ヨーロッパにおける滞在先は、オランダ・デン・ハーグの佐藤豊彦氏宅だ。当時まだ面識はなかったが、手紙のやりとりをしたりテープを送って演奏を聴いてもらったりしていたので、3週間ほどご厚意にあずかることになった。今思うと、いくら手紙でのやりとりなどがあったとはいえ、面識のない人のところによく厚かましくも押し掛けたものだと思うが、世間知らずのなせるわざか。本当はせっかくヨーロッパに行くのなら、講習会に参加した方がよかったのだろうが、7月の終わりはそういうものが開かれない時期だ。当時の私はとにかくヨーロッパの空気を吸ってみたい、佐藤氏に会って当時最先端のリュート研究に触れてみたいの一心だった。