困る場合も、多いです。

  ・ それ故、施釉後、どの釉を掛けたを、記した紙切れなどを、入れて置く事を、勧めます。

   (窯詰めまでは、そのまま使用します。窯詰めの際、取り除きます。)

2) 施釉出来ない部分の処置

 ① 作品は、棚板の上に載せて、焼成します。釉は、高温に成ると、熔けてガラス質に成ります。

  それ故、棚板に接する部分は、釉を掛けないか、剥がして置く、必要が有ります。

  これを怠ると、最悪、作品を壊さなければ、成らなく場合も有ります。

  (作品より、棚板の方が、高価であり、大切な物だからです。)

 ② 釉は、種類によって、流れ易い(流動性の有る)釉と、流れ難い釉が有ります。

   流れ難い釉は、底(高台)より、1~2mm程度、施釉しない部分を残します。

   流れ易い釉は、その流動性に応じて、3~5mm程度、残さなければ、成りません。

   釉は、ブラシなどで、簡単に剥がす事が、出来ます。

 尚 施釉する釉が、どの位流動性があるかは、前もって知って置かなければ、成りません。

   更に、釉単体では、流動性が少ないのに、他の釉を重ね掛けると、流動性が増す釉も有ります。

   それ故、釉の性質を、十分理解して置かなければ、成りません。

   (特に、新しい釉を作ったり、購入した場合には、試し焼きをしなければ成りません。)

 ③ 粘土は、本焼き(高温になる)すると、若干軟らかく成ります。

   その為、棚板に接する面積が増えます。即ち、底が広がり、②で述べた寸法では、不足する

   事が有ります。特に重量の有る作品や、高台の無い「ベタ底」の場合が危険です。

以下 次回に続来ます。

陶芸の釉薬の掛け方 



釉の補正 釉を剥がす
   
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釉薬を掛ける5(多色塗り3)

2009-06-03 21:46:38 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回(多色塗り)の続を述べます。

4) 撥水剤を使う。

   撥水剤が、一般的でなかった時代には、蝋抜(ろうぬき)と言って、熔かした蝋を使いましたが、

   今では、撥水剤を使うのが、普通です。

   撥水剤を塗った所は、釉を弾き、釉が掛かりません。

   撥水剤を素焼した作品に、筆などで塗ると、塗った所は素地のままと成ります。

   釉薬を掛けた上に、撥水剤を使用すると、その部分だけ、重ね掛けは、出来ません。

   撥水剤使用上の注意点

  ① 一度撥水剤の掛かった所は、紙やすりでも、取れません。

   (素焼するしか方法は有りません。)

   それ故、余分な所には、絶対に付けない事です。又「タップリ」筆に液を含ませると、

   にじみ易く、周囲に広がりますから、注意してください。

   若干塗り不足の方が、失敗は少ないです。

  ② 使った筆は、水洗いだけでは、液が落ちません。石鹸液で、洗ってください。

   (水を弾く物は、水だけでは、洗えません。)

以上、多色の釉薬を、使う方法を述べましたが、かなり苦労する事と、思います。


以下で、釉でなく、他の方法で、色を塗り分ける方法を、述べます。

 多色塗りは、意外と手間暇が係ります。

  釉薬で処理するのでは無く、他の方法を選んだ方が、良い場合が多いです。

  勿論、釉薬と他の方法とでは、作品の質感は、違います。好みの方法を選んで下さい。

 ① 色土を使う。 作品を作る際、土に練り込み用顔料を混ぜ、必要な色土を作り、作陶します。

   下絵付け用と、兼用の顔料又は、練り込み用の、顔料を使います。混入する割合は、3~10%

   程度で、色の濃さを調節します。

   細かい部分に、多数の色を付けるには、適しています。

   特に「練り上げ技法」に多用されています。

 ② 化粧土を使う。 作品表面に、多種類の、化粧土で、絵柄を付ける。

   上記練り込み用の顔料を、素地と同じ土に、混ぜ水を加えて、軟らかくし、筆などで、

   絵の具の様に、好みの場所に塗ります。(各色の化粧土が、市販されています)

