院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

高浜虚子の矜持

2007-10-29 08:27:04 | Weblog
 俳句をはじめて20年になる。下手の横好きで、才能がないから20年たっても上達しない。ただ、俳句を見る目だけは肥えてしまった。

 話は飛ぶが、数年前、戦時中の雑誌「旅」が復刻されたので購入した。そこに読者の俳句欄があって、興味深かった。

 選の上位に入る句は、みな戦争と関係があるのだ。

 兵隊の体操が凛々しいとか、兵器工場の炎が勇ましいとか、そんな句が一席、二席に入っている。今読むと、なんにも面白くない。時事の句が後々まで残らないということを痛感した。

 ところがホトトギスは、時事を徹底的に拒んだ。どんなに戦争が激しくても、蝶や花を詠んだ。だから古くならない。ホトトギスの花鳥諷詠という哲学は、一定の批判はあるけれども、一目を置かざるをえない。

 戦後、「ホトトギスはこのたびの戦争で、どのような影響を受けましたか?」というインタビューを虚子は受けた。

 虚子の答えは「何の影響も受けなかった」であった。