鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『連:宮尾登美子・著』

2011-06-09 22:52:50 | Weblog
再び、夏の気配。風は、爽やか。

6月の誕生月の宝石は、真珠。
真珠のあのやわらかで、優しげな風情は、海に浮かぶ月の光を吸い込んで、育ったかのような儚さがあるようで・・・。
私は、真珠には、縁がなくて、もともと、柔らかすぎる宝飾品だし、夏に直に身につけようとしても、汗で変色するのが、怖いので、肌には触れさせられないような気がする。
セーターなんかのハイネックやスーツの上からでも充分映えるロングサイズのネックレスなら、安心できそうなのだけれども・・・。

宮尾登美子さんといえば、長編小説。
長いです・・・読み応えあります・・・という作家さんなのだけれども、この『連』は、珍しい短編小説。
真珠に魅せられた女性ふたりの物語。
(この本も、かなり昔に読んだもので、現在、手許にないので、記憶違いのさいには、お許しを・・・)

真珠をつなぐ『連組』の職人で、その作品は、『キミコレン』と呼ばれ、海外で高い評価を得ることになる。
キミコは、真珠に魅せられ、真珠もまたキミコによって、繫がれることを望んでいるかのよう。
一方、真珠のバイヤーでもあり、キミコの連繋ぎの才能を見出したサト。
二人三脚で、真珠産業に携わってきたふたりだが、やがて、キミコの視力が衰えはじめ、『連』をつなぐことができなくなってしまう。
キミコは、自殺し、残されたサトは・・・。

宮尾先生の職人モノは、面白い。
こういう世界があるんだ・・・。
真珠のネックレスがある限り、その真珠を糸でつなぐお仕事(職人さん)も存在するハズだ。
しかし、大抵は、真珠をつないだヒトのことよりも、真珠のネックレスだけに意識が向きがちだ。

キミコは、真珠の光で、目が潰れた・・・罰があたったんだ・・・という。
母貝を殺して、真珠をとりだす・・・。幾千、幾万という貝の痛みから生まれる真珠を、弄んだせいだ・・・という。

欧州では、いびつな形のバロックとよばれる天然真珠が好まれ、アメリカでは、正確な円形に真珠が好まれると言う。
キミコは、そのバロック真珠を天性のセンスで、繋ぎ、その淡い光の調和を生み出すことに喜びを見出す。

キミコとサトの関係は、当時、男性しかいなかった真珠業界に、踏み込んだ女性の茨の道の中で、真珠を媒体にしたプラトニックな恋愛関係で、成り立っているようである。