   釉は、透明釉が一般的ですが、これに準じた釉を薄めにし、施釉しても、色が出ます。

 ③ 絵付けを施す。 下絵付けや、上絵付けで、多色の絵柄を付ける。

   絵付け用の、絵の具には、下絵付け用と、上絵付け用とが、有ります。

   製品仕様が、違いますので、共用できません。

陶芸の釉薬の掛け方 

釉を掛ける 多色塗り



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釉薬を掛ける4(多色塗り2)

2009-06-02 21:55:45 | 釉薬の調合と釉を掛ける
一つの作品に、3色(種類)以上の釉薬を掛ける場合、その掛け分け方によっては、

かなり、工夫が要ります。

単に、下から順に、重ね合わせて、釉薬を掛ける分には、さほど問題ありませんが、好みの位置に、

釉薬を掛けていく場合には、以下の方法が有ります。

1) 筆(刷毛)で塗る方法(この方法が、一般的です。)

 注意点は、

 ① 「塗りむら」が出易い事です。

   濃度が部分的に違い、均等な濃さに、中々塗れません。

   原因は、素地が急速に釉の水分を吸い込み、釉が伸び無いため、度々筆に釉を含ませ、

   継ぎ足して、塗る必要が有るからです。

   糊(CMCなど)を入れ、釉が伸びる様にするか、釉を若干薄くし、数度塗り重ねます。

 ② 筆塗りは、全般的に、濃度が薄くなり易いです。

   筆は引いて使わず、置いて行く様にして塗ると、濃く塗れます。

   その際、釉薬の濃度を、若干濃度します。 (①で述べた事とは、調和させて下さい。)

2) スプレーで掛掛ける

  釉薬を霧状にして、必要な位置のみに、掛ける方法で、手動のブラシング(網とブラシの組)や、

  霧吹き、コンプレサーなどを使い「ガン吹き」し、施釉薬します。

 注意点、

 ① 「マスキング」が必要に成ります。

    必要な位置のみ、施釉する為には、それ以外は、釉が掛から無い様に、します。

    ガムテープを貼ったり、陶画のり(後で述べます)を使用したり、その他の方法で、

    作品を覆い隠します。「マスキング」も意外と大変な、作業と成ります。

    市販の「マスキングテープ」は、貼り付かない為、ほとんど、役に立ちません。

 ② コンプレサーなどを使う場合、霧状の釉を吸込まない様に、屋外か、それなりの設備の有る所で、

  行なってください。又霧で周囲が汚れ易いです。

3) 陶画のり(ラテックス)を使う

  素焼した作品の上に、筆で陶画のりを塗ります。「のり」を塗った所は、釉が掛かっても、

  「のり」を剥がす事により、釉を取り除く事が、出来ます。

  使い方は、「のり」を塗ると、直ぐに乾燥し、透明に成りますので、施釉する事が出来ます。

  施釉後は、針などで、乾いた「のり」を剥がします。

  剥がした部分に、更に施釉します。(後から塗る部分は、筆で塗る事が、多いです。)

 注意点

  ① 筆が傷みやすいので、「のり」を塗ったら、直ぐに、石鹸などで、水洗いして下さい。

   そのままにして置くと、筆は「のり」で固まり、使えなく成ります。

  ② 「陶画のり」の容器は、密封し、容器の中で、固まるのを、防ぎます。

以下 次回に続きます。


陶芸の釉薬の掛け方 

釉を掛ける 多色塗り



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釉薬を掛ける3(多色塗り1)

