鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『水神:帚木蓬生・著』 水がひとを変える・・・。

2009-09-14 21:03:53 | Weblog
乾いた秋の空気。

久しぶりの長編時代小説。
『水神』

筑後川・巨勢川を望みながらも、その高低差のため、水に恵まれない村は、貧困に喘ぐ。
幼い頃の病で、足に障害をもってしまった元助は、それゆえに、一生を筑後川の水を汲む運命となる。
天草の乱で、父親を失った元助の親代わりの庄屋・山下助左衛門は、筑後川に堰を作ることで、貧困に喘ぐ村々を救済しようと立ち上がる。

近隣の五人の庄屋達は、私財を投げ打ってでも、堰を作りたいと望む。

反対する庄屋達に襲われながらも、久留米藩の藩命を取り付け、工事は、始まる・・・。
失敗すれば、磔刑が、五庄屋を待っている。
対岸に作られた五つの磔台を見ながら、村民は、堰作りに挑む。
五人の庄屋に心を動かされた老境の久留米藩士の願い。

・・・失敗は、許されない!

水がひとを変える・・・。
水が無くては、ひとは、生きられない。

未来のある心配は、ひとを希望に導く。
ここで、水量豊かな水田を作る事は、未来を希望に変えることができる唯一の道。

今時の政治家に、この五人の庄屋たちのような指導者がでないもんだろうか・・・と、ありきたりな感想しか思い浮かばないのだけれども・・・。

基(もとい)あれば、壊れなし・・・。
基本がしっかりできていれば、人間も堰も壊れることはないのだろう・・・。

いま、その強さが欲しいと思う。

五人の庄屋の覚悟と村民を慈しむ心。
その心をしっかり受けて、足が不自由ながら、まっすぐに生きる元助を軸に、物語は、展開していく。