今年の春、一番最初に撮れた、ベニシジミのメスです。春まだ浅く、サクラもまだ咲いていなかった頃。冬の名残の枯野のあちこちに、緑が少しずつ芽吹き始めた頃でしたね。まっさらでぴんぴんの翅。きっとまだ目覚めたばかりだったんでしょう。
咲き始めた花を追いかけて、モンシロチョウが飛んでいました。その写真を撮ろうとしてのっぱらを散策していたのですけど、モンシロチョウはすばやくて、すぐに飛んでいってしまう。ため息をついていると、ひらりと赤いベニシジミが、わたしのところに飛んできてくれて、ほら、写真撮りなさいって、言うみたいに、ポーズをとってくれました。
やさしいなあ。暖かくて、かわいくて、何気なくきてくれる。そんなチョウチョみたいです。ベニシジミは、じっとしてくれるから、写真がとても撮りやすい。かわいくて、とてもすき。
2枚目は、一月ほど前、幼稚園の近くのイチョウの木の下で、出会ったものです。こちらはオス。すりきれていたんだ翅が、またきれいです。春先には濃い紅だった色が、いくぶんくすんで、やさしくなっている。いいな、きれいだな。
どんなことがあったのかな。雨風の日もあったろうな。蜘蛛やかまきりにあった日もあったろうな。子供の指をあやうくすりんけたなんてこともあったかな。恋もしたろうな。きっと卵も産んだろうな。かわいかったろうな。
すりきれた翅を、日差しに暖めながら、言っているような気がする。
苦しいこともあったけど、なんでもなかったよ。楽しかったよ。
なにもかもみな、すばらしかったよ。