西田まり様より、以下のコメントと追加の質問をお受けしました。
1) 本焼成後、金箔を貼り、その上に透明釉をかけたいと思っています。
市販の楽焼釉だと、どうしても貫入が入ってしまうのでお聞きしました。
2) 自分で作って試してみたのですが、どうしてもひび割れが入ってしまいます。
もし、ひび割れを防げる良い方法がありましたら教えて頂けますでしょうか?
◎ 明窓窯より
1) 金箔の上に釉を掛ける技法を、釉裏金彩(ゆうり、きんさい)と言います。
(西田様が目指しているのは、この技法(又は類似)の事と思われます。)
釉裏金彩は、九谷焼と金箔の技術を融合して出来た、加賀地方ならではの、独特の技法です。
この技法で人間国宝の人に、石川県小松市高堂町の、錦山窯の三代目、吉田美統(みのり)氏
がいます。平成13年に無形文化財(人間国宝)に指定されました。
① 当ブログでも以下の項目で取り上げていますので、参考にして下さい。
◎ 陶磁器の絵付け (釉裏金彩) 2010-01-15 : 作品の装飾と陶磁器の絵付け
以下その抜粋を掲載します。
② 吉田氏の、釉裏金彩の、作業工程の概要
) 作品(磁器)を成形し、素焼、本焼の2回焼くと、真っ白な磁器が出来上がります。
) 白い磁器全面に上絵の具を掛けます。吉田氏の作品にはグレー、紫、黄、緑、赤等の
背景の色によって、金箔の雰囲気が、異なって表現されます。
) 3回目の窯入れで、背景色を器に焼き付けます。(上絵付け)
) トレーシングペーパーにつけた、デザインを、ペーパーの上からなぞり器に移します。
器に付けた下絵に合わせて、金箔を、鋏(はさみ)で一枚ずつ、切り取ります。
細かいデザインでは、100枚以上の金箔を、用いる事もあります。
) 金箔の型が、全て切り揃ったら、一枚づつ、のりで貼り付けます。
下絵の上に、金箔をピンセットで、置いていきます。
薄い金箔に皺がよったり、重なったりし無い様にします。
) 金箔を載せた後、軽く真綿で叩いて、金箔を器の面にぴったり合う様に、伸ばします。
) 金箔を貼り終えると、低温で金箔を焼き付けます。
この4度目の窯入れで、器の表面にある、不純物を取り除く、効果もあります。
) 最後に、透明釉を掛けます。筆で丁寧に金箔の上から、器全体に掛けます。
この透明釉がどの様に配合されているかは、企業秘密です。
) 5回目の焼成で、完成です。
薄箔、厚箔が、はっきりと現れ、作品自体に、金箔によるコントラストが、できます。
尚、釉裏金彩の技法は、手間隙の掛かる、手作業です。 現在この技法を使い、活躍している
方に、佐賀県嬉野町の小野次郎氏がいます。
・ 吉田美統氏や、小野次郎氏の作品は、インターネット上でも、見る事が出来ます。
興味の有る方は、吉田美統、又は、小野次郎、釉裏金彩で検索して下さい。
2) 「ひび割れ」がどの程度なのか不明ですが、貫入程度ならば、対応が可能とも思えますが、
大きな亀裂の場合には、難しいと思われます。
即ち、磁器の本焼きでは、1300℃程度まで温度を上げる事も、珍しくは有りません。その為、
素地は十分焼き締まっています。磁器には磁器用の釉を使い高温で焼成する為、貫入は入りません
又、低い温度で熔ける釉を施釉し焼成すると、釉は必ず収縮します。その為、「ひび割れ」が
発生する物です。それ故、出来るだけ釉の収縮を抑える事と、釉に弾力性を持たせる必要があり
ます。貫入を予防するには、釉の収縮(熱膨張係数)を少なくする事が基本です。
① 貫入を無くす一般的な方法は、珪石(珪酸)を増やし、熔融剤を減らす事です。
