3,教員の精神疾患による休職について
【中川】昨年暮れに、文部科学省の人事行政調査で、2021年度に精神疾患で1ヶ月以上休んだ公立学校の教員が前年度比15.2%増の10,944人となり、はじめて1万人を超えたことが報告されました。長野県内の学校では精神疾患を理由に休職した教員は69人だったといいますが、県内の精神疾患による休職者数の増減の傾向はどうなっていますか。また、精神疾患で休職する原因や背景について、どのように分析していますか。
【教育長】文部科学省の人事行政状況調査では、令和3年度の精神疾患による本県の公立学校教員の休職者数は69人で、全教員に占める割合は0.40%となっており、令和2年度までは、10年以上ほぼ横ばいの状況が続いておりましたが、令和3年度は前年度比15人、0.08%の減少となっております。
休職等に至った原因や背景としては、令和元年度に県教育委員会が実施した調査において「児童生徒への対応」が最も多く、次いで介護、家事・育児の負担などの「個人的な事情」、「職場の人間関係」の順となっております。また、多くは複数の原因や背景を抱えているという結果となっております。
【中川】県教委が行った2022年度1学期と2021度1学期の「教職員の勤務時間等の調査」による比較では、休日勤務時間が3割、持ち帰り仕事時間は5割に減っているとしています。しかし、県教組の組合員へのアンケートと比較すると、6月では、平日時間外勤務は県教委調査で51時間10分、県教組アンケートは52時間52分で県教組のアンケートの方が1時間42分多い。また、休日勤務は県教委5時間1分、県教組16時間32分とこれも県教組の方が11時間31分多い。持ち帰り残業も県教委は1時間34分に対して、県教組では9時間32分と7時間58分の違いがある。
先生方に聞くと「休日出勤をして部活動を行ったり、持ち帰り残業しても自己申告となっていて全て報告がされていない」、また「休憩時間は勤務時間からはずされているが、実際は休憩できていない」「家庭訪問や外での会議後、直接家に帰った場合はつけていない」などの実態があると聞きました。
先生方の話から「教職員の勤務時間等の調査」が、実態を反映していないのではないかと思われます。精神疾患による休職者を減らすためには、機械的な調査ではなく実態を正確に把握する調査が必要ではないでしょうか。
【教育長】 議員ご指摘のように、勤務実態の正確な把握は、働き方改革を推進し休職者を減らす取組を進めるために必要であると考えております。
このため本年度より、全ての公立小中学校において校務支援システムやタイムカードなどの活用により、できる限り客観的に勤務時間を管理することとし、県教育委員会において年間を通じた勤務時間が把握できるように取り組んでおります。
さらに、全国的にも例が少ない取組として、自己申告により持ち帰り仕事時間も調査し、家庭などでの勤務状況の把握にも努めております。
引き続き、校長会や市町村教育委員会との連絡会等を通じ、正確に勤務状況を報告するよう依頼するとともに、出張時の勤務時間や取れなかった休憩時間の把握も含め、より実態に即し、かつ、教員に負担のかからないような調査となるよう工夫してまいります。
【中川】2014年に「子どもと向き合う時間を確保するための総合的方策」が示され、超勤時間の量的削減が目指されてきました。2021年の「学校における働き方改革推進のための方策」では、「学校業務の協業化・分業化・外部化・システム化による業務の削減」「家庭・地域・関係機関・企業等との連携・協働体制の構築」「ワーク・エンゲイジメントの高い職場づくりとワーク・ライフ・バランスの実現」を方策として超過勤務を減らすとしていますが、これらの方策は個人の責任に帰結する恐れがあると思われます。学校現場が目指してきた物理的な超過勤務の縮減の具体的な対策はどうなっているのでしょうか。これ以上の業務量を減らすことはできないという認識なのでしょうか。
【教育長】各学校においては、会議の精選や学校行事の見直し、日課の工夫、時間外の留守番電話対応、部活動指針に沿った活動時間の縮減などに取り組むとともに、県教育委員会においても、小学校高学年に対する専科教員の配置を始めとした体制整備などを進め、超過勤務の縮減に努めております。
また、業務量の削減につきましては、2021年に策定した方策に基づいたこうした取組を全県の学校や教育委員会で一層進めていくことにより、更に業務量を削減していきたいと考えております。
【中川】「ワーク・エンゲイジメント」とは、「仕事にエネルギーを注ぎ、仕事から活力を得て活き活きしている状態」という説明ですが、教員個々の精神的な心の持ちように求めているのでしょうか。人員を増やすことにより超勤を減らすことは考えないのですか。
【教育長】「ワーク・エンゲイジメント」は、働きやすい職場環境の整備や教員としての専門性を高めることで、やりがいを感じ、活き活きと働くことができる「心身の健康」を保つものです。
方策でも示しておりますように、学校における働き方改革の目的は、超過勤務の縮減といった量的な面のみならず、働きやすさや働きがいといった質的な面も含んでおり、ワーク・エンゲイジメントを高めることは、主に質的な面で豊かな教職生活の実現につながるものと考えております。
教育現場の人員を増やすことは働き方改革を推進する上で有効な施策の一つであると考えており、例えば、先ほど申し上げた小学校高学年に対する専科教員の配置などにより教員にゆとりが生まれるとともに、年々増員している教員業務支援員の配置により、教員が本来の業務に注力できる状況が生まれています。
こうした人員の増員と共に、地域ボランティアなど様々な方の御協力もいただきながら、さらなる超過勤務の縮減をはかってまいります。
【中川】実態として、過労死ラインである超勤80時間を超えていることの改善を要請します。