1,大規模地震災害対応について
(1)災害マネジメント総括支援員について
【中川】今年1月1日の能登半島地震被災地の視察に5月連休明けに行ってきました。金沢市の隣の内灘町の液状化、七尾市一本杉や珠洲市など各地で街が無くなってしまうほどの家屋の倒壊、輪島の朝市は焼野原となっている、そんな被害のすさまじさを目の当たりにし、地震の被害の大きさを実感しました。また、150キロにわたって断層が動き、珠洲市で2メートル、輪島市門前で4メートルの地盤隆起を見たときは、自然の営みの巨大さに圧倒される思いとなりました。
以下、能登半島地震の災害対策から、今後の長野県の地震災害への教訓あるいは課題について質問をします。
輪島市に支援に入った大阪府吹田市の災害マネジメント総括支援員の方のお話を聞きました。当初、警察、消防、自衛隊、国や県の機関など、様々な皆さんが人命救助や被害の状況集約を行っていて混乱をしていたそうです。そこで、輪島市の職員を中心にすえ、各機関との情報整理を行い、そのうえで災害対策本部会議で意思統一する流れをつくったのだそうです。その役割を担うのが、災害マネジメント総括支援員、通称GADM(ギャドム)といい、大規模災害時に、先遣隊として「総括支援チーム」を率いて災害市町村に入り、被害状況を把握し、行うべき業務、事務量、スケジュールを整理し、必要な応援職員の規模の助言を行うなど、被災市町村の災害対応を総括的に支援するものです。
想定される長野県における大規模地震では、当該自治体の職員の多くも被災していることが考えられます。他県からの支援を受けなれば対応ができない場合もあると考えられますが、県内における支援体制をまずは強化しておくことが必要です。
この災害マネジメント総括支援員は、長野県内には現在、県職員に3人、市職員に1人いるということですが、大規模地震に備える観点から、10の圏域や主要な市において災害マネジメント総括支援員を育成していく必要があると考えますがいかがでしょうか。
【危機管理部長】大規模災害が発生した際は、次々と発生する複雑かつ困難な問題に即座に対応するなど、平時とは異なるスキルであったり、あるいは決断力が必要だと思います。
そうした大規模災害を実際に経験し、被災市町村長への助言や関係機関との連携を担うことができる、災害マネジメント総括支援員の存在が極めて重要だと考えております。
この支援員として登録されるためには、災害対応の知見のほか、地方自治体での5年以上の勤務経験などが要件となっておりまして、その上で、自治体の推薦を受けて、約10時間の専門の研修を受けていただくことによりまして、国に登録されるという仕組みになっております。
広い県土を有する本県では、大規模災害の際には、他の県も被災することが想定されることから、県内の被害の少ない地域からの支援体制を予め整えておくことが必要だと考えております。
県としましては、県の職員3名ということでありましたが、その登録はもとより、市町村にも経験の長い職員の方がおいでになると思いますので、そういった方にも、この登録・研修を受けていただくように今後も働きかけを積極的に進めていきたいと思っております。
(2)災害関連死を認定する市町村条例について
【中川】6月18日の石川県災害対策本部会議の資料によると、死者260名のうち災害関連死30名となっています。災害関連死とは、震災による死者数以外で、震災後に災害による負傷の悪化または身体的負担による疾病のため死亡したと思われる死者数で、市町村が判断したものとなります。長野市においては、令和元年の台風19号災害で16人を認定していますし、関連する自治体では「災害弔慰金の支給等に関する条例」を整えていたということです。条例において災害関連死を認定する審査会を設置し、審査会は医師、弁護士、学識経験者等に委嘱し災害関連死を認定する仕組みとなっています。
県内77市町村のうち、災害関連死を認定する条例を制定している市町村は、現在どのくらいあるのでしょうか。審査にあたる専門職がいない自治体もあるのかもしれません。その際、広域で審査会を設置するなど課題への対応策を県として支援すべきではないでしょうか。
【危機管理部長】災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき、市町村は災害弔慰金等の支給に関する調査審議をする審査会を設置するよう努めることになっています。
県内市町村において、この審査会の設置条例を制定しているのは、59市町村と約8割近くとなっております。
また、条例はあるものの、現時点で委員を任命していない市町村も多くございまして、災害の状況に応じて適当な方を任命すると考えている市町村や、あるいは適当な委員が見つからないという課題を持っている市町村があると承知をしております。
災害関連死の認定は、災害が原因で死亡したという因果関係を基に判断する必要があることから、まずは、地域生活の状況を把握している市町村でしっかりと審査できるようにすることが望ましいと考えますが、審査においては、医師、弁護士といった専門職の人材確保が必要だと思いますので、県からも関係団体に対し、困っている市町村がある場合には、委員の推薦等へ協力していただけるように働き掛けをこれからしてまいりたいと思います。
(3)孤立種落対策について
【中川】能登半島地震では、孤立集落が多数発生しました。地震から1週間後の1月8日時点で市町から報告のあった孤立集落は24カ所3,345人ですが、この時点でも人数が不明の集落も存在しています。順次、孤立は解消されていき、1月19日の対策本部会議で「孤立集落は実質的に解消」という判断をしています。孤立が解消されたとしても引き続き支援が必要な要支援集落は残ります。
内閣府は、2014年「中山間地等の集落散在地域における孤立集落発生の可能性に関する状況フォーローアップ調査」を行っています。孤立に至る条件として、集落へのアクセス道路が土砂災害危険個所等に隣接しているため、地震に伴う土砂災害等の要因により道路交通が途絶し、外部からのアクセスが困難となるおそれのある集落として、長野県内では1,163あるとしています。