但し、この場合低い温度で釉を熔かす為には、熔融剤を減らす事はできません。
釉に珪石(珪酸)を加える事に成ります。
石灰を取り除き、石英を少なくし、カリウム(Ka2O)とナトルウム(Na2O)を多くし、
アルミナ(Al2O3)を少なくする方法もあります。
② 釉の弾力性を増す方法。
収縮とは、お互いに引っ張り合いながら縮む事で、釉がゴムの様に弾力性があれば、釉が
引き伸ばされても、「ひび」が入らない事に成ります。
その様な材料として、錫(スズ、SnO2)、ジルコン(ZrO2、4%以上)、チタン
(Ti2、2%以上)が 有ります。但しこれらは、乳濁釉にもなりますので、添加量に注意
が必要です。
③ 素地と釉の間を中間層といいます。即ち、釉が素地の表面に食い込んでいる層で、この層が
厚い程、素地と釉の緩衝材として働き、貫入を防ぐ事に成ります。
貫入のある釉に、硼酸を5~10%加えると、貫入を解消する事が出来ます。
これは、硼酸と水の混合物が素地に吸込まれ、素地を熔かす為、中間層が発達すると考え
られています。
・ 又、焼成温度を若干上げたり、焼成時間を長くする(ならし時間を長くする)と、中間層が
発達するとも言われています。
④ 釉掛けの厚みに左右される。
釉には、薄く掛けた方が発色や光沢が良い場合と、厚く掛けた方が良い場合があります。
厚く掛ける程、貫入が多く出ます。これは、素地に密着した釉は自由に動けませんが、素地より
やや離れた釉には移動の自由が生じ、強く引っ張れ易くなる為です。
当方から回答は、以上です。但し、かなりの困難と努力が必要と思われますが、釉裏金彩を作られて
いる作家さんもいますので、不可能では無いと思われます。
以上、お役に立てば幸いです。(明窓窯より)
1) 本焼成後、金箔を貼り、その上に透明釉をかけたいと思っています。
市販の楽焼釉だと、どうしても貫入が入ってしまうのでお聞きしました。
2) 自分で作って試してみたのですが、どうしてもひび割れが入ってしまいます。
もし、ひび割れを防げる良い方法がありましたら教えて頂けますでしょうか?
◎ 明窓窯より
1) 金箔の上に釉を掛ける技法を、釉裏金彩(ゆうり、きんさい)と言います。
(西田様が目指しているのは、この技法(又は類似)の事と思われます。)
釉裏金彩は、九谷焼と金箔の技術を融合して出来た、加賀地方ならではの、独特の技法です。
この技法で人間国宝の人に、石川県小松市高堂町の、錦山窯の三代目、吉田美統(みのり)氏
がいます。平成13年に無形文化財(人間国宝)に指定されました。
① 当ブログでも以下の項目で取り上げていますので、参考にして下さい。
◎ 陶磁器の絵付け (釉裏金彩) 2010-01-15 : 作品の装飾と陶磁器の絵付け
以下その抜粋を掲載します。
② 吉田氏の、釉裏金彩の、作業工程の概要
) 作品(磁器)を成形し、素焼、本焼の2回焼くと、真っ白な磁器が出来上がります。
) 白い磁器全面に上絵の具を掛けます。吉田氏の作品にはグレー、紫、黄、緑、赤等の
背景の色によって、金箔の雰囲気が、異なって表現されます。
) 3回目の窯入れで、背景色を器に焼き付けます。(上絵付け)
) トレーシングペーパーにつけた、デザインを、ペーパーの上からなぞり器に移します。
器に付けた下絵に合わせて、金箔を、鋏(はさみ)で一枚ずつ、切り取ります。
細かいデザインでは、100枚以上の金箔を、用いる事もあります。
) 金箔の型が、全て切り揃ったら、一枚づつ、のりで貼り付けます。
