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2020.10.05 魚の思い出。

私は、食べ物に好き嫌いが無いと自慢していた時期があった。

しかし、子供の頃から、煮魚はあまり好きではなかった。
学校から帰って玄関で、魚の煮付けの臭いがしたら、がっかりして、悲しくて
たまらなかった。
牡蠣も、生は好きだけれど、牡蠣鍋は臭いが辛い。カキフライは大好き。
蟹も、生も茹でた蟹も大好きだが、蟹鍋などは臭いが苦手。

若い友人が、わたしが魚嫌いなことを家に帰って言ったら、「珍しいね。昔の人
やのに。」と言われたらしい。昔の人で、悪かったね。

一方、焼き魚は、大好きだった。
子供の頃から食べていた塩鮭が懐かしい。
私は、こんがりと焼かれた塩鮭の皮の味と香りが大好きだった。
最近の塩鮭は、皮が臭い。今度こそは、臭くないかと何度もトライしたが、どれも臭かった。
「沖塩」では無く、「浜塩」の魚ばかりになってしまったせいである。
もう、挑戦する気もなくなってしまったし、魚屋さんへ煩く言うことも止めた。

私は、子供の頃から、市場にお使いに行っていたので、知っているが、昔は、
魚屋の軒に、木製のトロ箱が積んであって、その側面に黒い墨で「沖塩」「浜塩」
と書いてあった。
「沖塩」と言うのは、魚が捕れた時、沖の船上で塩をした魚で、これが、上物
だった。
一方、「浜塩」とは、沖でとって来た魚を、そのまま持って来て、浜に戻って
から、浜で待っていた大勢の人が塩をするもので、従って、鮮度が落ちている
ため、味や臭いが悪く、従って値段も安かった。
私は、そのことを、本で読んで知っていたので、子供のくせに、ここにいつも
注目していた。
だから、私の買って来る魚は、いつも間違いなかった。

母が魚の煮付けが好きなので、夕食に、煮付けが多かったが、そんな時、母が、
必ず、魚を指さして、「これ、いくらだったと思う?」と私に聞いてきた。
何故かと言うと、私が、毎回、ぴったりと値段を当てるのが、とても面白いから
らしかった。50円、60円とか,高くても80円とかだった。
なにしろ、勢子ガニが30円、40円の頃。
何故か、いつも、ピタリと合っていて、間違ったことが無かった。
余りにも見事に当てるので、母は大笑いしながら、凄いね凄いねと言った。

ある時、見事なマナガツオの煮付けがあった。
案の定、「これ、いくらだったと思う?」と母が聞いて来た。
マナガツオは高級魚だということはよく知っていた。しかも見事な鮮度だ。
高いことは分かっている。即座に「110円」と私は言った。(今なら、切り身
一切れで800円から1000円ぐらいするのではないか。)
すると、ちゃぶ台に座っていた母は「え〜?」と言って、大きな笑い声を発し
ながら、後ろに倒れた。
いつも、ぴったりと値段を当てる私だったが、この,初めての高価な魚のこと
を知っていて、しかも値段を、それも、まさか、私が、「1円の誤差もなく、
即座に110円と言ったことが、つまり、110円などと言うあまりあり得ない
数字を即答したので、びっくりしたらしい。」
母は、本当に感心しきりだった。

その日以来、私は卒業したのか?母は私に対して「これいくらだったと思う?
遊び」を,一度もしなくなった。


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