ソミナは囲炉裏のそばに座り、火をかきたてて何かを煮始めた。しばらくして米の匂いがしてきた。ああ、米を煮てくれているのか、とアシメックは思った。米はいい。あたたかい米を食えると思っただけで、安らいでくる気がする。ソミナはいつもより水を多くして、ミコルがくれた薬草もきざみ入れて、うまい粥を作ってくれた。アシメックはそれを食いつつ、仲間とはいいものだとしみじみ思った。弱っているおれを助けてくれる。
粥を食べ終えて、しばらく休んでいると、シュコックとセムドが家に入ってきた。
「大丈夫か、アシメック」
シュコックの心配そうな声に、アシメックは笑いながら、「ああ、大丈夫だ」と言った。セムドはすまなそうな顔をして、アシメックに言った。
「すまん。わしのせいだ。わしが、トカムを連れて行ってくれなんて言わなかったら」
「いいんだよ、それは。トカムはどうしてる?」
「家でひきこもっている。反省はしているようだ。謝りたいが、気持ちがつらくてできないようだ」
「そうだろう。しばらくはそっとしておいてやったほうがいいだろう」
セムドは深いため息をついた。彼はトカムのことをことのほか心配しているのだ。もういい大人だというのに、未だに仕事が決まっていない。手に技を覚えさせてやろうと、ヤルスベに修行にやっても、すぐにあきらめて帰って来る。かといって、女のように家で茅織りをしたり酒をこしらえたりするのも嫌だというのだ。茣蓙くらいは編むが、それもみなのように上手ではない。