院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

洋楽の美・邦楽の美

2007-10-17 07:03:11 | Weblog
 昭和30年代にピアノブームがあった。このころ、かなりの家がピアノを購入した。

 当時の日本家屋にはピアノは重かった。それでも高度成長時代の始まりは、庶民にピアノを買わせた。鉄筋コンクリートのアパートが次々と建てられ、ピアノの重さで家が曲がるということはなかった。

 少女はみなピアノを習った。当時、アメリカ人やフランス人は、わが国の少女の多くがピアノを弾けることに驚いていた。(外国では一部の趣味人がピアノをやるだけだった)。

 でも、ピアノは戦前から上流階級は持っていた。庶民がそれをマネしたのが昭和30年台だった。

 豪邸からピアノが聞こえることがあった。弾いている人は男性だった。幼い私は驚いた。こういう階級があるのだと思い知った。

 民家からピアノの音が聞こえるのは、なにかほのぼのとした感じになった。だが、それはバイエルだった。もうちょっと上手いとしばし聴き入った。

 それより前から、邦楽をやる家があった。三味線の音がぽつんぽつんと聞こえる。むろん、木造住宅である。これがまた良かった。

 邦楽も捨てたものではないと思った。ピアノより情緒があった。

 あるとき、学校帰りにすばらしい三味線を弾く家に出会った。ものすごく上手いのである。少年の私は、その家の前にたたずんで聴き入った。

 あまり立派ではないその民家の表札には「杵屋」と書いてあった。