2009-05-30 23:24:05 | 釉薬の調合と釉を掛ける
釉薬を掛ける際、作品全体を1色で塗るのが、一番簡単な方法です。

しかし、1色では無く、2色3色と、釉薬の数を増やしたい場合、どの様に色分けしたいかによって、

その掛け方に、工夫が必要になります。

1) 2色を掛ける

 ① 別々の部分に、2色を掛ける

   容器の内、外の色を変える場合や、作品の片側と、反対側の色を変える、作品の上下で、

   色を変えるなどの場合です。

  注意する事は、

 ) 両釉薬とも、同じ性質の釉薬を使います。酸化なら酸化、還元なら還元釉を使います。

 ) 釉薬と釉薬の境は、残さない様にします。塗り残すと、その部分が、素地のままと成ります。

 ) 境を残さないと言う事は、その部分が、重ね塗りと成る事に成ります。

   (勿論、重ね塗りしないで、境が無く塗る事も可能ですが、かなり難しい作業と成ります。)

    釉薬は一般に混ぜては使いません。混ぜると、予想外の色に成り易いからです。

   それ故、重ね合わせた部分の色が、どう発色するか、予め確かめて置きます。

   又 どちらを後(上)に塗るかによっても、発色状態は変わります。

 ② 2色を重ね塗りする

   1色で全体を塗った後、他の釉薬をその上に、部分的に掛ける。

  注意する事は、

  ) 釉薬が部分的に、二重に掛かり、厚くなる事です。

    厚く掛かる事により、釉が流れ易くなったり、釉が縮(ちじれ)たりします。

    それ故、一方の釉薬の濃度を、調整(薄く)する必要が有る場合も、あります。

  )  同じ2色を塗る場合でも、どちらを下に塗るかによって、効果はかなり異なります。

  ) ①ー)で述べた様に、重ね合わさった部分の色は、予想外の発色を起し易いです。

    前もって、確かめて置く必要が有ります。

 ③ 2色を使う場合、何処で区切るか、どの様に区切るかも、重要な問題です。

  ) 何処で区切るか(境界は何処か)

   即ち、器の内外で色を変える場合、縁は内側の色なのか、外側の色なのかを、決めるます。

   外側の色とした場合、その外の色が、器の中に、少し入り込んで良いか、悪かによって、

   釉薬の掛け方が変わります。

  ・ 例 作品を器の内側を塗ってから、器を逆さに持って(又は上向きで)、他の釉薬に

     漬け(浸し)掛けする。

  ) どの様に区切るか

    境目の線が、幾何学的(直線、円弧、円など)にするか、適当(ラフ)で良いのかによって、

    工程(手間)に大きな差が出ます。


実際の方法に付いては、次回に述べたいと思います。

陶芸の釉薬の掛け方 

釉を掛ける 多色塗り


    

     
   
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釉薬を掛ける2(釉薬の量、容器)

2009-05-29 22:59:07 | 釉薬の調合と釉を掛ける
釉薬を掛ける際、苦労する事は、作品の大きさに合う、釉薬の量と、容器の事です。

釉薬は粉末で、保管出来ますので、この状態では、さほど問題には成りませんが、一度水に溶かすと、

釉薬の種類が少ない時には、多量の釉薬を、作り置き出来ますが、多種の釉薬を使用する場合には、

少量でないと、釉薬を置く場所に苦労します。

勿論、作業場所が、十分広い所でしたら、問題有りませんが、20種類以上に成ると、どうしても、

置き場所に苦労します。(釉薬の種類は、段々増える傾向に有ります。)

又、1ℓ入りの容器で、保管していても、いざ使用する段に成ると、釉薬が沈殿し、撹拌に手間取り、

中々濃度が、一定しません。

釉薬はなるべく、手が入る口の広い容器に、保管した方が、使い勝手が良いです。

又 釉薬が少なくて済む、掛け方(流し掛け、吹き掛けなど)を選択します。

尚、釉薬を掛ける方法は、当ブログ(施釉の仕方、2008-05-15,-16)を参照して下さい。


次に、釉薬を掛ける際の、容器の問題で苦労する事です。

釉薬を掛ける際、漬け掛けや、流し掛けのでは、作品に合った大きさの容器が必要です。

1) 流し掛けでは、十分大きい、直径40cm以上の、盥(タライ)などを、用意すれば、

 大体間にあいます。(特に大皿などには、大きな容器が、必要に成ります。)

