わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 270 市販されている粘土類(ブレンド用4)

2017-01-11 16:23:20 | 素朴な疑問
8) 機械的強度と熱的強度

 ① 機械的強度。

  焼き上がった作品でも、何らかの原因で、使用中や食器洗い、運搬途中で亀裂が入ったり、

  縁が欠ける事も起こります。「焼き物は壊物」とも言いますので、壊れるのは宿命かも知れま

  せん。しかし強い力が掛かった訳でも無いのに、壊れる事もあります。同じ衝撃であっても、

  破損する物と、無事な物があります。その違いは機械的強度に左右されます。多くの場合、

  焼きの甘さに関係する事が多いのですが、素地に問題がある場合もあります。

  ⅰ) 焼きの甘さに関係する。

   焼成温度が高い程、土は強く焼き締まり密度も増しますので、機械的強度が増す事になります

   施釉した作品であれば、釉がしっかり熔け硬質なガラス質になりますので、更に強度増ます。

  ⅱ) 素地の焼き締まりは温度以外に、素地の構成成分によっても異なります。

   それ故、素地の構成成分を変える事で、機械的強度を増す事ができます。

   一般に細目の土よりも、粒子の粗い土の方が、焼き締まりが弱く、衝撃に弱い傾向にあります

   但し、微粉末された石英を多く含む素地では、焼成で強い内部応力が掛り易いですので、

   何らかの原因で、突然「ひび」や「割れ」が入る場合がありです。

   更に、制作時に土を良く叩き締め、密度を増す事も大切な作業です。仕上げで縁を皮などで

   拭き締めると、一層縁の割れを防ぐ事が出来ます。

  ⅲ) 釉が熔け不足の場合も、機械的強度は弱くなります。

   釉は完全に熔け切った状態で、釉の内部まで均一なガラス状態になります。熔け切ていない

   場合、表面は強いガラス質ですが、内部では化学的に不安定なガラス質になり、強度も弱く

   なります。場合によっては、ガラスの材料が粒子状態で残っている場合もあります。多くの

   場合熔け切っていない釉はマット状に成る事が多いですので、光沢のでる釉がマット状に焼き

   上がる場合には、釉の熔け不足と思って間違いありません。

 ② 熱的強度。

  土鍋など特殊な用途の物以外では、陶磁器は急激な温度変化に耐えられない場合があります。

  特に煮沸する容器や、直火に掛ける物や電子レンジなどでは、注意が必要です。

  素地その物に原因がある物と、作品の形状に起因する場合があります。

  ⅰ) 素地その物に原因がある場合。

   a) 石灰成分の多い素地では、急激な温度変化で作品が割れる恐れが大きいです。

    骨灰を多く含む素地(骨灰磁器など)では、急激な温度変化に弱い物です。

   b) 熱膨張率が大きな素地では、危険が増大します。

    素地が膨張収縮する事で、作品にストレスが繰り返しかかる事で、熱破壊が生じます。

    熱膨張率を小さくするには、ペタライト等リチウム鉱物を含む素地を用いる事です。

    例えば粘土60%に、ペタライト40%の素地を使うと良い結果が得られます。土鍋用の素地

    にはペタライトが入っている物が多いです。又土鍋用の釉にもペタライトが混入されてい

    ます。

   c) 石灰成分を含まない、粘土質で多孔性のある素地(素地の密度が小さい)は熱的変化に

    強いです。

  ⅱ) 作品の形状に起因する場合。

   a) 熱が部分的に集中しない形にすれば、急激な熱変化に強くなります。

    火(炎)の当たる底部に角張った部分があると、熱はその一点に集中し易くなり、熱破壊が

    起こり易くなります。即ち、土鍋などは底全体に熱が均一に伝導する緩やかなカーブを設

    ける事です。

   b) 熱伝導が悪い素地の場合も、急激な熱変化に弱いです。

    熱伝導は、作品の形状と素地の両方に関係します。即ち、緻密な焼き固まった素地では、

    熱伝導が悪く、急激な熱変化で簡単に破壊される事が多いです。

以上で「市販されている粘土類」の話を終わります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする