読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

警察小説の第一人者:今野敏

2012年09月09日 | 読書

◇『TOKAGE-特殊遊撃捜査隊-』 著者: 今野 敏 
                       2008.1 朝日新聞社 刊

 
サスペンスのジャンルでも警察官が主役として活躍する小説を主として書いている
作家は少なくない。佐々木譲を初め、横山秀夫、雫井脩介、今野敏、堂場瞬一など
本格派のほか、大沢在昌、逢坂剛、黒川博行などハードボイルド系の作家も多い。
 本作品はTOKAGE(特殊遊撃捜査隊)シリーズ1であるが、2010.2天網TOKA
GEシリーズ2が出版された。
 警視庁刑事部捜査第一課に特殊犯罪捜査係があって、誘拐・立こもり・テロなどの
特殊犯罪の捜査に当たる。この特殊犯係に単車を駆って機動捜査に当たる特殊
遊撃捜査隊―通称トカゲなるチームがある。頭は白石涼子という30歳のクール
な女性捜査官。その上司の係長はこれまたクールな高部一徳。常に冷静的確な
指揮に当たり、管理官はもとより捜査課長も誘拐事件では高部の判断に一目置く。

 某大手都市銀行の3人の行員が誘拐された。身代金は10億円。犯人一味は銀行
内部のシステムやIT
等に詳しく内部関係者の関与が強く疑われる。
 ところが振り込みを指示された口座は大阪府警管内の某銀行の梅田支店であった。
誘拐事件が一挙に広がりを見せる。そしてその口座の名義人は10年も前に銀行の
貸し剥がしが元で倒産した経営者で失踪していた・・・。
 誘拐事件の常として報道機関には報道規制がかけられたが、某新聞社の遊軍記
者は懇意の警官からヒントを得て周辺を探っているうちに、重要な事件関係者に肉
薄していたことを知ることになる。警察小説には報道関係の脇役が欠かせない。
 飛田という常務が登場し、やり手で何やら後ろ暗い過去がありそうな言動があるが
結果的に肩すかしをくらった。犯行動機がいやに抽象的だったりとやや不満が残る
が、人質が3人、銀行員の誘拐という特異性、犯人確保というよりも状況把握を主務
とするトカゲという単車チーム乃設定など新鮮さが救い。シリーズ2も読んでみよう。

    

    (以上この項終わり)

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