朝方、夢を見た。
私は、ひとりで薄暗い部屋の中にいた。
部屋の扉は、はめ込みの曇りガラスになっていた。
突然、曇りガラスの向こう側に人の顔が映った。
曇りガラスなので、顔の細部などは分からない。
てっきり誰かが来たのかと思ったが、すぐにそれが違うことに気がついた。
なぜなら、人間にしては顔がずいぶん上の方に付いていたから。
それはとても不気味な感じで、なんだか宮崎映画に出てくる妖怪の「カオナシ」に似ていると思った。
その不気味なものを見ていたら、急に涙が出そうになった。
涙が出そうになったのは、恐ろしくて・・・ではない。
自分のふがいなさに腹が立ったからだ。
毎日、感謝想起をして、先祖供養をしているのに、まだこのようなものが寄って来て、それが見えてしまうとは・・・
そう思うと、自分が情けなくて泣きたくなってしまったのだ。
その不気味な顔は、私が見つめていると、すっと消えてしまった。
急いで扉を開けたが、やはりそこには誰も居らず、ただ暗い地下へと降りていく階段だけがあった。
思わず階段の先にある暗い地下に向かって感謝想起の言葉をつぶやいたが、思い直して「エイッ!!」と声を出した。
一刻も早く、あの不気味なものを払いたかったから。
それにしても、我ながら気合の入ったよい声がでたなぁと思ったら、突然耳元で「払ってくれたのか?」という声がした。
「父の声だ」
そう思った途端、目が覚めた。
なぜこんな変な夢を見たのだろう。
実は心当たりがあった。
先日、病院で検診を受けた父だったが、腎臓に異常が見つかってしまった。
医師からは、大きな病院でもう一度診てもらうように告げられた。
さっそく紹介された総合病院の中にある泌尿器科で、造影剤を入れて写真を撮ったところ、右側の腎臓から出ている管が、内部にできている何かによって、とても狭くなっている事が分かった。
父に付き添った妹によると、医師からは「このような場合、ほぼ腎臓の全摘出になります」と言われたそうだ。
驚いた妹が「薬でなんとかならないのですか?」と聞いたところ、「薬だけでは無理でしょう」とのことだった。
高齢で体力が落ちている父に手術とは・・・
手術なんてしたら、このまま寝たきりになってしまうかもしれない。
認知症の悪化も心配だ。
とりあえず後日カメラを入れて、さらに詳しく調べることになった。
「何かできてるって、それって癌のことかな・・・」
そういう妹の言葉に「そうかもしれない」と思った。
そして、父に全身麻酔をかけての検査が行われる日、私は夢を見たのだった。
「このままにしておくことはお勧めしません。手術したほうがいいです」という医師の言葉を、遠く離れている弟にも伝え、そして兄妹で相談した結果、それに従おうということになっていたので、腎臓摘出も覚悟していた。
高齢だから仕方がない。
医師におまかせするしかない。
そう腹をくくり、普段はなるべくそのことは考えていないつもりだったが、やはり心の中に父の事が鉛のように沈んでいた。
だから、あんな変な夢を見たのかもしれない。
ところが、結果はまさかの大どんでん返しだった。
詳しい検査の結果、腎臓の管の中にはナニもなかった。
ただ昔、炎症を起したような跡があったこと、隣に太い血管があることと、前立腺肥大もあって、それによって管が圧迫されて狭くなっていたことが分かった。
だから腎臓の手術はしなくてもよくなり、飲み薬だけで治療をすることになった。
もちろん、すぐに退院もできることになった。
麻酔から冷めた父が、病院のベッドの中で、ピースサインをしている写真が、付き添っていた妹から送られてきた。
「ふっかーつッ!!」
笑顔でピースサインをした父の写メに添えられた言葉が、嬉しくも可笑しかった。
私は、ひとりで薄暗い部屋の中にいた。
部屋の扉は、はめ込みの曇りガラスになっていた。
突然、曇りガラスの向こう側に人の顔が映った。
曇りガラスなので、顔の細部などは分からない。
てっきり誰かが来たのかと思ったが、すぐにそれが違うことに気がついた。
なぜなら、人間にしては顔がずいぶん上の方に付いていたから。
それはとても不気味な感じで、なんだか宮崎映画に出てくる妖怪の「カオナシ」に似ていると思った。
その不気味なものを見ていたら、急に涙が出そうになった。
涙が出そうになったのは、恐ろしくて・・・ではない。
自分のふがいなさに腹が立ったからだ。
毎日、感謝想起をして、先祖供養をしているのに、まだこのようなものが寄って来て、それが見えてしまうとは・・・
そう思うと、自分が情けなくて泣きたくなってしまったのだ。
その不気味な顔は、私が見つめていると、すっと消えてしまった。
急いで扉を開けたが、やはりそこには誰も居らず、ただ暗い地下へと降りていく階段だけがあった。
思わず階段の先にある暗い地下に向かって感謝想起の言葉をつぶやいたが、思い直して「エイッ!!」と声を出した。
一刻も早く、あの不気味なものを払いたかったから。
それにしても、我ながら気合の入ったよい声がでたなぁと思ったら、突然耳元で「払ってくれたのか?」という声がした。
「父の声だ」
そう思った途端、目が覚めた。
なぜこんな変な夢を見たのだろう。
実は心当たりがあった。
先日、病院で検診を受けた父だったが、腎臓に異常が見つかってしまった。
医師からは、大きな病院でもう一度診てもらうように告げられた。
さっそく紹介された総合病院の中にある泌尿器科で、造影剤を入れて写真を撮ったところ、右側の腎臓から出ている管が、内部にできている何かによって、とても狭くなっている事が分かった。
父に付き添った妹によると、医師からは「このような場合、ほぼ腎臓の全摘出になります」と言われたそうだ。
驚いた妹が「薬でなんとかならないのですか?」と聞いたところ、「薬だけでは無理でしょう」とのことだった。
高齢で体力が落ちている父に手術とは・・・
手術なんてしたら、このまま寝たきりになってしまうかもしれない。
認知症の悪化も心配だ。
とりあえず後日カメラを入れて、さらに詳しく調べることになった。
「何かできてるって、それって癌のことかな・・・」
そういう妹の言葉に「そうかもしれない」と思った。
そして、父に全身麻酔をかけての検査が行われる日、私は夢を見たのだった。
「このままにしておくことはお勧めしません。手術したほうがいいです」という医師の言葉を、遠く離れている弟にも伝え、そして兄妹で相談した結果、それに従おうということになっていたので、腎臓摘出も覚悟していた。
高齢だから仕方がない。
医師におまかせするしかない。
そう腹をくくり、普段はなるべくそのことは考えていないつもりだったが、やはり心の中に父の事が鉛のように沈んでいた。
だから、あんな変な夢を見たのかもしれない。
ところが、結果はまさかの大どんでん返しだった。
詳しい検査の結果、腎臓の管の中にはナニもなかった。
ただ昔、炎症を起したような跡があったこと、隣に太い血管があることと、前立腺肥大もあって、それによって管が圧迫されて狭くなっていたことが分かった。
だから腎臓の手術はしなくてもよくなり、飲み薬だけで治療をすることになった。
もちろん、すぐに退院もできることになった。
麻酔から冷めた父が、病院のベッドの中で、ピースサインをしている写真が、付き添っていた妹から送られてきた。
「ふっかーつッ!!」
笑顔でピースサインをした父の写メに添えられた言葉が、嬉しくも可笑しかった。