リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ヴァイス作曲ソナタ第39番(5)

2023年08月07日 13時33分05秒 | 音楽系
第4曲目はサラバンドです。ヴァイスの初期のサラバンドは比較的シンプルな造りが多いですが、中期後期になるにつれて手の込んだ作品が多くなってきます。

本曲も抑揚に富んだフレーズで始まる「カンタービレ」なサラバンドです。思いっきり歌わせて装飾も美しく弾くべきです。メロディラインで気を引くのは5小節目~7小節目にかけてのフレーズ。このくだりはバッハのゴルトベルク変奏曲のテーマの一部と和音進行とリズム動機は多少異なるもののメロディの流れが同じです。

本曲のようにゆったりとしたカンタービレな曲は繰り返しの際にはメロディを装飾的に変奏すべきですが、件の部分はついついゴルトベルクのようにやりたくなってしまいます。でもここはそうすると、ゴルトベルクのパクリと言われかねませんから、よく似ているけど少し違うくらいにしておいた方がいいでしょう。

先に書きましたようにこのソナタは最後期のスタイルではないと思いますが、ところどころバロック時代にはない新しいサウンドを聴くことができます。例えばこのサラバンドの下から三段目の終わり2小節なんかがそうです。(ドレスデン手稿本によります)後の時代ではよく聴かれることになるアポジャトゥーラですが、まだそういう響きをあまり聴くことのなかった当時の人々はその斬新さにきっと胸をときめかせたに違いありません。