昨日の夕刻からの雨は、日付が変わって本降りとなり、朝方迄、続いていたけれど、昼前には、回復で秋晴れ。
雨の降りだした昨日の夕刻から、市内シネコンで、映画『八犬伝』を鑑賞。
曲亭(滝沢)馬琴の執筆する『南総里見八犬伝』をベースに、葛飾北斎を絡めて、江戸時代の文学美術を語る映画でもあったのだけれど。
馬琴(役所広司)と北斎(内野聖陽)は、流石の貫禄。
鶴屋南北(立川談春)の四谷怪談、忠臣蔵は、本家本元の歌舞伎俳優が演じるあたり、鳴り物入りの『八犬伝』だと思ったのだけれど・・・???
何分にも、タイトルの『八犬伝』が、どうにも端折りすぎて、面白くもなんともないあたり・・・至極、残念。
安房里見家と伏姫、犬の八房、敵対する扇谷定正、怨霊玉梓などの関係もよくわからない。
映画の後半で、もしかすると、この八犬伝も今はやりの二部作とかで、現在公開中の作品は、前編なのかも・・・との思いもよぎるくらい、中途半端だった。
物語が進むにつれ、曲亭馬琴とその家族の物語がメインになってきて、息子の嫁のお路(黒木華)が、失明した馬琴の口述筆記で、物語を完成させる。
八犬伝は、(もしかすると)単なる添え物?だったのかとも思えた。
悪因善果、善因悪果、虚を実に、実を虚に・・・と文学談義をする鶴屋南北。自分の書きたいものを描き続ける北斎。二人の異なる鬼才のなかで、実直で真面目な馬琴とその家族、背景に重きを於いて、出来上がったのが、『八犬伝』だった・・・ということがテーマだったのかもしれない。
大人しくて、忍耐強く、字もろくにかけない嫁のお路を、演じる黒木華にはぴったりの役柄で、ひと昔か、ふた昔か・・・宮尾登美子の描く『忍耐につく忍耐、我慢では右にでるもののいない頑張り屋』的な女性像を演じさせたら一番な女優かも・・・なんてことを考えた(例えば『一弦の琴』の苗、『きのね』の光乃、『松風の家』の由良子とか・・・)。
歌舞伎関連からなのか、馬琴の妻お百を寺島しのぶ演じていたが、江戸の市井の女将さんで、梨園のお嬢さんがこういう役をやれるのか・・・と思ったりもした。
原作は、山田風太郎の『八犬伝』。
昔、読んだけれど、内容はちっとも覚えておらず。
最近(といっても10年くらい前)の舞台で、阿部サダヲが、たよりないヘタレな犬塚信乃を演じていた。
映画の八犬士は、いかんせん、それまでの(たぶん、八犬伝で、一番重要な運命的な繋がり部分をほぼ端折っているので)因果関係は、ほぼ描かれていないので、『八犬伝』を期待すると、残念な出来だった。