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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

青い鹿⑦

2017-12-23 04:13:10 | 風紋


段取りはすらすらと進み、キルアンは解体されることになった。

肉は切り分けて皆に分け与えられ、半分は三日のうちにみんなが食った。半分は干されて干し肉になった。角は夢のとおり、至聖所で神にささげられた。そしてその青みを帯びた毛皮はしばらく干され、アシメックのものになることになった。

アシメックの回復は早かった。すぐに立てるようになり、七日もすれば生き生きと働けるようになった。そして、キルアンの毛皮を肩にかけたアシメックは、前よりももっと高い男になったように見えた。

きっとアシメックは、キルアンの加護を受けるに違いない。そんな話が村人の中に流れた。それで、きっとすごくいいことがあるに違いない。

キルアンの霊の話はそのまま、カシワナ族の神話に取り込まれていった。山のように大きな青い鹿と闘った、勇気のある族長の話は、こののち部族に長く伝えられていくのだ。

アシメックがいなくても、鹿狩りはシュコックの指揮のもと、毎日行われた。キルアンがいなくなったので、それほど鹿狩りに難しいことは起きなかったが、狩人たちは前よりも鹿を大切にするようになった。サリクなどは、鹿に矢を放つたびに、涙を流して、すまんというようになった。

「ありがたく食うから、無事にアルカの向こうにいけ」

狩人たちは鹿のためにそう祈るようになった。そうすれば、キルアンの霊が喜び、アシメックを固く守護してくれると思ったのだ。

鹿狩りの季節は終わった。キルアンに認められたからか、この季節はいつもより多い鹿が狩れた。村はにぎわった。アシメックは、鹿と神に感謝しようと、みんなに言った。いい肉と皮を鹿はくれる。その鹿をくれるのは神なのだ。みんなが仲良く、いいこと、正しいことをしているから、くれるのだと。




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