下絵の上に、金箔をピンセットで、置いていきます。
薄い金箔に皺がよったり、重なったりし無い様にします。
) 金箔を載せた後、軽く真綿で叩いて、金箔を器の面にぴったり合う様に、伸ばします。
) 金箔を貼り終えると、低温で金箔を焼き付けます。
この4度目の窯入れで、器の表面にある、不純物を取り除く、効果もあります。
) 最後に、透明釉を掛けます。筆で丁寧に金箔の上から、器全体に掛けます。
この透明釉がどの様に配合されているかは、企業秘密です。
) 5回目の焼成で、完成です。
薄箔、厚箔が、はっきりと現れ、作品自体に、金箔によるコントラストが、できます。
尚、釉裏金彩の技法は、手間隙の掛かる、手作業です。 現在この技法を使い、活躍している
方に、佐賀県嬉野町の小野次郎氏がいます。
・ 吉田美統氏や、小野次郎氏の作品は、インターネット上でも、見る事が出来ます。
興味の有る方は、吉田美統、又は、小野次郎、釉裏金彩で検索して下さい。
2) 「ひび割れ」がどの程度なのか不明ですが、貫入程度ならば、対応が可能とも思えますが、
大きな亀裂の場合には、難しいと思われます。
即ち、磁器の本焼きでは、1300℃程度まで温度を上げる事も、珍しくは有りません。その為、
素地は十分焼き締まっています。磁器には磁器用の釉を使い高温で焼成する為、貫入は入りません
又、低い温度で熔ける釉を施釉し焼成すると、釉は必ず収縮します。その為、「ひび割れ」が
発生する物です。それ故、出来るだけ釉の収縮を抑える事と、釉に弾力性を持たせる必要があり
ます。貫入を予防するには、釉の収縮(熱膨張係数)を少なくする事が基本です。
① 貫入を無くす一般的な方法は、珪石(珪酸)を増やし、熔融剤を減らす事です。
但し、この場合低い温度で釉を熔かす為には、熔融剤を減らす事はできません。
釉に珪石(珪酸)を加える事に成ります。
石灰を取り除き、石英を少なくし、カリウム(Ka2O)とナトルウム(Na2O)を多くし、
アルミナ(Al2O3)を少なくする方法もあります。
② 釉の弾力性を増す方法。
収縮とは、お互いに引っ張り合いながら縮む事で、釉がゴムの様に弾力性があれば、釉が
引き伸ばされても、「ひび」が入らない事に成ります。
その様な材料として、錫(スズ、SnO2)、ジルコン(ZrO2、4%以上)、チタン
(Ti2、2%以上)が 有ります。但しこれらは、乳濁釉にもなりますので、添加量に注意
が必要です。
③ 素地と釉の間を中間層といいます。即ち、釉が素地の表面に食い込んでいる層で、この層が
厚い程、素地と釉の緩衝材として働き、貫入を防ぐ事に成ります。
貫入のある釉に、硼酸を5~10%加えると、貫入を解消する事が出来ます。
これは、硼酸と水の混合物が素地に吸込まれ、素地を熔かす為、中間層が発達すると考え
られています。
・ 又、焼成温度を若干上げたり、焼成時間を長くする(ならし時間を長くする)と、中間層が
発達するとも言われています。
④ 釉掛けの厚みに左右される。
釉には、薄く掛けた方が発色や光沢が良い場合と、厚く掛けた方が良い場合があります。
厚く掛ける程、貫入が多く出ます。これは、素地に密着した釉は自由に動けませんが、素地より
やや離れた釉には移動の自由が生じ、強く引っ張れ易くなる為です。
当方から回答は、以上です。但し、かなりの困難と努力が必要と思われますが、釉裏金彩を作られて
いる作家さんもいますので、不可能では無いと思われます。
以上、お役に立てば幸いです。(明窓窯より)