段取りはすらすらと進み、キルアンは解体されることになった。
肉は切り分けて皆に分け与えられ、半分は三日のうちにみんなが食った。半分は干されて干し肉になった。角は夢のとおり、至聖所で神にささげられた。そしてその青みを帯びた毛皮はしばらく干され、アシメックのものになることになった。
アシメックの回復は早かった。すぐに立てるようになり、七日もすれば生き生きと働けるようになった。そして、キルアンの毛皮を肩にかけたアシメックは、前よりももっと高い男になったように見えた。
きっとアシメックは、キルアンの加護を受けるに違いない。そんな話が村人の中に流れた。それで、きっとすごくいいことがあるに違いない。
キルアンの霊の話はそのまま、カシワナ族の神話に取り込まれていった。山のように大きな青い鹿と闘った、勇気のある族長の話は、こののち部族に長く伝えられていくのだ。
アシメックがいなくても、鹿狩りはシュコックの指揮のもと、毎日行われた。キルアンがいなくなったので、それほど鹿狩りに難しいことは起きなかったが、狩人たちは前よりも鹿を大切にするようになった。サリクなどは、鹿に矢を放つたびに、涙を流して、すまんというようになった。
「ありがたく食うから、無事にアルカの向こうにいけ」
狩人たちは鹿のためにそう祈るようになった。そうすれば、キルアンの霊が喜び、アシメックを固く守護してくれると思ったのだ。
鹿狩りの季節は終わった。キルアンに認められたからか、この季節はいつもより多い鹿が狩れた。村はにぎわった。アシメックは、鹿と神に感謝しようと、みんなに言った。いい肉と皮を鹿はくれる。その鹿をくれるのは神なのだ。みんなが仲良く、いいこと、正しいことをしているから、くれるのだと。