 但し、流し掛けでは、どうしても、釉薬の濃淡が出易いです。これを避けたいのなら、

 漬け掛けと成ります。

漬け掛け(浸し掛け)の場合

2) 細長い(背の高い)作品では、細長い容器が必要です。

  なるべく、作品と同じ様な形で、一回り大きい物が適しますが、万能の容器は、中々用意できません。

  この様な場合には、横に寝かせて、漬け掛けにします。

  (但し、上下に色分けしたい場合には、縦長の容器が、必要に成ります。)

3) 意外に苦労するのは、不定形の作品や、取っ手の付いた作品です。

  本の一寸の所が、容器に引っかかったりして、上手に釉薬が掛けられない場合が、多いものです。

4) 更に、作品のどこを持って、釉薬を掛けるか、と言う問題が有ります。

  (指跡の問題も有りますが、ここでは、それ以外の事です)

  作品の縁を持って、漬ける掛けする場合には、十分指が入るスペースも、必要です。

結論

1) 釉薬を置く場所が狭い場合、釉薬の種類はなるべく増やさない事です。

 又、釉薬の種類が多いと、どの釉薬も良く焼き上げる為に、窯焚き(特に窯詰め)で苦労します。

2) 作品の形によっては、希望する方法で、施釉出来ない事も有ります。

  どうしても、希望の方法で、したいのなら、予め容器や、釉薬の量を用意して置かなければ、

  成りません。

  市販されている、プラスチックの容器で十分ですが、粘土で自作する事をお勧めします。

3) 施釉の仕方によって、作品の出来上がり方(色)も、大きく変化します。

  それ故、最初の予定通りに、施釉するためにも、行き当たり、ばったりでは無く、

  十分準備して置かなければ、成りません。

陶芸の釉薬の掛け方 

釉薬の量 釉薬の容器

  
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釉薬を掛ける1(施釉前の作業)

2009-05-16 22:21:51 | 釉薬の調合と釉を掛ける
素焼が終わった作品は、次に釉薬を掛けます。

以下の説明は、以前お話した事と、重複する場合が、多いですが、ご了承下さい。

釉薬を掛ける前に、する作業として、

1) 素焼の結果、「ひび」や、壊れが無いかを、確認する。

   即ち、施釉出来る作品と、施釉しない方が良い作品を、選別します。

 ① 基本的には、「ひび」の入った作品は、この段階で、破棄するのが、正解ですが、

   破棄できない事情の有る作品は、補修する事に成ります。

 ② 補修の仕方

  ) 陶芸用接着剤を使う。(市販されています。)

