院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

医学博士号の裏話その3

2007-12-14 08:38:08 | Weblog
 先にも言ったとおり、医者で論文が書ける人は極めて少ない。医学部は理系だから、論文どころか普通の文章さえ書けない人もいる。

 だから、学位を持っている人の多くは、生涯に書いた論文は学位論文一編だけである。それも、指導教授に手取り足取りされて、やっと書きあがった論文である。そのような医者にとって、論文を10も20も書くというのは想像もできないことである。

 だからと言って、その医者の臨床の腕が悪いということにはならない。臨床と論文は別なのである。

 手術の腕は抜群なのに論文が書けないという医者も多い。むしろ、臨床を熱心にやると、論文にするデータを集める時間がないというジレンマがある。

 同様に教授であれば臨床の腕が良いとはかぎらない。ネズミで実験を繰り返し、臨床の役にはまったく立たないような研究をして、論文をたくさん書いて教授になった人も多い。

 教授選考の際の論文主義にも問題がある。ネズミの研究(たとえばネズミの免疫とか)だけをして教授になった人が人間を診察できるか?そういう人たちによって学位審査がなされるのが、そもそもおかしいのである。

 学位を取得する入り口(教授)に問題があり、論文を載せる「学術誌」にも問題があり、最終審査をする教授会が(個々の分野では)素人の集団であるということを考えれば、医学博士がなにほどのものであるかかが分かる。

 私は指導教授にいっさい指導を受けなかったし(たぶん指導教授は私の論文を読まなかった)、ちゃんとした学術誌に無料で掲載されたし、指導教授も謝礼を固辞したから、私は幸福だったと言わなくてはならない。