女たちはよりあい、髪を飾る花のことや、帯の結び方などを話し合った。男の品定めなどしながら、互いにどの男に目をつけているのかも、探りあった。いい男には人気があったので、本番にぶつからないよう、いろいろと調整もしているようだ。
アシメックを好きな女は多かったが、族長はずっと歌垣には出てくれないので、少し残念だという女もいた。
男たちもよりあい、いろいろと話し合った。族長が参加しないことは、彼らには朗報となっていた。人気のある男が出ると、女たちはみんなそっちのほうにいくからだ。男たちもまた、化粧の土などいじりながら、女の品定めをした。
「キリナは今年でないんだとさ。子供が生まれたばかりだからな」
「へえ、そいつはちょっと残念だな。おれはスソリに目をつけているんだ。まだガキっぽいけど、だいぶかわいくなってきたよな」
「馬鹿、あいつはクストが目をつけてるんだぞ。ほかのやつにしろ」
彼らの好みは、まだ経験のない若い女よりも、子供を二、三人産んだことのある、年かさの、きれいな女に集中した。女は三人くらい子供を産んでからのほうが、一段と魅力的に見えるのだ。若い女では何か物足りないらしい。
歌垣では歌を歌いあって、お互いの心を訴える。その歌も練習せねばならなかった。基本の歌がいくつかあり、それを覚える。本番ではそれをいろいろと歌い変えて、互いの心をはかりあった。
泉の水にかえるがすみ
こよとなく
こいやこい
おれとこい
こんなのが基本の歌だ。男がこれを歌い、それを聞いた女が、いいと言いたい場合にはこう歌う。
森のこずえにとりがすみ
いくとなく
いこやいこ
おまえといこ
ほかにもいくつか歌があり、男も女もみな歌垣の前にそれを練習して覚え込んだ。うまく歌えないやつは相手にされないのだ。いい声を出して、それはつやっぽい目をしながら、相手に訴えねばならない。