    但し、万能な接着剤は、有りません。特に「ひび」の入った作品には不向きです。

    逆に。完全に、二つに割れた作品の方が、接着面積(糊しろ)が広く、成功し易いです。

  ) 「ひび」の入った部分に、同じ土で作った、素焼の粉(シャモット)に糊を混ぜ、

    埋め込み補修します。
  
  ) 割れた作品でも、そのままで自立し、移動しない場合には、釉薬を塗る事で、補修できます。

  ) 補修で注意する事は、接着した部品が、本焼き中に、移動してしまう事です。

    移動した部品は、変な位置に、しっかり固着し、処置無しと成ります。

    特に、ぶら下がる部品や、横方向に付ける部品は、動き易いです。

  Ⅴ) 素焼時に見つけた、「ひび」は本焼きで、確実に広がります。

    上記補修しても、上手く行かない場合、本焼きで傷を広げた後、再度補修、施釉し、

    本焼きすれば、かなりの程度、目立たなく成ります。

2) 作品に付いた、「ホコリ」を落す。

   素焼後直ぐに、施釉する場合は、ほとんど問題有りませんが、長い間放置してあると、

   必ず「ホコリ」が付きます。

   この「ホコリ」が、釉薬を弾く事になり、「釉ハゲ」の原因に成ります。

 ① 「ホコリ」を取り除く方法

  ) 「はたき」などを掛けて、取り除く。

  ) 強く絞った「スポンジ」で、軽く拭き取る。

   (強く拭くと、反って「ホコリ」を、作品に、なすり付ける事に成ります。)

    この場合、直ぐに、施釉出来ます。

  ) やや強めの水流で、全体を洗う。洗った後、乾燥させてから施釉します。

    但し、短時間で終わらせます。時間が掛かると、作品が水を吸い、施釉までに時間が掛かります。

3) 異物の除去や、小さな傷を消します。

 ① 「削りカス」などが、作品に付着している場合も、多いです。

  作品表面を、手で撫ぜ、異物を感じなければ、問題有りません。

  特に、湯呑みや、ご飯茶碗のように、唇に当る部分は、丁寧に撫ぜて下さい。

  但し、作品の内側に、異物が有り、手が届かない場合、針(剣先)や、細い棒(ひご等)で、

  掻き出します。

 ② 作品表面の、浅い傷(小さい傷)は、「紙やすり」や「布やすり」で、削りとります。

   但し、」削りカス」は、上記「ホコリ」と、同じ作用が有りますので、2)と同じ作業が必要です。

以下次回に続きます。
陶芸の釉薬の掛け方 

施釉 施釉準備
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釉薬の調合 (SK-8の釉薬を作る2)

2008-12-21 21:58:35 | 釉薬の調合と釉を掛ける
前回に引き続き SK-8(1250℃)の、釉薬(石灰系透明釉)の調合の、話を進めます。

 前回のおさらいです。

 SK-8の釉薬を作るには、ジェーゲルコーンのSk-2a(1120℃)の番号の組成で、作れば良い、

 事を述べました。

 そのジェーゲル式は、以下の様に表示され、福島長石、福島珪石、朝鮮カオリン及び石灰石から

 調合する事にしました。

    ・ 1R O の成分は簡単にするため、CaO = 0.6   K2O、Na2O = 0.4(モル) とします。

    ・ 即ち 1R O ・ 0.652 Al2O3 ・ 5.687 SiO2 と成ります。 (単位はモル)


  今日の本題に入ります。 (数字に付いては、前回の表を参照して下さい)

