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11月26日(日)から27日(月)にかけて、5回目となる福島原発の現状を学ぶ現地視察交流ツアーに行ってきました。朝6時に松本を出発、長野道から上信越道に入り、横川SAで朝食をとり、関越道、北関東自動車道、東北自動車道、常磐自動車道を経由していわき市へ。
20171126 第5回福島原発の現状を学ぶ現地視察交流ツアー〜楢葉町の現状
2年ぶりとなる楢葉町の仮設住宅の皆さんとの交流。猪狩町会議員からお話を伺う。平成27年9月5日に避難解除となり、本年10月31日現在人口で2030人、世帯で1081世帯が戻ってきている。全体の28.4%にあたる。東電社宅や廃炉作業員の社宅に住む人も含めると5000人が居住している。依然として県内に6440人が避難している。いわき市に4043人と最も多い。県外では群馬県に100人、茨城県に185人、埼玉県に101人が避難生活を続けている。29年1月のアンケートではすでにいわき市内に家を建てるなど25%が帰らないと答えている。来年3月で応急仮設住宅は廃止、取り壊しとなる。家の建設が間に合わないなど特別の事情がある人を対象に140戸は残すことになっている。ただ、復興住宅で来ているが、商業施設ができていない、空間放射線量が0.2μ㏜であることなどから帰還が進まない。29年4月から認定こども園と小中一貫校が再開した。小中学校が109人、子ども園は50人が通っている。東電の賠償による格差と分断がある。
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楢葉町第10仮設住宅を後にして、交流宿泊会場であるかんぽの宿いわきへ移動。
最初に福島原発告訴団の武藤類子さんから「ようやく始まった刑事裁判と福島の今」と題したお話を聞く。
20171126 第5回福島原発の現状を学ぶ現地視察交流ツアー〜記念講演 福島原発告訴団・団長 武藤類子さん
原発サイトの問題として、汚染水を海に流そうとしているが漁民が止めている。当時の規制委員長は「(汚染水を海に放出する)一番の障害になっているのは福島県民でしょ」と言い、それにすごい速さでうなずく東電幹部の映像が残っている。
排気塔を支える鋼材が破断しているが根元で25㏜という高線量で近づけない、1,2,3号機は使用済み核燃料がある。
原発サイトの外の問題では、年間1mm㏜まで下がっていないが「帰ってください」と言われていること、自主避難者の住宅支援が29年3月で打ち切られ、「転居費用が払えない、病気になり仕事ができなくなり困窮している、生活保護を申請するも、大学進学のために子どもが自分で貯めた貯金があることを理由に却下される、医療費が払えない、頼るところがなくホームレスになる、精神的に追い詰められて自死などの実態が報告された。最近、自主避難者を居住する雇用促進住宅から追い出すための訴訟が国側から起こされているマスコミ報道もあったことを思いだす。
健康問題では、県民調査から甲状腺がんになった人が漏れていたことがわかった。県民健康調査ではなく、自主検診でがんが見つかると福島県の「サポート事業」の対象外となる。また、事故時4歳の子どもが県民健康調査でがんが発見され県立医大で摘出手術を行ったにもかかわらず検討委員会に報告されいなかったことが判明。検討委員会では、5歳以下の甲状腺がんが見つかっていなかったことが、放射線の影響を「考えにくい」とする根拠になっていた。県立医大は、知っていながら黙っていたことになる。
このほか、放射線教育が弱みに付け込んだ教育が行われてること、2200万個のフレコンパックの処理など、膨大な課題がある。
こうした中で福島原発事故刑事訴訟が行われている。福島原発事故の刑事責任について検察庁は裁判を開かない決定をしたが、一般市民による検察審査会が覆し、刑事裁判を開くことを決めた。東電の元会長「会長職には業務執行権限がない。原子力や津波の専門知識はなかった」、元副社長「大津波がくるというシュミレーションは試しの計算で、本当に来るとは思わなかったので対策をとらなかった」、元副社長「大津波の計算は検討を任せていたので詳しい記憶はない。専門家として補助する立場で権限はない」と、それぞれ責任逃れを行った。しかし、2002年には福島第一原発に10メートルを超える津波が襲う危険を予見することは可能だった。2008年に東電の子会社が15.7メートルの津波高さを算出し、原発を取り囲むように防波堤を造る計画が立てられていた。対策費用を惜しんだ経営陣が握りつぶしたことを論証していくことになる。
20171126 第5回福島原発の現状を学ぶ現地視察交流ツアー〜<質疑応答>記念講演 福島原発告訴団・団長 武藤類子さん
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次に、フクシマ原発労働者相談センターの報告が狩野光昭いわき市議から報告された。
20171126 第5回福島原発の現状を学ぶ現地視察交流ツアー〜除染労働者の実態と闘いの現状 狩野光昭いわき市議
福島労働局が今年9月1日に「東電福島第一原発で廃炉作業を行う事業者及び福島県内で除染作業を行う事業者に対する監督指導結果について」発表している。それによると廃炉作業を行う事業のうち労働基準法違反があった事業者が131事業者中52事業者77件、このうち安全衛生関係が15件、労働条件関係が62件。除染作業事業者では、82事業者中45事業者73件、このうち安全衛生関係が58件、労働条件関係が15件となっている。
この間の相談でも、「じん肺・アスベスト被害」が増えていることや、賃金や残業代及び危険手当の未払い、解雇、健康診断書の偽造などに、労働者と共に東京電力や元・下請け企業と交渉を行い解決してきています。
20171126 第5回福島原発の現状を学ぶ現地視察交流ツアー〜除染労働者の実態と闘いの現状 いわき自由労組・ふくしま連帯ユニオン
最近では、除染労働者の休業手当等請求裁判で勝利和解をしている。また、「東京電力福島第一原発構内の車両整備工場の整備士が昼の休憩時間後、整備工場に向かう途中で体調不良を訴え、広野町の高野病院に緊急搬送されたが心疾患により死亡、東電は私傷病扱いだが、遺族から労災認定について相談を受けている」報告もされた。
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福島第一原発構内での防護服。左が簡易防護服、右が完全防護服。
20171126 第5回福島原発の現状を学ぶ現地視察交流ツアー〜除染労働者の実態
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10月に松本で講演をしてくれた千葉由美さんのお話。「形のないものが奪われてもわからない」
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交流会の最後に「みんな思いは一緒、がんばろー!」で締めました。