妖怪になりたい、ちーちゃん。

信号待ちの十字路に風が吹きました。散ったアカシアの花の一団がその風に乗ってダンスをするかのごとく目の前を通り抜けていきました。

　先日、ちーちゃんが「妖怪になりたい人？」って夕食の食卓で聞きました。「妖怪なんてなりたい人いるのかなあ」と私。「ちーちゃんはなりたいもん、なってママの幽霊に会いたいもの」と。「ママって幽霊なんでしょう」と続きます。

　並んで座っている私は、あわててちーちゃんの反対方向に顔を向けました。

　普段は口に出さないけれど、やっぱり会いたいんだね。

　大人は泣き虫なんだから、泣くと死んだ人が悲しむってパパが教えてくれたから・・・・。

　だから泣かないんだあ・・・・。


　父が亡くなってしばらくの食卓で、ちーちゃんが泣いちゃあだめだよ、しいじいが悲しむから・・・・・。

　ちーちゃん泣いたっていいんだよ。泣くと悲しみが少し和らぐんだよ、大人わね。

　ちーちゃんだって泣いたっていいんだよ。

　花の季節を旅する父は今どの辺りにいるのでしょうか。　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　依田美恵子

軽井沢・佐久で建てる外断熱・省エネ住宅　中島木材の家

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