 ① K2O と Na2O の0.4 モルを福島長石から、求めます。その重量は

   0.4 / 0.167(K2O + Na2O = 0.111 + 0.056 モル)* 100 = 239.5 g

 ② この中には、Al2O3 と SiO2 が以下のモル数で、含まれています。

    Al2O3 は (239.5 * 0.182) / 100 = 0.436 モル

    SiO2 は  (239.5 * 1.111) / 100 = 2.661 モル

 ③ 0.6 モルの CaO は、石灰石から採り、その重量は

    (0.6 / 0.983) * 100 = 61.0 g です。

 ④ 必要な Al3O2 のモル数は、0.652 で、0.652 - 0.436(長石分) = 0.216 不足です。

   この不足分を、朝鮮カオリンから、採ります。

   0.216 / 0.366 * 100 = 59.0 g

   この中に含まれる SiO2 のモル数は、(59.0 *0.767) / 100 = 0.453モルです。

 ⑤ SiO2に対しての、不足分は、5.687 -( 2.661 + 0.453) = 2.573 モルで、

    福島珪石から採ります。

    (2.573 / 1.643) * 100 = 156.6 g

 ⑥ 以上の計算結果から、Sk-8 の調合は次の様に成ります。

   福島長石   = 239.5g

   福島珪石   = 156. 6g

   朝鮮カオリン =  59.0g

   石灰石    =  61.0g
   
  単位をgに表記していますが、割合ですので、1/10や、1/100の少量で調合し

  テスト焼きをて下さい。

 尚 何度も言いますが、上記データは、理論値です。

   窯の状態、上昇温度、焼成時間、燃料などの差によって、実際には、溶け不足や、

   溶け過ぎなどが、起こる恐れが有ります。その際には、上記データの割合を変えたり、

   溶媒に成る他の R O 成分を加える等して調整してください。


調整については、以前にも記しましたが、再度書いて置きます。

 ) R O 成分に Mg O 、Ba O、Fe2O3 などを加えると、融点は下がる。

 ) ZnO (亜鉛華)などを入れると、融点は下がる。

 Ⅲ) Al2O3、SiO2 を少なくすると、融点は下がる。

   などです。

陶芸釉薬調合 
   
   
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釉薬の調合 (SK-8の釉薬を作る1)

2008-12-20 21:45:17 | 釉薬の調合と釉を掛ける
、ジェーゲル(ゼーゲル)式を基にした、釉薬の例として、Sk-8(1250℃)の釉薬を調合します。

 釉薬としては、ジェーゲルコーンのSK-8よりも、5番少ない番号Sk-3a(1140℃)を使う様にと、

 前回まで述べて来ました。

 ・ 但し、ジェーゲルコーンは、1時間当たり100℃の割合で、温度上昇させ、その温度で、

   コーンが軟らかく成り、頭が床に着くと言う事を意味しています。

 ・ 即ち、Sk-8(1250℃)は12時間30分の焼成の結果です。

 上昇温度は、窯の大きさ、作品の量、燃料の違い、粘土の違い、その他の条件によって、

 窯毎に違います。

 現在の市販されている窯は、もっと短時間で、焼成する窯が一般的です。

  それ故、更に溶けやすくする為に、もう1番下の番号を、選んだ方が無難です。

 ・ 結論として、Sk-8で溶ける釉薬は、Sk-2a(1120℃)のジェーゲル式を使う事です。

1) では実際の調合例を述べます。

 ① SK-2a のジェーゲル式は、(前々回述べましたが、)以下の様になります。

   MgO=0.096   CaO=0.599  Na2O=0.085   K2O=0.220   B2O3=0.170
 
    Al2O3=0.652   SiO2=5.687   

    ・ 1R O の成分は簡単にするため、CaO = 0.6  K2O、Na2O = 0.4 とします。

    ・ 即ち 1R O ・ 0.652 Al2O3 ・ 5.687 SiO2 と成ります。 (単位はモル)

       (石灰系の釉薬に成ります)

   (注: R O に相当する成分は各種有りますが、溶媒(=溶け易くする物質)と言います。

    溶媒としての働きは、同じ様ですが、色釉の着色金属との反応や、酸化、還元焼成では、

    各々独自の作用が有ります。 詳細は、後日説明致します。)
    

  ② 釉薬の原料として、福島長石(カリ=正長石)、福島珪石、朝鮮カオリン、石灰石を

    使い、釉を調合します。

   ・ 上記物質の、100g当たりの、化学分析値、及びモル数を記します。

       Al2O3   SiO2   FeO3   CaO   MgO   K2O   Na2O

 長石    18.57  66.74   0.18   0.24    ー   10.42   3.48

  モル数  0.182  1.111                  0.111   0.056 

 珪石     0.56  98.62   0.03   0.39   ー    0.05   0.28

  モル数       1.643

 カオリン  37.27  45.82   0.58   0.60   0.25  0.54   0.46

  モル数  0.366  0.764

 石灰石   0.20   0.40   0.02   55.05  0.04   0.05   0.20

  モル数                   0.983

                (前回紹介した「入門やきものの科学」より)

 以下 次回に続きます。

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