県は、様々な地震を想定していますが、このうち糸魚川静岡構造線断層帯の地震における孤立集落数を566と算出しています。
県並びに各市町村は、孤立集落を具体的に把握し、予想される孤立集落への備蓄、ドローンなどでの物資輸送、衛星インターネット機器の準備、道路啓開の計画などの対策を行っているか、お伺いします。
【危機管理部長】多くの中山間地域を有する本県にとりまして、孤立してしまった場合の集落への支援、それから早期解消は、極めて重要かつ喫緊の課題と考えております。
孤立集落については、2014年に国が箇所数等の調査を行っているわけですけれども、県として最新の状況を把握することも大事ですし、同時に調査から10年が経過していることもありますので、市町村の担当部署にも改めてご自身の管内において孤立可能性のある地域はどういう所があるのか認識いただく必要があると思いますので、現在協力をいただきながら、県として各集落の現状を市町村に確認している、作業をしているところでございます。今後その結果も踏まえまして、住民への備蓄等の呼びかけの仕方とか、地区ごとの事前の備えなどについて、市町村とともに 検討を進めてまいりたいと考えております。
このほか、孤立発生時のドローンなどを活用した物資輸送の仕組み作りですとか、それから県で保有している衛星携帯電話の活用によって通信環境を確保することに加えて、総務省信越総合通信局にも何台か衛星携帯電話があると聞いておりますので、そういったものも活用できるよう調整しているところでございます。
また、建設部を中心に、緊急輸送道路の道路啓開に関するワーキンググループを既に設置しておりまして、本年中を目標に道路啓開計画の改善に向けた検討を進めていると聞いております。
引き続き、9月に策定する「地震防災対策強化アクションプラン(仮称)」の策定を進める中で、ソフト・ハード、多様な面から孤立対策を検討を進めてまいりたいと考えております。
【中川】危機管理部長に再質問をしますが、これまで孤立集落を具体的に把握せずに地域防災計画をつくってきたということですか。また、知事も孤立集落が具体的に把握されていなかったことを知らなかったということでしょうか、知事にもお伺いします。
【危機管理部長】先ほどお答えした孤立集落の把握について、再質問を頂戴しました。
私どもとすれば、先ほど議員からご指摘いただきました1,163箇所というのは、全て市町村から国へ報告されているものですので、市町村としても当然認識しているものだという認識でおります。元旦に起きました能登半島地震を大きな契機としまして、新ためて認識をきちっとしていただこうというということで、先ほど申し上げた市町村への調査を行っているところでございます。
孤立対策に限らず、先ほどおっしゃったように地域防災計画というものがあって、それに基づいて色んな災害への準備、避難の計画といったものが各市町村ごとに作られています。それだけでは計画を総花的に作っていることもあり、もう少し細かく実践的に、災害が起こっても大丈夫なように計画を作っていこうという思いがございます。その思いをもって、この3月に表明しました地震対策強化アクションプランを県が主導的に作り、その作成には、市町村の防災担当や、県民会議としてNPOや防災関係機関が入っていただいているので、アクションプランを作って、何か起こったときにもきちっと対応できる準備・対応を考えよう、とやっているものです。
より実働的に動かしていく、というつもりで考えているところです。
【知事】事前に通告いただいていなかったわけですけれども、ご承知のように被害想定を行っております。その中で様々な地震のケースを想定しておりますけれども、例えば糸魚川・静岡構造線全体が動いた時には、五百を上回る孤立集落が発生すると想定をしています。地震の揺れ方や規模、震源によってこうしたものは変化するわけですけれども、私どもとしては最大規模の地震が起きればどれくらいの孤立集落が発生するのか、ということを被害想定を基に想定しながら対応してきています。
危機管理部長からも答弁申し上げましたように、どういう地域のリスクが高いのか改めてしっかり把握しながら対策対応していくのが重要であるというように思っています。改めて実情を把握した上で、個別具体的な対応を市町村とともに考えていきたいと考えています
(4)志賀原発との通報協定の締結について
【中川】能登半島地震は志賀原発にも大きな影響を与え、大事には至っていませんが「1号機起動変圧器及び2号機主変圧器に絶縁油の漏れ等が発生し、予備電源変圧器により外部電源から受電」するなどが、北陸電力からニュースリリースされています。
この間、長野県は北陸電力との間で、情報共有の努力をされてきましたが、近隣県においても北陸電力が通報協定を結んでいないこともあり、現段階においても長野県と北陸電力との間で通報協定は結ばれていません。今回の、能登半島地震を契機にあらためて北陸電力に対して通報協定を結ぶよう、近隣県の皆さんと一緒に要請すべきではないでしょうか。
【危機管理部長】大規模災害発生時には、まず県民の安全・安心の確保のために、本県周辺に存在する原子力発電所の状況を把握する、この通報連絡体制の整備は、大変重要だというふうに考えております。
今回まさに元旦に起きた能登半島地震では、その発災日当日に、私どもの方から北陸電力に電話で被災状況の安全確認を行ったところでございます。
また、6か月を経過したこの6月にも改めて被災状況や電源設備の安全確保の把握についてWEB会議で北陸電力と話し合いをもったところでございます。
その中で今後も緊密に連携していこうということで情報交換を行ったところでございます。
近隣県の状況も踏まえつつ、引き続き、北陸電力に対して、通報連絡体制の一層の強化を働きかけてまいりたいと考えているところでございます。